襲撃
Side 開拓村
早めにバカ鳥が取れて、ホクホク顔で帰るアルフレッド。
村に帰ると、門番が冒険者らしき人物たちと揉めている。
何やら様子がおかしいので話しかける。
「どうしたんだ?」
「アルフか、ちょうどいい。村長に話を伺ってきてくれ。
この冒険者たちが保護してくれって言うんだよ」
「ハア?保護お?意味が分からん。どういうことだ?」
「あなたはもしかして…」
「双剣のアルフレッドだよ!俺憧れてたんだ!
こんなところで会えるなんて!今度はついてるぜ!」
「落ちつけよ、お前。引いてるぞ、そのアルフレッドさんが」
「こんなところで悪かったな。それで、何があったんだ?
今も今度はって、言ってたし…」
「それが実は…」
「俺たち、森の再調査に派遣されてたんですよ」
「先輩冒険者が調査から帰ってこないからと」
「それで森を調査していたんですけど…」
「森の浅瀬に八匹のゴブリンを発見して」
「俺たちの手に負えないと、逃げてきたんです」
「なんだって!?」
「お前ら!ゴブリンに追われてはいないんだな?!」
「は、はい!」
「たぶん、ですけど…」
「すぐに離れたので、気付かれてはいないと思います」
「村長に急いで報告してくれ、アルフ!」
「わかってる!お前らも一緒に来い!」
俺は冒険者たちを連れて、村長の下に急ぐ。
その道中でドン爺を見つける。
村に危険が迫っていることを伝えてもらうように指示を出す。
「どうしたんじゃ、アルフよ?」
「ドン!村中に知らせろ!ゴブリンどもが来るかもしれない!」
「なんじゃと!?」
「急いでくれ!ゴブリンはかなりの数が予想される!!」
ドン爺に指示を出したので、あとは村長に報告だ。
急がなければ!
「村長!村長はいるか!おい、テディ!!」
「なんだ、うるさい。そんなに慌ててどうした?」
「ゴブリンが大量に村に来るかもしれん!
詳細はこの冒険者たちから聞いてくれ!
俺は装備を物置から出してくる!!」
「わかった。お前ら、詳しく聞かせろ」
「暴虐のテディだ…」
「ゲッ、マジか!?」
「数多の男を潰してきたって噂の?」
「ハハハッ、余計な話はいい。早く話せ!」
村長の怒声を後ろに聞きながら、家の物置へ急ぐ。
リーンの杖はあるな?護身用にでも持たすべきだな。
…俺の双剣は、あった!
手入れをかかさなかったから、万全だな。
少し素振りをしておこう。
「あなた、どうしたの?自前の武器なんか持ち出して?」
「ゴブリンどもが村に来る。お前の杖もそこに置いてある。
安静にしててほしいが、最悪の場合があるから持っておけ」
「わかったわ。あなた、椅子を家の前に置いてちょうだい」
「わかった。ドジャーはたぶん救援のために、
街に行くだろうから、ルトアを護衛に後で連れてくる」
「…ガースのとこの、カレンも連れてきて」
「カレンもだな?じゃあ、俺は椅子を出してくる。
二人も急いで連れてくるから、安心しろ」
「大丈夫よ、その点は心配していないわ。
あの二人が喧嘩しないかだけが心配だわ…」
「緊急時だ。少しは仲良くするだろうさ」
「ハア。まったく、気楽に考えちゃって」
「よし、椅子は出したぞ。ほかは二人に頼んでくれ」
「わかったわ。いってらっしゃい、あなた」
「…いってくる!」
妻の口づけが何よりの力になるな。
俺はそう考え、ルトアとカレンの下に走りだす。
ドジャーはもう街に向かったようだ。
ルトアが完全武装している。
ルトアに事情を話し、リーンの下に向かってもらう。
ここで、門番が警鐘をカンカンと激しく打ち鳴らす。
くそっ、カレンにまで連絡が間に合わなかったか!
あいつなら前に出てくるはずだ。前線で頼むしかない。
あとは村長がリーンを気にかけてくれればいいんだが…
俺は門に向かう。
すでに大量のゴブリンが、前方に見える。
くそっ、数が多い。ドジャー、なんとか間に合わせてくれよ!
