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銀河連邦の終焉  作者: 冷やし中華はじめました
銀河連邦の終焉
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破られる静寂

剣を抜かぬ政治の勝利に対し、ついに剣を振るう者が現れる。血の幕開けと、それでも揺るがぬ理念 。

帝国紀元1年 星標第10週

惑星セリオ、アルキュリオン、宙域評議センター


I:“成功”の代償


セリオ・ヴァルト=ニアにおけるレオニスの非武装行動は、民衆の全面的な支持を得た。彼は戦火を交えずして都市を掌握し、属星統治の新たな“モデル”を作り上げた。その映像は銀河を駆け巡り、都市部の住民は彼を“解放者”と讃えた 。


しかしそれは、彼を「合法的破壊者」とする証拠でもあった 。


II:アルナク、最終手段へ


アルキュリオン。高位議会では、《銀河連邦緊急秩序維持令(GSEEO)》が可決された。「軍事的鎮圧が困難な属州において、戦略的制空圏への爆撃を容認する特別法」——すなわち、都市空爆の合法化である 。


「正義に勝てぬなら、正統性を破壊せよ。それが国家の論理だ」と、アルナクは呟いた。ハウメル提督に命じられたのは、ヴァルト=ニアの“中枢通信塔”の精密破壊。民衆を直接狙わずとも、都市機能を落とせば、彼らの“連帯”は沈黙する 。


III:セレスティウスの賭け


その夜、セレスティウスは《帝国憲章草案・初版》を匿名でリークした。属星評議会の自律権保障、銀河護民官による法的代議権、商業同盟と情報中立機関の統制合意、そして——中央における“空位の皇帝座”。これにより、名もなき“帝国”の輪郭が、ついに銀河中に現れ始めた 。


「父さん。あなたが動かぬなら、私は動かす。あなたが拒めば、私はその先を用意する」セレスティウスの目は、冷たくも確信に満ちていた 。


IV:破壊の光


翌日未明。セリオ上空に浮かぶ連邦艦ユーディキウムが、通信塔座標へ向けて爆撃弾を放った。光が落ちる。レオニスは咄嗟に命令を発した。「対空遮断フィールド、即時展開!市民を地下へ避難させろ!」 。


——だが、間に合わなかった。精密だったはずの一撃は、わずかに逸れ、近隣の市街地居住区に着弾した。数百人が即死。数千人が瓦礫の中で泣き叫んだ。静寂が、破られた 。


V:ルベリアの決断


爆撃後の混乱の中、ルベリアは一人、倒壊した広場の中央に立った。血塗れの子供を抱えた母親が泣き崩れる。兵士たちは口々に叫ぶ。「反撃を!」「連邦を潰せ!」 。


だが彼女は、剣を抜かず、膝をついた。「誰かが、剣を抜かぬことで、この“正義”を守らねばならない」。その姿を見た兵たちは、一斉に沈黙した。そして剣を納めた 。


VI:レオニス、声明を発す


その夜、ヴァルト=ニアから全銀河へ向けて《銀河護民官公式声明》が発信された。「我々は剣を取らない。だが、声は殺させない」「都市が焼かれようと、命が奪われようと、我々は立ち続ける」「属州は、敵ではない。銀河は、敵ではない。敵はただ一つ——『民を敵とする国家』だ」 。


この声明は、連邦中の属星で同時に共有された。一夜にして、20以上の都市がレオニス支持を公式に表明。一部では議会代表が退任し、属州“評議会制”への移行が始まる。それは、帝国誕生の序曲だった 。


【終章ナレーション】

静寂が破られた。だが、騒乱ではなく“希望”が芽吹いた。血によって正統性は削がれ、言葉によって帝国の輪郭は深まる。剣を抜かぬ者たちが、剣を抜いた者たちに勝つ——その奇跡が、始まっていた 。

次回予告:《第10話:空位の皇帝座》

アルナク、議会を掌握するも“民の支持”を失い始める。セレスティウス、ヴェネリアと接触し“新政府”構想を密かに立ち上げる。レオニス、空席となった“皇帝座”に対して、重大な選択を迫られる。そして、帝国憲章がついに“公開”される——名を与えるか、拒むか 。

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