第11章:初めてのクラフト職習得、変わり者の師匠、そして夢への一歩
クラフト職の第一歩を踏み出した犬飼。しかし、それは風変わりな錬金術師との出会いでもあった…。
「バナナ、食べな……」
とても熟れたバナナを渡された。そういえば、まだ何も食べていなかった。俺は皮をむいて一口かじる。
「お茶はないし、まさか誰かが来るなんて思ってなかったし……ましてや子どもなんてね。そうそう、私はアリラ(アリラ)、錬金術の先生よ。見ればわかるでしょ?」
アリラは両手を広げた。どうリアクションすればいいのか分からない。というか、その露出多めのトップス……本当に錬金術師か?
「犬飼 陽輝」と名乗った。「錬金術師になりたいんだけど」
この女、絶対に話が脱線するタイプだ。先に要点を伝えよう。
アリラは俺に近づき、顔をじっと見て、アホみたいな笑みを浮かべて言った。
「超適応の匂いがする」
「俺、匂うの?」バナナをかじりながら聞いた。
「名前と目が物語ってるよ、坊や。でもそれは悪いことじゃない。普通、レベル50から一人前って感じだけど、私はレベル60の錬金術師。違いが分かるでしょ?」
そう言いながら、アリラはポーションを取り出して俺に渡した。
「これが私の最高傑作……」
渡された瓶は丸くて可愛らしく、緑がかった典型的な回復薬だった。
「……君ならすぐにこれ以上のものを作れるわ。唯一の障害はお金。先生として授業はしてあげるけど、その点は理解しておいてね」
アリラは腰をかがめて、座っている俺の目線に合わせてきた。
「超適応って経験値のブーストもあるの?」と俺。
「全部が良くなるの。つまり、私が何年もかけて積み上げたものを、君は数か月で超えてしまう。だからビジネスパートナーとして考えてるの。とはいえ、それが君の足かせにもなるかもしれない。だって、誰が自分より上の人に許可出すと思う?」
そう言って彼女は続けた。
「別名を考えな。君の名前は目立ちすぎる」
「……目も?」
「気づいてないかもしれないけど、青いでしょ? 超適応は変異も含むの。目に出るのよ、青くなるってね」
そう言ってアリラは小さな箱を取り出し、俺に手渡した。
「カラコン。これを使って、他のクラスを受ける時はね」
「え? なんで他のクラスを取るってわかったの?」
アリラは笑った。
「クラスは繋がってるの。私が教えられるのはレベル30まで。そこから先は、他のクラスで必要な素材を作るために必要になるのよ」
その説明を聞いて、俺の頭に**『Conflict Fantasy』**の記憶がよみがえった。みんな、うまくやってるだろうか……
その後、アリラは自分の時計を俺のにかざした。変な音がして、俺のインターフェースが更新された。「錬金術」という新しいメニューが現れ、開くとレシピが表示され、タブには『1-10』と書かれていた。当然ながら、作れるのはそのレベルのレシピだけだ。
さらに、アリラはモルターとアランビックを渡してくれた。
「フレンドに追加して。そうすれば材料を送れるから。インベントリに物をしまえる?」と聞かれた。
俺はうなずきながらアランビックを手に取り、それをインベントリに入れようとした。ただ、触って『入れたい』と念じるだけでよかった。理屈は単純だ。でも、自分の物じゃないものは入れられない——なぜ知っているかは、聞かないでくれ……
アリラは俺をフレンドに追加してきた。すぐに「こんにちは!」というメッセージが届き、中にはいくつかのハーブが入っていた。
「それを取り出して、モルターに入れて」
言われた通りにすると、それらは光に変わった。
「モルターを使って……」指示に従って光を“すり潰す”と、インターフェースに現れたゲージが満タンになった。
「HPポーション作成完了、品質:ノーマル」
ノーマル……
「ねえ、犬飼。なんか尻尾が動いてるように見えるんだけど」
「君もかよっ!」
この世界で作った最初のアイテム。おじいちゃん、俺、夢に一歩近づいたよ……商売を始める、そのための第一歩。
犬飼はついに憧れの職業を手に入れた。だが、その夢を揺るがすものが現れる。
次回、いよいよ第一章スタート!
【ようこそ、新たな現実へ、犬飼さん】