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第7話

 …………………駄目、駄目よ。あたし。いくらあんまりにも不敬だからといって。いくら麗しき乙女の後頭部に鈍器をぶつける人間がいるからといって。淑女は、淑女はこんなことで怒ったりなんか……………


「アトリ…」


 隣でベルカントが不安そうにあたしの名前を呼ぶ。わかってるわ。……………5秒数えて、深呼吸。


「だっ、大丈夫ですか!?……あ、なんだこれ」


 トーマスがアトリーチェの方に駆け寄ると、足元に何かが転がっているのに気付いた。


「魔道具か?」


 オスカーが不審そうな目をして呟く。王族の婚約者が得体の知れない物で危害を受けた。これが故意に行われたものであったとしたら大問題だ。 


「へぇ…ふぅん、これは…なかなか面白い構造をしてますね………あ、ここがこうなってるのか」


 一方のトーマスといえば、オスカーの質問にも答えずアトリの足元にしゃがみ込んでその魔道具を熱心に観察している。アトリは怒ろうにも怒れず途方に暮れた。ベルの方を見る。にこりと慰めるような笑みを返された。…もうあたし行っていいかしら?


「皆様!お待ちください!」


 トーマスを置いて歩き出そうとした時、どこからか聞きなれない声がした。見ると、赤毛で、貴族には似つかわしくない格好の少年が目を輝かせてこちらを見ていた。目が合うや否やこちらへ近づき、そのまま片膝をついて礼の姿勢を見せた。何よいきなり?


「ベルカント・エルン・コンフェローザ様、オスカー・ロゼ・シャンドフルール様、そしてその婚約者、アトリーチェ・シルバーハート様!お初にお目にかかります!ライデンシャフト家が三男、フェデリオ・ライデンシャフトと申します!これから皆様をお守りさせて頂く騎士見習いでございます!以後お見知り置きを!」


 ……………えーーーーーと。


 これは、どういう状況?あなたたちは何か知ってる?そんな意図を込めて両隣の二人に視線を送ったが、微妙な顔をしているだけだ。


「フェデリオ・ライデンシャフト。顔を上げろ」

 初めに口を開いたのはオスカーだ。おお怖い。皇太子モード入ってるわ。

「はいッ」

「お前が、前の護衛の代わりに配属されるという者か」

「如何にもでございます!」

 ああ、確かにいつもいる護衛の方がいなかった気が…こんな少年が代わりなの?何だか頼りなさそうだわ。仮にもオスカーは一国の王子なのよ?

「フェデリオ、と言ったか。お前がいない間に、すでに私の婚約者が何者かによって危害を加えられた。…どう責任をとるつもりだ…?」

「え………」


 困惑する表情の彼に、ベルは困った笑顔であたし達の背後に隠れていたトーマスと、彼が熱心に眺める物体を指し示す。するとその瞬間、フェデリオ、と名乗った彼の顔色がさぁっと引いていった。


「誠にッ!申し訳ありませんでしたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 彼は瞬時に立ち膝を崩し、両膝と額を地面につけて最上級の謝罪のポーズを作った。


 あ、あ、あんたかーーーーーーーーいっ!?!?!?

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