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4話 行動

「あー、ツイてないな……一歩間違えたら死んでいた……」


「大丈夫? けど、そうなったら私と一緒に過ごせたかもねぇ~」


「幽霊に言われると洒落にならないな……。その時はその時でまた成仏する方法を見つけなきゃだし、そもそも誰に見つけて貰うか……」


「お父さんとお母さん? うーん、難しいね。けど、一人より二人だよ! お兄ちゃんが幽霊になったら私も成仏しなくて良いかなって思ったりして!」


「ハハ……まあ、考えとくよ」


 ベッドに寝転がり、コブが出来た自分の頭に触る。その様子を心音は心配そうに見ていた。

 風呂で足を滑らせて頭を打った俺だが、大事には至らず頭に瘤が出来るだけで済んだ。

 運が良いのか悪いのか。いや、転んだのは完全に俺自身が原因だし、それでこの程度なら運は良い方か。

 妹と一緒に幽霊旅なんて洒落にならなかったな。しかも親からしたら一週間も経たないうちに子供が二人亡くなった事になる。

 別々の事故かつ、俺の場合は俺の不注意。それでは色々と申し訳が立たない。

 取り敢えず俺は起き上がり、ベッドに座って心音の方を見た。


「さて、と。それはさておきだ。今日はもう寝るだけ。本格的な行動は明日だけど……その前に一つ、心音の友人達にどうやって話し掛けるかが一番の問題だ。俺との年の差的に犯罪にはならないけど……いや、大学生って問題か……? 年齢的には2~3歳差だけど。何より俺自身が滅茶苦茶緊張している。これをどうするべきか」


「それってお兄ちゃんの度胸の問題なんじゃ……」


「その行動までの度胸……勇気を出すのが大変って事だ。同性ならともかく、異性となると色々と大変だろ? ほら、“コイツ私に気があるんじゃ”とか、“お葬式で話しただけなのにその気にさせちゃった?”とか、“タイプじゃないんだよねぇ”とか……そう思われたら嫌だろ?」


「それってただの被害妄想……それに、ユナっち達はそんな事思わないよ」


「そりゃまあ……誰にも言われた訳じゃないけど……ちょっと会話しただけの女性に話すなんてな……俺にはかなり難易度が高いんだ」


「うーん……今悪口っぽい言葉が思い付いちゃったからそれは言わないとして……ピュアというか何て言うか……女性経験の少なさが露見しているね……」


 童○臭いという言葉を大分オブラートに包んで話す心音。

 確かに俺には女性経験が無い。けど、だからこそ、だからこそそれを即座に克服するのは無理な話だ。


「というか、そんな事言う心音だって男性経験無いんだろ? まさか……俺の知らない所で不埒な日々を……!」


「そんな訳ないよ! 男性経験が無いのはそうだけど……別に男友達が居なかった訳じゃないし、お兄ちゃんはちょっと奥手過ぎるんじゃない?」


「いやいや……俺にも女友達くらいは居るよ。ほぼ初対面の女性に話し掛けるという行為がだな。しかも相手は女子高生……」


「そんなの気合いで吹き飛ばしちゃえ!」

「気合いで何とかなったら今頃俺にも彼女が……」


「勇気出せば一人くらいは付き合えると思うけどなぁ。顔、悪くないし」


「いやそんな。取っ替え引っ替えの思考は男らしくない」


「堅いなぁ」


 ……と、割と話が逸れた。

 兄妹の異性交友は今関係無い話だな。

 一先ずズレた話を戻すか。


「けどまあ、心音の為だ。その辺の勇気は何とか出すよ」


「お兄ちゃん……」


「そこで差し掛かる一番の問題……心音の学校と俺の学校の違い。始業時間と終業時間。そして友人の部活とか、色々と調べておく必要がある……女子高生を調べるって言葉にするとかなりアレだな……」


「あー、確かに問題だね。女子高生を調べるって事じゃなくて、ユナっち達の行動が。……けど、三人とも私と同じ部活だから、大体午後5~6時頃には学校を出るよ?」


「成る程……確かにいつも迎えに行っていたのはそのくらいだな。学校の行事とか大会前とか、遅い時は午後7~8時とかにもなったけど、基本的にはその時間帯か。まあ、俺の方が遅い時もあるし、その時の授業内容次第だな……」


