表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河連邦の終焉  作者: 冷やし中華はじめました
帝国の黎明

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/68

投票の日

「投票の日」

――民意が剣を越え、理念が現実を凌ぐとき。

“誰も座らなかった玉座”に、銀河が答える

帝国紀元1年 星標第9週・全天候投票日

銀河全域、帝国管理通信網アストラ・ヴォックス



【I:朝の静けさ】

帝国中枢アストラディウムの上空、薄い銀の雲が流れていた。


民の誰もが知っていた——今日、この日、銀河がひとつの“姿”を選ぶということを。

しかし道は穏やかで、空は静かで、まるで何事も起こらぬように世界は始まった。


惑星カミアナでは、廃墟の一角に設置された投票端末の前で老人が孫に言った。


「見ろ、これが剣ではなく、“指”で国を動かすということだ。」



【II:レオニス、最後の巡回】

彼は投票日当日、都市を歩いた。

演説をするでもなく、警護もつけず、ただ一人、かつて自らが護った道を歩いた。


若者が声をかける。


「将軍……いや、護民官!俺たちは、あなたのために“空席”に投票します。」


レオニスはかすかに笑みを見せた。


「ありがとう。だが——それは私のためではない。“君たちの未来”のためだ。」



【III:アウレンの静かな備え】

カレシアの地下行政施設で、アウレン・ディマルクは一通の“辞任状”を封じていた。


「民が私を不要とするなら、それが国家の答えだ。私はその意志を、剣より重く受け止める。」


彼は公には語らず、ただ記録係に託した。


「私が選ばれるなら、玉座に座らぬまま国家を背負おう。

選ばれぬなら、そのまま静かに去ろう。」



【IV:セレスティウス、開票へ備える】

帝国情報局地下《集計核センター》にて、セレスティウスは目を閉じ、ただその時を待っていた。


投票はすでに集まりつつある。


各惑星、各属州、全軍区、宙域船団、市民集会、孤立コロニー——

帝国全体の99.3%が接続し、集計は“銀河時間午後14時”に確定される。


彼は言った。


「私の手は剣を取らない。だが、民意を斬らせることもない。」



【V:アルナクの最終手】

ミーネス。

アルナク・ヴェステリオは沈黙していた。


彼の側近たちは問う。


「最後の情報介入を?」

「少なくとも結果を混乱させる工作を?」


だが彼は首を振った。


「投票が行われたという事実が、すでに“我々の終わり”なのだ。

これは、戦ではない。……“時代”だ。」


彼の目は、まるで最初からこの瞬間を見ていたかのように、遠かった。



【VI:銀河が動いた】

午後14時、銀河標準時。


帝国全宙域にわたり、同時に“光”が走る。


《アストラ・ヴォックス》が結果を流した。


銀河国民投票 結果発表


空位維持賛成票(理念の継続):48.9%


皇帝座制度化賛成票(統合宰官への管理権付与):50.4%


無効票・棄権・通信不達:0.7%


わずか1.5%差で、帝国は“空位の構造”を手放した。


玉座は、名なき椅子から、誰かが背負う責務へと姿を変えた。



【VII:三者の反応】

アストラディウム。


レオニス・アル=ヴァレンティアは、結果を聞いた後、ただ頷き、空位の皇帝座の前に立ち、


「この椅子が、ついに“誰かの意志”を得た。ならば、私は護民官として、この国を護ろう。」


カレシア。


アウレンは、預けていた辞任状を破り、書き直した。


“私は皇帝とはならぬ。ただ、帝国に名を与えられた責務の履行者として、責めを引き受ける。”


ミーネス。


アルナクは、光の消えた広場で、旧連邦の旗を静かに畳んだ。


「やはり、終わりとは……静かに来るものだ。」



終章ナレーション:

民が選んだのは、名ではなく“重さ”だった。


玉座は、かつて拒まれ、次に影に狙われ、そしていま、

民の手によって**「責任の座」**として再定義された。


帝国は、ここに始まった。

——はじめて、“座る者”を得て。


次回予告:《第20話:責任者》

アウレン・ディマルク、“皇帝座統合宰官”として初の国章宣誓式へ


レオニス、護民官として帝国軍の「理念監査室」を創設


セレスティウス、“帝国改憲作業部会”を指導


アルナク、国外亡命を試みるが……


帝国は、理念と責務の両輪を得て、次なる「内なる試練」へ向かう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