8/10
雨
あんなに高く美しい空から
こぼれ落ちる涙よ
わたしはおまえの悲しみを知っている
あの天の高みはあまりに淋しいので
耐えきれずおまえは自らを投げ出した
けれどもおまえはあまりに不器用で
自分をまっすぐに投げ出すことしか知らぬので
傲慢で小心な人間たちには
おまえは迷惑なだけなのだ
あかやきいろやくろやむらさき
色とりどりの傘に拒まれて
おまえは冷たくしたたり落ちる
ふりむかれることもなく
まるで何事もなかったかのように
ひとびとの足もとをぬけて
どこへともなく流れてゆく
怒りもなく憎しみも失望さえもなく
なおもおまえはふりそそぐ
まっすぐにひたむきに
そして 静かに あきらめて




