表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新停止】異世界音楽家  作者: 物部K
勇気と誓いと旅立ちの三重奏
16/29

子供たちの森林体験、保護者付き

模擬戦のリベンジに成功した翌日。

私たちは現在、森の入り口前でガースさんと共に待機している。

残りの二人の父親たちは、村長に話を持っていっているところだ。

村の子たちには、森に行ける私たちを羨望の眼差しで、

見ている子が多かった。


今日の装備はかなり軽装だ。

私が棒を持っているくらいで、他は全員皮鎧とナイフだけだ。

ガースさんも手斧とナイフ、そして皮鎧だ。

幼馴染の二人はガースさんからナイフの扱い方を聞いている。

私は村の門番さんと気軽な会話をしていた。

しばらくして、父さんとドジャーさんもようやく来たようだ。


「待たせたか?子供を村の外、特に森に連れていく場合には、

村長と親の許可が必要だからな」

「僕たちが子供たちに負けたという話をしたら大笑いして、

その時の話をせがまれたよ…」


「あの村長ならそうなるわい…」

「村長さんって、若く見えるあの女性の方ですよね?」

「やめとけ、坊主。そんなことを言うと、あいつは喜んで、

お前さんに酒を飲ませるぞ」

「うっ、気をつけます…」


「村長ねえ。俺は興味ないな。年齢はかなり上って話だぞ?」

「あんた、やめときなさい。大人の女性に年齢の話は禁句よ」

「お前さんたちはお前さんたちであいつに聞かれたら、

その身の若さを吸われるような会話をしおってからに…」


「まあいいさ。許可は出た。森に入ろう」

「とは言っても、今日は僕たちについてくるだけだけどね」

「お前さんたちに、森の歩き方を教えるのが目的じゃからな」


『はい!』


「元気がいいな。よし、行こう」


私たちは森の中へと足を進ませる。

最初のうちは歩くのも踏み固められた道で平気だった。

だが、道が途切れてからは森の深い道を進む。

木の根が邪魔だったり、低木の枝が視界を防いでいたり、

草が足に絡んだり、と歩くだけなのに体力を消耗した。


その木の枝などが鬱陶しくなり、ポリルとフェリルが、

「邪魔だなあ」

「切ればいいのよ、切れば」

と、ガサゴソとうるさく物音を立てていた。

そんな二人は親たちに注意される。


「ポリル。森では静かにするんだ。獲物に逃げられる」

「フェリルもだよ?そんなに音を立てたら、気づかれる」


『は~い…』


「ガースさん、いつもこんなに森の奥に入ってるんですか?」

「いや、お前さんたちがいるからじゃな。

手前でも十分じゃが、すでに奥に逃げられておるんじゃ」


「奥に逃げられる?もう僕たちに気付かれていたんですね」

「そうじゃ。足音にも、もっと気を配らねばならぬ」


「気をつけます。二人もだよ?」


『は~い…』


「それと、周囲にも気を配ることも忘れずに、ねっ!」


「おわっ!何するんだっ、ドジャーさん!?」


「ポリル、よかったわね。お父さんは助けてくれたのよ?」

「なんだって?え?」

「ほら、毒蛇よ。ナイフ投げてくれなかったら、危なかったわ」


「そういうことさ。フェリル、僕のナイフ取ってくれる?」

「はーい」


ふむふむ。森の中では細かい危険な生物にも注意っと。

私たちは背が低い。

大人よりは見落としにくいが、頭上には注意しないと危険だ。

その上で、獲物を見つけるために、静かに移動する。

これは魔法で、いくらか対応できるかなあ?


考えながらも注意して森を進んでいると頭上から、

「バーカバーカ」

と声がした。

周辺からもいくつもの声が重なって聞こえる。


父さんが弓をつがえている。そのまま構えて射る。

ドジャーさんも矢を放っている。

しばらくして、鳥の飛び立つ羽音がして、声が聞こえなくなった。

父さんたちが草をかき分けて進んで、獲物を見せてくれる。


「ふう。よかった、バカ鳥の群れに出くわして…」

「危うく、成果なしになるとこだったねえ」


「父さん、それがさっきの鳴き声の鳥?」


「ああ、そうだ。声が特徴的だから、とても覚えやすい鳥だ。

狩りの初心者向きの鳥だな。居場所も鳴き声で教えてくれる。

基本的に、被害が出るまで逃げることもない。

まあ、矢を外すと馬鹿にされた気分になるがな」

「さあ、親子で別れてバカ鳥の回収だ。川が近くにある。

どうせなら、血抜きもしてしまおう。

血抜きしないと、肉がまずくなるからね。フェリル、おいで」


「ポリルはこっちじゃ」


私も父に呼ばれて、草をかき分けていく。

結構なら群れだったんだな、バカ鳥。

丸々と太った鳥が、五羽ぐらい落ちてる。

足を掴んで集める。丸々太っているから結構重たい。

矢はまだ抜くなと言われた。

血が出て、ニオイで危険な生物を引き寄せてしまうからと教わる。

そのまま川へと連れていかれた。

川で合流して、血抜きだ。そして、解体もする。

川辺に大きな葉があったため、それに包んで持ち帰るようだ。


今日は大漁だったようだ。帰り道に果物も採取する。

そのため、村に帰って、近所の小麦農家におすそ分けして、

小麦を少し分けてもらう。


今日は普段より豪華な夕食になった。

母さんにと思って取ってきた果物も喜ばれた。

妊婦にはやはり、酸っぱいものがいいのだろうか?

