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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第3章 リベンジ

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20.王都への帰還


ミノタウルスの襲撃の翌日夜。


シオンは、討伐軍本体に対し、辺境伯領で1日ゆっくり休むように伝えた。

王都へ帰還すれば、記念パレード、記念式典と忙しいからだ。


そして、各副団長に、怪我人を考慮してゆっくり王都に帰って来るように伝え。

自分達は王都へと急いだ。


王都へ行くメンバーは、辺境伯を含む、ミノタウルスの襲撃を知る主要メンバーと、拘束した王女達。

討伐軍本体が王都に到着するまでに、今回の事件のケリを付けるつもりだ。



馬車に乗って王都に向かっている途中。

ウィリアムが、ため息交じりに言った。



「彼等に少し尋問してみましたが、全然駄目ですね。エミールと騎士達は口汚く罵るだけですし、シャーロット王女はずっと黙秘しています。恐らく、王都に行けばどうにでもなると思っているのでしょう」



まあ、そうだろうな、と、辺境伯が苦笑いしながら言った。



「王女には『王族』という身分があるからな。いざとなれば国王陛下が助けてくれると思っているのだろうな」


「確かに、最終判断は国王陛下ですからね。娘には甘くなるかもしれませんね」



ジャックスが、呆れた顔をした。



「人を殺そうとして白を切りとおそう、って、根性が腐りすぎだろ」


「ん。同意、性悪すぎる」



コクコクと頷くアリス。

そして、何か思い出したのか、珍しくクスクスと笑い出した。



「でも、あの女。シオンが無双してるの見て、驚きすぎてアホみたいな顔してた」



ウィリアムが、プッ、と、噴き出した。



「それを言ったら可哀そうですよ。私も油断したらアホみたいな顔になりそうでしたからね」


「ん。私も。シオンすごすぎた」



ジャックスが苦笑いした。



「あー。確かに鬼気迫るってやつだったな。あんなに圧倒的に強い人間、初めて見たよ」


「私もびっくりしました。想像の10倍くらいすごかったです。その気になったら世界征服できるんじゃないですか?」



いやいや、するわけないじゃん、と、苦笑するシオン。


アリスが、心配そうにシオンの顔を覗き込んだ。



「シオン、ずっと元気ないね。大丈夫?」


「ああ。大丈夫だ。色々終わって、少し疲れが出た感じかな」



そう答えながら、シオンは内心溜息をついていた。


シオンは、2周目に入ってからずっと、「死亡エンド回避」を目指して努力してきた。

全員生き残り、みんなに喜ばれ、幸せな気分で王都に戻る。


しかし、蓋を開けてみれば、全員死亡エンドは見事回避したものの、犯人はシャーロット王女とエミール。



(……前回(召喚1回目)、一番世話になっていた人間が犯人だったとか、マジ凹むよな)



予想はしていたが、予想と実際に捕まっているのを見るのとでは大違い。


しかも、王宮に戻ったら、更に一悶着ありそうな気配。

正直げんなりだ。



(でも、まあ、あと少し)



国王との謁見を切り抜ければ、やっと終われる。


引き続きこの国に残るみんなのためにも。

自分のためにも。

最後まで戦い抜こう。



馬車に揺られながら。

シオンは、手を握りしめた。





* * *




魔王討伐成功の4日後の午後。

今にも雨が振り出しそうな、黒く重い空の下。


一行は、王宮に到着した。


事前に早馬を出していたお陰で、すぐに謁見の間に通されるシオン達。


謁見の間には、すでにこの国の主要人物達が揃っていた。


壇上に立つのは、王都に滞在していた主要貴族9人。

心なしか、バクスター侯爵の顔色が悪い。


中央の玉座に座っているのは、国王。その後ろに立つのは宰相。


宰相が大きな声で言った。



「タダ・シオン総司令、および討伐軍代表、前へ!」



シオン、カルロス、ゾフィア、ジャックス、ウィリアム、アリス。

他、騎士魔法士4名と、文官1名の、総勢11名が、前に進み出て、国王の前に跪く。


中央の玉座に座った国王が、重々しく言った。



「タダ・シオン総司令官。魔王討伐。まことご苦労であった。感謝する」


「はっ」



頭を下げるシオン。

国王は、軽く頬をほころばせた。



「聞けば、堂々たるものだったそうだな。被害も驚くほど少ない。シオン殿を総司令に任命したことは大正解であったと確信しておる」



もったいないお言葉です、と、頭を下げるシオン。



「……だが、しかし、だ」



国王が笑みを消した。



「良い話と一緒に、悪い話も入ってきた。

魔王討伐後、貴殿達をミノタウルスに襲撃させた者がいる、と。――それは本当か?」


「はい。本当です」



はっきりと答えるシオン。


宰相が声を張り上げた。



「その者達を、ここへ」



ガチャン、と、謁見の間の横にあるドアが開き、騎士に連れられて、4人の人物が入ってきた。


美しい顔を歪めたエミール。

泣きじゃくる神官。

ギリギリと歯を食いしばる教会騎士長。

そして、涼しい顔に笑みさえ浮かべている、この国の第2王女シャーロット。


4人が国王の前に跪くや否や。

バクスター侯爵が顔を真っ赤にして怒鳴った。



「シャーロット様に何たる無礼な! 我が子息エミールも侯爵家に連なる者ですぞ!」



国王は手でバクスター侯爵を制すると、シオンに尋ねた。



「彼等は、どのような罪状だ?」



シオンは顔を上げると、国王の目を見ながらキッパリと言った。



「彼らは、総司令官である私の命令に背いて、勝手に辺境伯領に来ました。そして、あろうことか、我々の殺害、および辺境伯領の蹂躙を企てました」



ウィリアムが、国王の赦しを得て、事情を説明しだした。



・総司令命令を無視して辺境伯領を訪れ、無理難題を押し付けようとしたこと


・教会騎士団が、教会所有の瘴気を発生させる魔道具を使って、2つ先の山の奥深くにいたミノタウルスを狂暴化させ、砦を襲わせたこと


・砦陥落後は、辺境伯領を襲わせようとしていたこと


・シャーロット王女が、夕食時に眠くなる薬草の入った酒を勧めて回ったこと


・エミールと王女が、高台でミノタウルスが砦を襲う所を見学していたこと


・これらにより、犠牲者が出たこと




黙ってウィリアムの言葉を聞く国王。

そして、目の前に跪いているシャーロット王女を見下ろすと、穏やかに尋ねた。



「シャーロットよ。そなたは本当にそんなことをしたのか?」



王女は顔を上げると、泣きそうな顔で叫んだ。



「でたらめです! わたくしはそんなこと、しておりません!」







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 話の展開が気になってわくわくしている意味でここに書くのだけれど、 勇者の弱体化を狙って魔道具を差し入れてきたことはここでは問題にしないのだろうか
[一言] 確かスマホは持ち込めてたっけ?
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