プロローグ
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プロローグ
天翔 剣はファルコン極東支部の医療施設にいた。
あの事件から7日。世界の混乱は無常にも進んでいた。しかし、完全に傷も治った今。それを止める手段も持っている。
「傷の具合はよさそうね」
極東支部リーダーのクェス=パリシアが声を掛けてきた。リーダーとは、言っても剣と同い年だ。
「おかげさまで…。ところで、この状況どうにかなりませんか?」
この状況、それは世界がこうも未来人の手により崩れ去っていく様だった。
「準備は出来ているわ?次の作戦では貴方も来てもらうわよ?それと…」
クェスは声を縮める。
「上の命令で、この作戦が終わったら、本部に一度帰還せよ。ってことらしいの…。まったく、上の考えはブランを研究材料にしたいそうよ?筒抜けすぎて、馬鹿げてるわ」
剣は黙る。ブランは、短い間だが俺のことを心配してくれた。だから、いくら上官の命令でも…。
「そうですね…。しかし、ブランを渡すなんて…、彼女も被害者ですよ?」
クェスは頷く。
「そうね…。それと、剣特別二等兵?貴方らしい人なら皆、気が合いそうだわ」
それは、疑問に残る。剣なら気が合いそう…それは、どういう意味なのか。
「クェス上官、それはどういう意味ですか?」
缶ジュースを開けたクェスは少しばかり咽る。
「上官~?クェスでいいわよ。同い年なんだし…。まぁ、私の階級は一応大尉だから、そういうのも、許されない場と許される場があるけど…。まぁ、話を戻しましょう。私たち、ファルコンの半数はね…」
今から5年前。米国に反日組織の集団がいた。それは、少年少女を集めた、米軍の候補生の私設だった。
そこの主な内容は、いつか日本を自分の国の領土にするための軍の訓練施設を真似た、私設軍というべき場所だった。
そこにクェスはいた。クェスの銃の扱いはトップクラスで、嫌々ながらもやっていたが、目的もあった。
彼女は、日本人に人身売買をされ、育ってきた。ヨーロッパのホームレスと言えば、話は早いだろう。
金の根源は、日本人からの性的欲求の報酬のみ。悲しいが、そんな日常だった。
そこに、米国の男が現れた。どうも、この男は日本に相当な憎しみを持っているらしく、施設軍を作りたいという事だった。報酬はクェスがこれまで生活して手に入れた報酬の2倍だ。
ここまで、出されて飲まない条件でもない、それに応じる事にした。
そして、その施設では日本人に恨みや妬みがある人間ばかりいる事が分かった。
そう、ファルコンの元々の目的は日本領土
を得る事だったのだ。
「まぁ、こんな所かしら?」
剣はクェスの話を聞き、何とも言えない怒りを覚えた。
「そんな、そんなことって…」
クェスは、剣の手を握り、諭す。
「いいのよ、気にしないで。世の中こういう穢れた女もいるのよ。ただ、覚えておいて…。貴方の優しさは、いつか役に立つ日が来る。それを忘れないで?」
クェスはハンカチで剣の涙を拭くと、こう呟いた。
「あの子もそういう人だったな…」
剣は、涙を拭うと、その言葉に疑問を持つ。
「あの子?」
クェスは頷く。
「アイオーン=エレトニクス。私の初恋の人よ。その子もファルコンにいるの…、って言っても、あの子は3つ年上で尚且つ、上官なんだけどね」
クェスは背伸ばしをする。
「アイオーンは、明るいけど…物事を真剣に考えすぎて、悩んじゃうの。けど、真面目なところが評価されて、今では大佐よ?」
クェスは続ける。
「けど、昔の頃が好きだったな、あの子は」
車のクラクションがなる。どうやら、迎えが来たようだ。
「行きましょう、剣特別二等兵」
プロローグ 了
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