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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第3章 リベンジ

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16.魔王討伐


作戦会議の3日後、早朝。


朝焼けが、冬の空ににじむように広がり始めた頃。


シオンは、銀色の鎧を身にまとい、砦の城壁から少しせり出すように作られたテラス様部分に立っていた。


同じくテラスに立つのは、カルロスとゾフィア。

砦前にある広い空き地に並んでいるのは、完全武装した魔王討伐軍約700名。


眼下に整列する自軍を見て、シオンはホッと胸を撫でおろした。



――良かった。今回はあまり緊張してない。



王都での出陣式の時は、ガチガチだった。

足も生まれたての仔馬みたいだったし、何をしたかもよく覚えていない。


でも、今は、高揚はしているものの、そこまでの緊張は感じない。

普通に立てているし、意識もはっきりしている。


シオンは思った。

やはり、数万人と700人では緊張度が違うのかもしれないな、と。



ちなみに、シオンが今回緊張していないのには、大きく2つの理由がある。


1つ目は、「場慣れ」。


ここに至るまで、シオンは何度も人前で話をする必要に迫られた。

村に滞在するとき、村から出るとき、朝の挨拶、解散の挨拶。

つまり、紫苑は、大勢の前に出たり話をすることに、慣れてきていたのである。


そして、2つ目は、「総司令としての自覚」。


この1カ月半の間。彼は総司令として立てられ続けた。

シオン自身も、皆の期待に応えようと奮闘。

特にシャーロット王女と教会が来てからは、自ら矢面に立って皆を守ろうと頑張ってきた。

その結果、今の彼には、総司令としての風格のようなものが備わっていた。


『男子、三日会わざれば刮目かつもくして見よ』とは、正にこのことである。



そして、全員が揃うと。


シオンは、すぅっ、と息を吸うと、静かに語り始めた。



「……私は、死ぬほど後悔したことがある」



考えて出た言葉、というよりも、自然に出た言葉に近い。

話しながら、脳裏に浮かぶのは、前回(召喚1回目)の最後に見た、焼け焦げて崩れた砦の風景と、物を言わぬ仲間達の姿。


シオンは、ギリリと歯を食いしばると、絞り出すように言った。



「以前、私は、己の最善を尽くさず、大切な仲間を失ってしまった」



例え、その裏に陰謀があったとはいえ。

前回のシオンはまんまと乗せられ、己の最善を尽くさなかった。

その事実を、彼は未だに深く後悔していた。



それらの思いを吐き出すように、シオンは叫んだ。



「だから! 俺は決めた! もう二度と後悔しない!」



その瞬間。


シオンの体から金色の魔力が立ち上がった。


討伐軍から、歓声が上がる。


シオンは剣を抜き放つと、天に掲げて、吠えるように叫んだ。



「これより魔王討伐を行う! 出し惜しみするな! 敵を殲滅せよ!」




オオオオオオオ!




拳を天に突き上げ、雄たけびを上げる討伐軍。




その様子を見て、カルロスの目に涙が浮かんだ。


約1年前。

初めてシオンを訓練場で見た時は、線の細い奴だと思った。

練習熱心で成長も早い。

でも、大きく目立ったところのない普通の青年。


しかし、今は違う。

軍を熱狂させるその姿は、英雄そのものだ。



――いかんな。年を取ると、涙もろくなるらしい。



そして思った。

魔王討伐も、ミノタウルス討伐も、きっと上手くいく。

いや、上手くいかせてみせる、と。




その後。

シャーロット王女が挨拶したいと騒ぐという想定外のハプニングがあったものの、シオンの一睨みで事態は無事収拾。


討伐軍は、砦から魔王のいる山へ進軍していった。





* * *





討伐軍が、魔王がいる山に入ると、Aランク相当の魔獣達が次から次へと襲ってきた。

その都度対応する、10人1組になった戦士達。


シオンは軽く唇を噛んだ。


――やはり、前回(召喚1回目)と比べ、魔物が確実に強くなっている。こちらの戦力アップ分が、かなりの割合で相殺されてる。


最初700人いた討伐軍も、魔物の足止めのため、どんどん数を減らし。


山の中腹あたりに到着した頃には。

精鋭部隊、クロスボウ隊、補給部隊の3小隊を除き、30名程度しか残っていなかった。


残った30名を後ろに残し。

3小隊は、山の中腹にある広場のような場所を覗き込んだ。


広場の端にいるのは、 5mを超えるであろう人形のような形をした瘴気の塊。


シオンは、小さく息を吐いた。


――いた。前回(召喚1回目)と同じ位置だ。でも、前回(召喚1回目)よりも確実に一回り以上大きい。


後ろを振り向くと、覚悟を決めた顔をした戦士達。


力強く頷く、ソフィアとカルロス。

そして、「派手にやろうぜ!」と、笑うジャックス。


シオンは息を大きく吸い込むと、剣を上にかざして叫んだ。



「行くぞ!」



オオオオオッ! 



雄たけびと共に、カルロス率いる騎士18名が広場に飛び込んだ。


魔王の目がギョロリと動いた。

カルロス達をみとめ、体から大量の瘴気を放出する。


カルロス達に続いて広場に飛び込んだシオンが、広場中央に剣を突き刺して叫んだ。



「<聖域サンクチュアリ展開デプロイメント>!」



広場全体に大きな魔法陣が展開され、キラキラとした光の粒子が放出される。

放出した瘴気が、光の粒子に相殺され、咆哮する魔王。


シオンに続いて広場に飛び込んだゾフィアが叫んだ。



「魔法士! 私に続け! クロスボウ隊! 補給部隊! 所定の位置に!」



広場の左右端を陣取るクロスボウ隊と、その後ろで待機する補給部隊。


そして、その瞬間。


再び咆哮した魔王が、3つに分裂した。

同時に放出される、30匹はいるであろうと犬型の魔獣。



シュッ、シュッ、シュッ



クロスボウ隊が、一斉に矢を放った。

犬型魔獣の多くが、矢に刺されて倒れる。


魔法陣を展開しながら、シオンはガッツポーズを決めた。



――よし! 効いてる!



シオンが吠えた。



「これより魔王討伐作戦を開始する!」






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