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銀河連邦の終焉  作者: 冷やし中華はじめました
銀河連邦の終焉
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二つの誓い

国家の形が揺らぐ中で交差する、忠誠と野心の誓いを描く。議会の攻防、属州の決起、そして影で交わされる二つの密約。英雄の背中には、今や剣と民意、二つの重荷が託されようとしていた。

銀河歴1374年 星標第7週

惑星連邦中枢アルキュリオン、および惑星ダクス、カミアナ


I:議会の攻防


高位議事殿。《国家統一法案》の審議が始まった。アルナク・ヴェステリオが提出したこの法案は、名目上は「属州の連邦帰属権強化」、実質的には「中央による惑星軍と資源の直接統制」を意味していた 。


「属州の動揺は、我々の不作によるものではない。“情報の混乱”が導いた錯覚だ。ならば、我々は“秩序”を再び強制するしかない」と、アルナクはあくまで穏やかに語る 。


しかし、《緋色の円卓》を中心とする中間派は静かに抵抗を始める。「我々が守るべきは秩序ではない。“正統性”だ。今、この法案はそれを、中央の剣で押しつぶすようなものだ」 。


票決は保留にされ、法案は「再検討」の名のもとに時間を稼がれた。だが、アルナクは計算していた。時間が経てば、属星蜂起は過激化し、やがて議会は“強権”を望むようになる、と 。


II:属州の動き


惑星ダクスでは、連邦から離脱を宣言した《属星評議会》が自衛軍の創設を発表。惑星カミアナでは、反アルナク声明を掲げた民衆デモがゼロライト輸送線を封鎖し始めていた 。


そして、カミアナの空で、ひとつの戦艦が旋回していた。《セントゥリオ・ヴェルス》。それはもはや、レオニスの私的旗艦ではなく、“希望”そのものだった 。


III:セレスティウスとアルナクの密会


アルキュリオン、月光図書殿・地下会議室。かつての敵と、これからの敵が、静かに向き合っていた 。


「あなたが何を狙っているか、私は分かっている」と、セレスティウスは口を開く。「属州を過激化させ、議会を恐怖で満たし、強権の復活を“正義”として提示する。違いますか?」 。


アルナクは微笑む。「君の父、レオニス将軍もまた、“民の声”という名の恐怖を議会に植え付けた。我々はどちらも同じ道具を使っている。ならば、どちらが“理性的”かを問うべきだ」 。


「あなたは、信じているのですか?この連邦を」 。


「信じるには老いすぎた。だが、保つことはできる。君と違ってな」 。


セレスティウスの目がわずかに冷える。「ならば、私はあなたの“秩序”の中で、最も破壊的な一手を打ちましょう」 。


IV:ルベリアの誓い


同じ頃。アルキュリオン軍区サード・リング内の簡素な部隊待機室。レオニスは、配属解体を拒んだ兵士たちと再会していた 。


その中心で、ルベリア・カースが膝をついた。「私は、あなたに忠誠を誓います。軍人としてではなく、一人の人間として」 。


「……これは反逆になるかもしれない」 。


「あなたが掲げるものが“反逆”と呼ばれるなら、私たちが仕えていた“連邦”とは、一体何だったのか」 。


その言葉に、兵たちは静かに同調し、次々と剣を掲げた。それは、法の外にある“信義の軍”の誕生だった 。


V:そして、静かなる宣言


アルキュリオン市民区の隠された小広場。レオニスは、非公式に《緋色の円卓》の議員たちと会っていた 。


「あなたがたは、議会内での改革を望んでいる。私は、星々での改革を望む。だが目的は同じだ。ならば、協力は可能だ」 。


若き議員ヴァルコーが言った。「ただひとつ聞かせてください。あなたは、帝になるつもりですか?」 。


長い沈黙ののち、レオニスは答えた。


「私は、帝にはならない。だが——帝国は始まるかもしれない」 。

次回予告:《銀河の裂け目》。属星セリオで武力衝突が勃発。議会は緊急審議を通し、アルナクに“連邦鎮圧権”を与える。レオニスは、はじめて“帝国憲章”の草稿に手をかける。セレスティウスは裏で《ヴェネリア同盟》との接触を開始。二つの銀河秩序が、ついに真っ向から衝突する。

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