1.未知との接敵
私はプレイヤー名Kaede、二刀流の剣士をやらせて貰っている。
快晴の空の下とある荒野の一角、煙幕の中、私は隣に立つくノ一に話しかける。
「下がれって言わなかった?」
「私なら先輩のことサポートできると思って残っちゃいましたっ☆」てへっ
てへっ、じゃないんだけど……まあこの子なら大丈夫かな。
「視覚サポート付けますね、バトルスキル:万能透視」
私の左隣に立つくノ一は私の左肩に右手を置くとそう告げた。
すると、私とくノ一の目には煙幕の中に居ながら敵二人のシルエットが赤く映るようになる。
「敵さんはとりあえず様子見って感じですかね」
二つの赤いシルエットには大して動きのないように伺える。
「みたいだね。じゃ、とりあえず私突っ込むから適当にサポートよろしく」
私はそう言うと背中の剣を一本抜刀し地面を勢いよく蹴った。
モクモクと立ち込める煙幕に一つの穴が開きそこから私は飛び出す。
それに対し大柄な男が迎え撃つ。
大柄男は私が煙幕から勢いよく飛び出すのに反応し、同じように地面を勢いよく蹴り突進する。
私は地面を蹴り更に加速する。
順手持ちで片手剣を握っている右手を体の前でクロスさせ、一瞬溜めのような時間を作ると刀身が赤く光る。
大柄男も私同様、地面を蹴り、互いに低空を飛行するかのような姿勢で距離を縮める。
正面の敵はどうやらナックルを用いて殴ってくるようだ。
右手を引く素振りを見せる。私の武器のように光ってはいない。
衝突する直前、大柄男は溜めた右手を突き出すモーションを繰り出す。
私は切りかかるモーションを解放する。
デュアルソードスキル:紅十文字
--衝突--
……無音。
ぶつかり合ったが正確には衝突していない。
大柄男の拳と私の剣の間にわずかな隙間がある。
拳から見えない波動の様な物を飛ばす技か。
大柄男は不気味な笑みを見せている。
ぶつかり合って経った時間は1秒程度だろうか、両者の足は地面に付いていない。
私は心の中で別のソードスキルの名を呟く。
ソードスキル:垂直斬り
刀身の光が赤から黄に変わる。
と同時に頭上でくノ一と細身の男がぶつかり合う。
くノ一はクナイを逆手に持ち真っすぐに突進、細身の男は左手で張り手を繰り出している。
こちらはぶつかり合うやいなやくノ一が吹き飛ばされる。
私は黄色くなった剣を振りぬき大柄男を吹き飛ばす。
吹き飛ばして両足が着地。
細身の敵はくノ一を吹き飛ばした後視線を落とし、今度はこちらへ右手で張り手を放つ構えを取る。
よく見ると細身の男の右手が黒く色が変わっている。
正確には、指先から肘くらいまでが変色している。
元々そうだったのか、或いは今変色したのか……。
黒く変色したその腕半分は太陽の光で、まるで鉄のように光が反射している。
全体的に重そうだ。
細身の男はその腕でくノ一を吹き飛ばした時同様に張り手攻撃を放つ。
それを黄色く光る刀身の振り上げ攻撃で対応する。
--衝突--
先ほど大柄な男とぶつかり合った時とほぼ同様、無音で衝突する。
しかし今回は先ほど大柄な男から受けた衝撃よりはるかに重い衝撃を受ける。
私は右手で握っている剣の柄に左手も添える。
そして振りぬき、男を放物線状に吹き飛ばす。
振りぬきざまに刀身からガキッと嫌な音がする。
「先輩、大丈夫ですか?」
スッと音もなくくノ一が私の真横に降り立って聞いてくる。
「あなたこそ無事?ダメージとかどれくらい貰った?」
聞き返す。
「それが……ダメージ自体は大したことないんですよ……。ただMPががっつり削られてるみたいです」
確かに。
普段私たちの世界の戦いでは鎧や生身に敵の攻撃が当たってダメージが入る。
MPを吸い取る攻撃もあるにはあるが、私もこの子も剣で受けはしたものの攻撃を喰らったわけではない。
「ほんとだ。私も二回貰ったからかそこそこ削れてるね」
とくノ一に返す。
「えっ!先輩ってほぼほぼMPに極振りですよね!?」
くノ一がびっくりした顔でこちらを見てくる。
「そうだね。戦闘の初手で、しかもたった二撃でこんなに削れたのは初めてかも」
私は敵の方に顔を向けたまま後輩くノ一に答える。
「っと、敵さんは撤退するみたいかな」
大柄な男と細身の男はなにやらクリスタルのような物を取り出している。
クリスタルは砕き散り、彼らの周りをクリスタルの破片が囲い飛んでいる。
すると一瞬にして彼らの姿が消えた。
「追跡できそう?」
この世界のくノ一の索敵スキルは異次元で、彼女もまたそれの扱いに長けている。
「……いいえ、完全に気配が消えたみたいです」
くノ一は3秒程目をつむり集中した後そう答えた。
「私たちも一旦報告しにもどろっか」
「はい!」
元気のいい返事が聞こえたので私は剣を背中の鞘に納刀し歩き出す。
「先輩の剣、大丈夫でした?」
くノ一が訊ねてくる。
おそらく先ほど発した嫌な音が聞こえていたのだろう。
今更だがこのくノ一はメグ。プレイヤー名をMeguと書いてメグ。ちなみに本名ではないらしい。
「先輩のスキル、瞬時武器交代を使えば一本の剣にダメージを負わせる事もなかったのに~」
メグは頬をぷくーっと膨らませこちらを見つめる。
この世界で相手の武器を折る、破壊する、というのは相手を完全に敗北させたといっても過言ではない行為であるが故憧れの先輩に敗北して欲しくないのだろう。
「なるべく情報を与えずに撃退したかったのよ。結果としてはちょっとおバカだったかもしれないわね」
膨れている後輩の頭にポンと手を乗せ鎮めようとする。
「まぁそういうことなら……先輩の手も~らい!」
えへへ~と嬉しそうな声を漏らしながら、頭の上に置いた私の手をメグが両手で握る。
ある程度歩くと目の前に巨大な階段が見えてくる。
階段の段数は10。
階段を登りきると楕円状の鏡のようなものがある台が見える。
ただし鏡にミラーはついておらず、縁だけが存在している。
これはゲート、いわゆるファストトラベル手段だ。
私とメグはゲートの前に立ち手をかざす。
「「転移、天国の庭へ!」」
声を揃えてそう発するとゲートの縁が青く光る。
先にメグをゲートへ通させる。
後に続く私はゲートに入る直前に砂時計のようなアイテムを取り出し、割る。
これで私たちの追跡はほぼほぼ不可能になる。
私もゲートの中へ消えていく。