それからは、前に出ているはずのカレンを探しながら、
ゴブリンを切り捨てていく。
今の俺の体力ではあまり動き回るのは得策じゃない。
周囲を意識しろ。どこかで派手な戦闘が起こっているはずだ。
あそこか!
俺は急いでカレンの下に向かう。
カレンは大斧を豪快に振り回して、ゴブリンを斬り飛ばしていた。
「カレン!おい、カレン!」
「なんだい、アルフ坊?そんなに焦ってどうしたんだい?」
「すまんが、前線から下がってほしい。
リーンが俺の家で待機している。頼む、護衛についてくれ!」
「そうかい。じゃあ、急いで戻るために、道を作るよ!」
「ああ、任せろ!!」
俺はカレンが戻る道を作るために、ゴブリンを切り伏せる。
リーンの安全確保が俺にとっては最優先だ。急げ!!
その頃、リーンとルトアは杖を持ち、
互いに緊張感を保ち続けながら、会話していた。
「ルトアはもう子供は作らないの?」
「ウチはもう無理よ。
ドジャーがフェリルで落ち着いちゃってね…」
「あら、フェリル次第なのね」
「そうなのよね。もう一人くらいほしいのに、
あのバカは、まったく…」
「ふふっ、突然やる気出すかもよ?」
「そんなことあるのかなあ?それにしても…
炎よ、貫け!フレイムランス!」
「フレイムランス!」
「なんでアンタは詠唱せずに魔法を使えるのよ?」
「あなたも十分詠唱短いじゃない。私はコースケに習ったのよ」
「ああ、ジンの裏人格の子だっけか」
「裏人格って。まあ、合ってるっちゃ合ってるけど…」
「なんで、そんなことを知っていたんだろうね?
魔法を使いたいって、本格的にせがみだしたのは、
鑑定の儀のあとだろ?神様にでも会ったのかねえ?」
「もしかしたら、会ってるかもしれないわねえ…」
「…冗談で言ったつもりだったんだけど?」
「その前に、お客さんがたくさん流れてきたわよ?」
「っち!ウチ一人で護衛は荷が重いっての!!」
「私も手伝うから頑張って、ね!
フレイムランス!フレイムランス!」
「あまり無茶をするな、リーン!子に影響するぞ!
土よ、乱れ飛べ!ストーンバレット!」
「大丈夫よ。今は以前よりも、魔力が扱いやすいから」
「だからって!ちっ、裏手からも来やがったか!」
「これは、ちょっとまずいかもしれないわね…
逃げてもいいわよ、ルトア?」
「冗談言うんじゃないよ。護衛を任されたんだ。
抗ってみせるよ!」
家の裏手からゴブリンがたくさん回ってきたわね。
屋根の上にもいるわ。これはちょっと絶望的かも…
そのとき、異常な魔力を感知する。
っ!なに、この魔力反応は!?
…私のお腹から?!
ゴブリンたちの手足に、虚空から黒い枷が嵌められる。
虚空の穴からはゴブリンの首に向かって、黒い鎌が飛ぶ。
あれだけいたゴブリンたちが、黒い砂に変わる…
今のは一体…?私の子が起こした魔法なの?
たくさんの魔石がコロコロと転がる中。
村長のテディとカレンが駆けつけてくれる。
「リーンよ、今の魔法はなんだ?禍々しかったぞ?」
「私にはわからないわ…」
「その割には、原因に気がついてるようだが…」
「私にもまだハッキリとはわからないのよ。
だから、今は黙秘するわ」
「…そうかい」
「それよりも二人を止めてちょうだい」
「なんでカレンがここに来てるのよ!この筋肉女!」
「あぁん?あたしゃ、アルフに頼まれてきたんだよ!
…まったく。外見と中身が一致しない、外見詐欺女が!」
「…あれを止めろいうのか?」
「…頑張って」
「おい、目を逸らすな」
これで私の安全確保は出来たわ。
あとはあなたが無事に帰ってくるだけよ、アルフ…
そういえば、子供たちが鍛錬に森に行っていたわね?
コースケたち、無事かしら…?
短いですが、区切りがいいのでここまでで。