17.夕暮れ
話の流れ上、短いです。
魔王戦開始から、約4時間後。
シオンは、地面に座り込んで、ボーっとしていた。
――ヤバかった。マジでヤバかった。
魔王は、前回と比較にならないほど強かった。
事前準備も作戦も完璧にも関わらず、あそこまで追い詰められるとは想像していなかった。
最後、山中に残していた30名を呼んで、怪我人を交代。
何とか倒したが、あの30人の余裕がなかったら、マジでヤバかった。
そして、戦闘終了後。
クロスボウ隊の一部が、重傷者を連れて急いで下山。
残った者は、一旦休憩を取って、砦に帰ることにした。
広場では、補給部隊がかいがいしく軽症者の手当てを行っており、広場中央では、大きな鍋で炊き出しが行われている。
シオンがその様子をボーっと見ていると、ジャックスがスープの入ったお椀2つと、大きなおにぎりを6つ持って来た。
彼は、シオンの隣に座ると、お椀とスプーンを差し出しながら、ニカッと笑った。
「うまくいったな」
ああ、そうだな、と、言いながら、お椀を受け取るシオン。
そして、小声で尋ねた。
「状況はどうだ?」
「一部を残して、帰還を始めている。怪我人もいるが、暗くなるまでには街に着くと思う」
「そうか。それなら安心だな」
空を見上げると、かすかに薔薇色を帯びた雲が浮かんでいる。
あと数時間もすれば、漆黒の夜が来る。
シオンは、フウッと、息を細く吐いた。
ここからが本番。
ここからが本当にリベンジだ。
彼は、己の手を見た。
剣だこが出来た、硬くゴツゴツした手。
その手をながめながら、シオンは思った。
この2年間。
ずっと、この日のために努力を続けてきた。
世界を救う男になるぞ、と、弱気になる自分の尻を叩き、懸命にがんばってきた。
ここまで来たら、もうやることは1つだ。
シオンは立ち上がると、大きな声で言った。
「あと1時間ほどしたら下山する! 砦に戻るぞ!」




