表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新停止】異世界音楽家  作者: 物部
勇気と誓いと旅立ちの三重奏
14/29

森に入るための模擬戦

この話から試しにと、改行を使わなかったりと色々と試していきたいと思います。

 魔力と魔法の扱い方を習って、日々の鍛錬が少し変わった。

 まず、午前中。私が各家の家事を終わらせる。

 まだ納得はしていないが、この方法が一番早く集まれるのだ。

 母であるリーンからポリルとフェリルは毎日、魔力血管の拡張具合を見てもらっている。

 リーンの魔力検知が検査のレベルまで上がったのは、私の助言のおかげだ。

 主に想像力の面で役に立てた。


 ただ、やはり自身で魔力を巡らせるのは時間の効率が悪いと、リーンが言うので、自動拡張の魔法を教えることになった。

 最初は理解できるか不安だったが、リーンも協力してくれて、ポリルとフェリルの二人も自動拡張の魔法を習得した。


 性格が出るのか、二人の自動拡張の使い方は違う。

 ポリルは、座学中や筋肉鍛錬中などの安全が確保される場合には、やや痛みを伴ってもいいから、多少無理をして、魔力血管の自動拡張を進めているようだ。

 もちろん、集中するような場面では抑えているとのこと。


 フェリルは、とにかく速く魔力を循環させているようだ。

 魔力血管に通す魔力量はそこまで多くない。

 本当に少し拡張される程度だ。だが、速度が異常に速い。

 常に、自身の能力の限界ギリギリまでの速度を保っている。

 今のところ、どんな場面でも問題なく動いているようだ。


 母のリーンも自動拡張はしている。

 だが、私たちと違って、もう魔力量は伸び悩む時期らしい。

 魔力量は十代の内が一番伸びると教わった。

 そのため、そこまでの拡張はしなくていいのだが、今まで出せなかった魔力放出を伸ばすという意味で、自動拡張の魔法を日々使っている。




 自動拡張の魔法のおかげで午前中は基本的に、どんな魔法があるのかという座学中心になった。

 その魔法の想像は、どうすればいいかという会話がメインだ。

 試しに魔法は使うが、魔力衰弱を起こさないように、慎重に丁寧に魔法を使っている。

 魔力衰弱を起こすと、午後の筋肉鍛錬がつらいのだ。


 ちなみに、わたしはこの会話には混ざらずに、独自の『音楽魔法』を鍛えている。

 使った『魔法名』をより扱いやすくするための研究がメインだ。

 『魔法名』だけでなく、音楽用語の意味も少し捻じ曲げて解釈している。

 これらを日々、木の板に簡易鉛筆で研究結果を書きまとめている。




 それと、音楽魔法を咄嗟に使いこなせるように、合間を見て母さんに『識別板』を上げてもらっている。

 識別板の内容を瞬時に判断して、対応した魔法を使う練習だ。

 この『識別板』には、それぞれの魔法のイメージを描いた。

 地球で言う『アイコン』みたいなものだ。


 今は識別板を手に持ってもらい、上げてもらっている。

 難易度を上げるときが来たら、口頭での指示に切り替えてもらうのだ。

 母さんもこの練習は楽しんでいるようだ。

 なぜなら、間違うたびに私が腕立て伏せ十回するからだ。

 母さんのサディスト!

