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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第3章 リベンジ

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25.さようなら、異世界


魔王討伐から約1か月後。

日本に戻る当日。


剃刀のように鋭い月が夜の空に浮かぶ、静かな夜。


シオンは、自身が使っていた豪華な部屋を見回して、溜息をついた。



「この部屋とも今日でお別れか……」



もう二度とこんな良い部屋には住めないだろうな、と思いながら。

シオンはゆっくりと服を着替え始めた。


日本に着て帰るのは、柚子胡椒下着に、Tシャツ、フィッシングベスト。

召喚されてきた時と同じ服装だが、ポケットにはたくさんの異世界土産が入っている。


着替え終わり、着ていた服を綺麗に畳んで、時計を見上げると、午後11時半。

そろそろ約束の時間だ。


シオンは、大きな黒いローブを羽織ると、そっと部屋の扉を開けた。

誰もいない廊下を静かに歩き、地下にある『祈りの間』につながる長い階段を降りる。


そして、ぼんやりと明るい『祈りの間』に到着すると、そこには既に見送りのメンバーが待っていた。


ニカッと笑って手を振るジャックス。

相変わらず無表情な、でも、どことなく寂しそうな表情のアリス。

微笑しながら眼鏡をクイッと上げるウィリアム。

腕を組んで難しい顔をしているカルロス


シオンが祈りの間に入って行くと、床の魔法陣をチェックしていたゾフィアがにっこり笑った。



「来たわね~。準備は出来てるわよ~。もうちょっとしたら始めましょうか」



はい、と、頷くシオン。


ウィリアムが、手を差し出しながら言った。



「シオン。我が国を救ってくれて、本当にありがとうございます。そして、私と友人になってくれてありがとう。君の友人になれたことは、人生の誇りです」


「こちらこそありがとう。俺も、ウィリアムがいなかったら、きっと全然駄目だった」



カルロスがシオンを優しい目で見た。



「共に戦えたことを誇りに思う。むこうでも健闘を祈る」


「はい。お世話になりました」



ゾフィアがにっこり笑って手を差し出した。



「色々ありがとね~。魔力補充をしてくれる人がいなくなるのは辛いけど、がんばるわ~」


「こちらこそありがとうございました。ゾフィアさんじゃなかったら、帰還魔法の解析も発動もできなかったと思います」



アリスが潤んだ目でシオンを見た。



「……もう会えないの、寂しい」


「……ごめんな」


「ううん。いい。ずっと忘れない」



シオンは顔を上げると、ジャックスを見た。



「ありがとな、ジャックス。会えて良かったよ」


「俺もだよ。ありがとうな、シオン。むこうでも元気に暮らせよ」


「ああ」



離れがたい思いでいっぱいになり、黙り込む、シオン、ジャックス、ウィリアム、アリスの4人。


ゾフィアが、パンパン、と、手を叩いた。



「それじゃあ、始めましょう~」



息を吐いて、床に描かれた魔法陣の中央に立つシオン。


ゾフィアが、袖をまくりながら言った。



「計算上、シオンに付いている『紐』が、1年くらいずれるハズよ~。でも、正確に1年じゃないから、向こうに着いたら確認してね~」



シオンは黙って頷いた。

最悪もう1回繰り返すことになるかもしれないが、それはそれで悪くない。

むしろ、召喚の3年後とかに戻った方が色々と面倒そうだ。



(理想は、召喚された翌日だな。意味ないかもしれないけど、念じておこう)



祈るように両手を顎の前で合わせるシオン。



「じゃあ、いくわよ~」



ゾフィアが、陣に向かって魔力を込め始めた。


シオンの足元の魔法陣がゆっくりと輝き始める。

薄暗い祈りの間が、徐々に明るくなっていく。


シオンは目を細めた。

あと10秒もすれば元の世界だ。



光輝き始めるシオンを見て、ジャックスが叫んだ。



「気を付けろよ、親友!」



それに釣られるように、ウィリアムとアリスが叫んだ。



「ご活躍をお祈りしていますよ!」


「ん。元気で!……ずっと好きだった!」



「みんな、ありがとう。本当に、本当に会えてよかった!」と、叫び返すシオン。


「達者でな」と、手を振るカルロス。


ゾフィアが手を天に掲げた。



「じゃあ、送るわよ~。シオン、またね~」




ゾフィアの声と共に、まばゆい光が、魔法陣から一気にあふれ出した。


目を開けていられなくなり、思わず目をつぶる、シオンとゾフィア以外の4人。




――――そして、ふっ、と、光は消え。


4人が恐る恐る目を開けてみると。


そこはいつもと変わらない、うすぼんやりと明るい祈りの間。


シオンの姿は、もうどこにもなかった。






あと2話です。

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― 新着の感想 ―
とりあえず王女様と子作りしとけば良かったのに。
[一言] ん????今の告白??
[一言] 「またね」 「またね」
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