私にはわからない。




翌日からは親子で森に入ることになった。

私はさっそく試したいことがあった。

なので、父さんに軽く説明して、許可をもらう。

父さんは驚いていたが、やってみなさいと許可してくれた。


「じゃあ、早速。サーチマップ!それと、サイレント!」


試したかったのは、消音と索敵の魔法だ。

消音の魔法は足音や物音、話し声を消してくれる。

自身の周囲を囲むドーム状の消音結界を張っているのだ。

これで、父さんの足音も消してくれる。

それに、指示も口頭で出せるようになった。


索敵の魔法は、その名の通りなのだが、性能は抜群だ。

頭の中には、イメージした通りに簡易地図が浮かぶ。

青色の点が私たち、味方を示している。

赤色の点が敵性生物、主に毒をもつ危険な生物だ。

緑色の点だが、今回は獲物だ。普段は有効的な相手を示す。

なるべく美味しい獲物と意識したために、数が少ないようだ。

黄色の点は果物などの採取物だ。

今回は酸っぱい果物に限定している。


初めて使ってみたが、索敵の魔法はかなり便利だな。

魔力の消費もかなり少ない。常に使っておきたいほどだ。

各種、細かく設定できるし、常にマップが更新される。

マップの拡大、縮小も可能で、今は十メートル単位の縮図だ。

危険な生物が近づくと、警告音を鳴らすようにもした。


父さんに簡易地図は見えていないので、獲物の方向を教える。

獲物の方向に移動すると、太った短い蛇のような生物が見える。

父さんは獲物を見て、若干驚いていた。

父さんが私にやれと指示をくれる。

私は指示通り、魔法を使う態勢に入る。

使うのは感電の魔法だ。

なるべく傷つけないように意識した魔法で、小声で唱える。


「ショックボルト」


獲物に向かって、青い稲光が飛ぶ。

稲光が当たった獲物は、ビクンと大きく痙攣して動かなくなった。

私は落ちついてから、父と一緒に獲物に近づく。

父が獲物の名前を教えてくれる。


「驚いた。まさかツチヘビに出会うとは…」

「ツチヘビ?」


「ああ。こいつの肉は、国でも高級品に指定されている。

それくらいうまい肉なんだ。

太っているから、それなりに肉が取れる点も評価が高い。

それを簡単に見つけ、皮にも傷がない状態で殺すとはな…」

「へー、そんなに美味しいんだ。皮も高く売れるの?」


「ああ、肉と同じように高級品だ。存在が珍しいからな」

「じゃあ、街で売れるようにたくさん確保したいね」


「魔法だと簡単なんだろうな。だが、取り過ぎるなよ?」

「わかってるよ。そこはちゃんと注意する」


その後も獲物を見つけては、私が魔法で狩りをした。

麻痺させるパラライズで動きを止めて、生きたまま捕獲。

非殺傷魔法のゴムショットを頭にぶつけて、気絶させる。

口笛を吹いて、獲物をおびき寄せることもしてみた。


危険な生物も警告音で気づき、父よりも先に対処する。

父がもうお前一人で十分じゃないか?と若干呆れていた。




今のところ、父はほぼ荷物持ち扱いだ。

荷物持ち以外では、獲物の名前を教えてくれるのと、

これもうまいぞと言って、キノコなどを教えてくれる。

サーチの魔法は便利なのだが、今はまだ大雑把なのだ。

名前が分かれば、限定して探すことも出来るのだが…

そのために、まだ父にはついてきてもらう必要がある。

物を教わりながら、大きな獲物も持ってくれる。

子供の私には、とてもありがたい存在だ。


そうして、日々を過ごす。

もうすぐ夏も終わり、収穫の秋になる。


森の幸も変わるので、まだ父とは離れられないが…

その内、単独行動も許すと言ってくれた。

息子の荷物持ちは嫌だそうだ。さすがに苦笑いが出た。




単独行動が出来るようになったら、試したいことも出来る。

早く許可されないかなと思いながら、獲物を仕留める。

今日はもう持てないと父が言うので、帰ることにする。

私も獲物を持つが、こんなには持てないと、

途中で合流したポリルとフェリルたちにおすそ分けした。


まさか、獲物は考えてから取ろうと誓うハメになるとはね。

そんなこと、思ってもみなかったよ。ハア。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