 だが、おかげで魔法の扱いにも慣れ、筋力もついた。


 このようにして、私たちの午前の魔法鍛錬は継続中だ。




 昼食をはさんで、午後は筋肉鍛錬だ。

 これも相変わらず、基本的に私は走るだけだ。

 ポリルとフェリルは、私が疲れたら木剣で打ち合う。

 私はその間に、ポリルとフェリルの勉強具合を確認する。


 毎日薪を5本持ってきてもらい、その断面に計算式を書く。

 持ち帰らせて解かせて、翌日に持ってこさせるのだ。

 つまり、毎日薪十本抱えていることになる。

 これもどうにかしたいのが、名案が今のところない状況だ。


 そして、午後になると私が二人の問題の解答を確認するのだ。

 確認が終わったら、二人には打ち合いをやめさせる。

 そのまま、問題のやり直しさせてから、打ち合いは再開だ。


 片方だけが満点だった場合には、相手のやり直しが終わるまで、腕立て伏せなどの筋トレをさせている。

 ちなみに、筋トレの間にも問題を出して、考える力を身に着けさせている。


 そのため、二人とも相手のためにと頑張る傾向が出来た。

 うんうん、無理やりやらせているけど、美しい友情だ。

 二人がジト目を向けている気がするが、気のせいだな。


 念のためと思って、二人に『です、ます口調』を覚えさせ始めた。

 簡単な敬語だけでも覚えておくと、世の中は生きやすいからだ。

 ここ最近は、年上相手には~、などと話して教えている。

 二人には、年上は性格も仕事も面倒だと、余計なイメージを植え付けたかと少し心配した。


 午後の鍛錬もこのようにして、日々続けている。




 だが、最近困っていることがある。

 午後の筋肉鍛錬に、幼馴染の二人が物足りなさを感じているのだ。

 同じ相手と毎日打ち合っているせいで、変な読みあいをするようになったと言っている。

 筋トレも今の年齢だと、やりすぎもよくないと私が抑えている。

 そのため、私たちは今、伸び悩んでいるのだ。


 そんな中、現れたのが我らの父たちだ。




 まず、我が父アルフレッド。

 冒険者時代には変幻自在の双剣を使って、たくさんの魔物を切り伏せていたと本人から聞いた。

 現在は、開拓村での狩りのために、弓も使っている。


 ポリルの父、ガース。

 冒険者時代は大きな斧を使う重量系の戦士だったらしい。

 その力で、巨大な魔物にも深手を負わせて活躍したそうだ。

 現在は、開拓村で木こりをメインに活動している。


 フェリルの父、ドジャー。

 冒険者時代では、斥候を務めていたらしい。

 武器は主に短剣や弓、その場にあるものはすべて利用して戦う。

 現在は、開拓村で細工師をしている。

 細かい作業が得意で、たまに木像を作っているのを見かける。


 そんな父たちは昔、パーティを組んでいたようだ。

 そのため、互いの家は仲がいい。

 最近、ドジャーはどちらの家の子に、フェリルを嫁に出すか悩んでいるそうだ。




 その父たちが、私たちの鍛錬の様子を、たまたま通りがかって確認していた。


「ふむ。そろそろ森に出してもよさそうだな?」

「そうだな。この年頃にしては十分に動けている」

「ああ。でも、フェリルに何かあったらどうしよう…」


「父さん、森に行ってもいいの?」

「父ちゃん、ホントか!?森に行ってもいいのか?」

「もう、お父さん。心配し過ぎだよ、私は大丈夫よ」


「だが、少し確認してからだな」

「うむ。たまには、子の面倒も見てやらねばならんしの」

「フェリルを止めるために、私が壁になるんだ!」


「確認?」

「父ちゃんが面倒を見るって、何するんだよ…」

「止めるために、壁になるって。はあ。厄介だなあ」


『模擬戦をするぞ』


『模擬戦?』


「ああ、三対三の模擬戦だ。集団戦を見る感じだな」

「周囲を見て連携を取れなければ、森では話にならん」

「怪我させないように、ちゃんと手は抜くからね?それに子供相手には、まだまだ負けないよ」


「なるほど。集団戦かあ。たしかにやったことないですね」

「父ちゃん、勝ったら森に行ってもいいんだな?!」

「お父さんはすぐムキになるから、心配だよ…」


「それじゃあ、装備を整えて、広場に行こうか」

「ドン爺の安全な武器を探さなきゃな…」

「じゃあ、先に広場で待っててね~?」


 そう言って、父たちは装備を取りに、その場を去っていく。

 うーん、模擬戦とはいえ、集団戦か。

 今の私たちにいきなり連携は無理だな。

 これは何度も負けそうだな、それも簡単に。

 二人はやる気のようだし、とりあえず先に広場に向かうか。


「少し待たせたか?刃を潰した武器を探すのに時間がかかった」

「すまんな、三人とも。ワシらも現役の武器以外はないのじゃ」

「僕は少しなら手元に置いてあるけど、それでも少ないね」


「いえ、大丈夫です。まだ日は高い方ですから」

「父ちゃんたちと戦える!く~、ワクワクするなあ!」

「お父さん、しっかりと色々持ってる。気をつけなきゃ」


「それじゃあ、始めるか。作戦会議は終わってるんだろ?」


「はい、父さん。先ほどまでしてました。準備は出来ています」


「じゃあ、この石を投げるから、落ちたら模擬戦開始だ。

脱落したら、素直に負けを認めるように。危ないからな」


『はい!』


「よし、投げるぞ~!」


 空高く舞う石。やる気をみなぎらせる二人。

 作戦はこうだ。

 前衛にポリル、遊撃にフェリル。そして、後衛が私。

 私は、広い視野からの魔法で、二人を支援することにした。

 ポリルが前を受け持ち、フェリルが臨機応変に動くことに。


 石が地面に落ちて、コツンと音を立てる。

 さあ、戦闘開始だ!



 最初に前に出てきたのは、フェリルの父ドジャーさんだ。

 すぐにポリルと対峙する。ポリルは手に握る木剣に力を籠める。

 だが、ドジャーさんは短剣を振るフリをして、砂で目つぶしをした。


「くそっ、目がっ!」

「はい、おしまーい」


 これにはポリルも対応できず、首に手刀を当てられて脱落した。


 これで前衛が潰された。

 臨機応変に動くはずのフェリルが前衛の立ち位置になる。

 私はドジャーさんの後ろから迫る父たちを止めるため、それとフェリルを守るように魔法を行使する。


「アースウォール!」


 使った後に気付いたのだが、使う魔法の選択を間違えた。

 フェリルの前を半円のようにして囲う土壁を作った。

 半円に囲った土壁の真ん中にだけ道を開けて、ドジャーさんの行動を狭めようとしたつもりだった。


 だが、私の魔法のせいでフェリルの視界を狭めてしまい、後方の父たちの様子が分からない状態にしてしまった。


 フェリルは守るべき私の存在に気を取られながら、ドジャーさんとの一対一になり、体格差と剣の腕の差で負ける。

 短剣で木剣を絡めとってたぞ、どうやってるんだあれ。


 そして、私の下に三方向から父たちが迫る。

 私は最後まで足掻くつもりで、魔法を使う。

 足元を隆起させる。これなら!