 心音の友人達は夕方頃に学校を出るらしい。

 基本的には俺と同じくらいか俺の方が少し早いにせよ、本当にその時次第だな。一先ず明日の授業を確認してみるか。


「……。明日は早いな。むしろ明日しかないか……」


「明日……あ、明日ならユナっち達も早いよ! 私の命日と同じくらいの帰宅時間!」


「命日って……けど、明日しかないか……いや、来週とか再来週なら……そろそろ夏休みに入るし……」


「臆病者~」


「うっ……分かったよ。明日行く。行ってみるよ」


「それでこそ私の好きなお兄ちゃん!」


 心音に言われ、決心を固める。

 成仏するなら早い方が良いかもしれないし、心音がこのまま居るのは割と嬉しいけど、本人が悲しそうだからな。兄として何とかしてやらなきゃならない。


「はぁ……憂鬱だ……」

「死んでる私よりマシでしょ~?」

「寂しいとしても、比較的気楽ではあるだろ?」

「まあ、それはそうかなぁ?」


 取り敢えずやるだけやってみる。

 そして一先ず諸々の準備は終えた。なので俺は部屋の電気を消し、就寝の態勢に入る。


「……心音って本当に幽霊になったんだな……」

「……?」


 ふと横を見やり、暗闇の中でもハッキリとその姿の見える心音を見て呟くように話す。

 ぼやっと暗闇の中に浮かぶ、周囲に光を放っている訳ではないが明るい心音。ライトとかの光源とは違うんだよな。本当に、何かそこに浮かんでいるのが分かる。そんな状態。


「あー、私の姿ねぇ。確かに少し眩しいかもねぇ」


「いや、不思議と眩しくは無いんだ。なんなら月や星の明かりよりも弱い光……心音だけが空間……次元? ……に浮かんでいる感じだな」


「へえ。第三者からの私の容姿は初めて聞いたから新鮮~」


「そう言や、衣服とかが自由自在に変えられるって事は、自分の姿は分かるんだな」


「うん。何となく分かるんだ。自分の姿。鏡とかにも写らないんだけどね!」


「本当に不思議な存在だな……。うん……幽霊……って……」


「お兄ちゃーん?」


 ふと、急に眠気が襲ってきた。

 別に心音の所為という訳ではない。今日も夕方に少し寝たし、不眠症になった訳でもないけど、心音が亡くなってから色々と考えたりしてたからな。

 思い当たる節は脳内がキャパシティオーバーでショートしたのかもしれない。急激な眠気は“睡眠”じゃなくて“気絶”の前兆とも言うしな。


「悪い……眠い……」

「もうちょっと話したいのになぁ……けど、おやすみ。お兄ちゃん……ありがとう」


 まるで俺自身が死ぬかのようなやり取りを経て、俺は眠りに就いた。

 まだ完全に寝ていないから心音の声が聞こえる。少し寂しそうな、そんな声音。

 俺に触れているのか、俺の身体には不思議な感覚が走っていた。

 今日は準備……明日が……。



*****



「……んあ……」

「あ、起きた? お兄ちゃん!」

「……っ」


 目が覚めると、俺の眼前には心音の顔があった。

 心音は多分美人に入る部類だと思うけど、軽くホラーだぞ、これ。いや、そうか。ホラーなのは変わらないな。


「……心音。本当に居るんだな。死んだ筈なのに……」


 改めて、昨日急に現れた事を思い出す。

 ずっと居たらしいけど、そんな気は全くしなかったからな。本当に何で見えるようになったのか。

 そんな俺の言葉に対し、心音は肩を落として話す。


「何を今更~。ただ死んじゃった愛しの妹が前に居るだけだよ!」


「愛しの……まあいいや。さて、今日が来ちゃったな……。学校とかバイトとか、色々と憂鬱な時はあるけど……今日はより憂鬱だ……」


「ほらほら! 私の為に頑張って! お兄ちゃん!」


「はぁ……」


 昨日の明日、つまり今日。

 今日が来たという事は、大学生の男が高校生の女性に話し掛けると言う、犯罪紛いの事をしなければならないという事。

 いや、別に話すだけなら犯罪でも何でもないんだけど、俺にとってはそれ程の事だ。


「しょうがない。行くか……っと、心音はどうするんだ? 俺の大学にまで憑いてくるのか?」


「何かニュアンスが変~」


 俺の質問に対して一瞬だけムッとした顔をしたが、表情を明るいものに戻して言葉を続けた。


「今日は良いかな。お兄ちゃんも一人で考えたいだろうからね!」


「ハハハ……気遣いの出来る妹が居て誇らしいよ俺は。んじゃ、放課後。心音の学校に行くからその時は一応来てくれ」


「はーい!」


 今回、心音は別に俺の学校にまでは来ないらしい。

 確かに俺にも考える時間は必要だからな。悪くない判断だとは思う。かなり不安だけど。

 何にせよ、やらない事には何も始まらない……というか終わらない。

 俺は着替えて朝食を摂り、顔を洗い歯を磨いて身支度を整える。勝負は放課後。

 皐月結奈さん、小宮山紗枝さん、御門喜美子さん。心音の友達三人と話を付け、心音を成仏させるか。

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