「アースライズ!」


 地面を隆起させて悪あがきしてみたが、簡単に乗り越えられて、三方向から武器を突き付けられて、私も敗北した。




 うーん、見事な敗北。連携をする前に、連携を潰されたね。

 あと陣形も間違えたかも。

 手練れ相手の対人戦闘って感じだった。

 それからは、父たちを交えて反省会だ。


「ポリル君。

斥候や暗殺者を前にして、力いっぱいに武器を握るのは悪手だよ?

からめ手を使ってくださいって、言ってるようなものだよ」


「そうなん、ですか?」


「うん。僕みたいのを相手にするときは、緩く構えて、どんな動きにも対応できるようにすることが大事。

砂がある地面では、目つぶしを警戒するのも基本だよ?」


「はあ。俺が一番苦手とするタイプだな、これは…」


「まあ、僕みたいのを相手にはさすがに慣れが必要だね。

後ろに守るものがある戦いでは必ずと言っていいほど、無理難題を突き付けられてると覚悟することだ」


「わかっ、り、ました…」


「慣れない口調、頑張ってるね。偉いよ。次はフェリルだね」


「うん。もっと武器をちゃんと握るべきだった。

それと、後ろを気にし過ぎた。

視界が狭まって困惑したってのも、もちろんあるけど…」


「うっ、ごめん…」


「そうだね。二人はそこが反省点だね。

武器はしっかり握ること。

せっかく行動を狭めてもらえて、一対一になったんだ。

目の前の相手にだけ、集中するべきだったね。


コースケ君は使う魔法を間違えたね?

壁を出すくらいなら、突風で後ろの二人を遅らせればよかったんだよ。

まあ、いくらなんでも、こればかりは実戦経験が必要だね」


「うぅ、あんな簡単に武器を取られるとは思わなかった…」


「僕も使ってから、使う魔法を間違えたって思ったよ…」


「そうだな。俺からは…

コースケ、お前はなんで無手なんだ?

せめて、杖か棒を持ったほうがいいぞ?

少しでも武器に対抗する手段はあった方がいい。


後衛の役割は、魔法で火力を出すことももちろんあるが、魔法などで時間を稼ぐことも大事だぞ?」


「そうだね。魔法に向いた杖は今のところないから、棒を持つことにするよ。

魔法で時間を稼ぐか。考えたこともなかったよ。

ありがとう、父さん」


「ワシからじゃが、連携を潰しにいったとはいえ、陣形を間違えていたと感じた。

森で行動するなら、あれでいい。

だが、対人戦闘するのであれば、前衛が二人でよかったじゃろ?」


「そうですね。僕の作戦が間違えていました。

森に行くことが頭にあったせいで、あの陣形にしたんです。

対人戦闘ならフェリルも前に出して、前衛二人にしました」


「そうじゃな。あとは坊主、最初に様子見したじゃろ?

あれでは後衛にいる魔法使いの意味がない。

後衛なら妨害なりなんなりと、初手で挟んだ方がええ。

後衛の基本戦術は、相手が嫌がることをするんじゃよ。


相手の前衛に万全の戦闘をさせちゃいかん。

前衛が相手をするのに、一気に楽になるからの」


「はい、わかりました」




「よし、反省会は終わったな?夕方まで模擬戦を続けるぞ。

次からは反省会なしで、終わったら位置についてやり直しだ」


『はい!』


「うん、いい返事だ。よし、また石を投げるぞ。そらっ!」


 こうして、私たちは夕方まで模擬戦を繰り返した。

 その後もいいところはなく、私たちは一方的に負け続けた。

 だけど、たくさんの経験は積めた。


 音楽魔法に頼ると、火力が危険だから模擬戦では使えない。

 そして、私の魔法の使い方はまだまだ甘い。

 その場での対応力が、実戦経験が足りなさすぎる。


 模擬戦を繰り返して、対応力を鍛えられたが…

 今のままでは、戦闘状況に合わせた魔法が使えない。


 もっと魔法の自由度を、活かさないといけない。

 魔法は自由だ。その分、対応力の性能は高い。

 私次第で、戦闘状況が大きく変わる場面は今後もあり得る。




 もっと魔法の腕を磨こう。発想力を鍛えよう。

 そう思えた模擬戦だった。


 ちなみに、森へ出ることは父たちを納得させなければ、許可しないと宣言された。

 これには二人が燃えて、打倒父たち!と作戦を考える。

 私もこれに混じっている。

 最初の作戦ミスが思ったよりも悔しかったみたいだ。



 意外と負けず嫌いだったんだな、私。と再確認した一日だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