13.違和感
魔王討伐軍は、3部隊に分かれて辺境伯領に向かうことになった。
スピード重視の、第1部隊。
物資を積んだ馬車を守りながら進む、第2部隊。
追加の物資や各領地から集まった部隊を中心に結成される、第3部隊。
そして、栄えある先発部隊を率いるのは、我らが主人公タダ・シオン総司令官である。
先発部隊を率いると聞いた時。
シオンは、がんばるぞ!と、気合を入れる反面、不安になった。
第1陣に選ばれたのは、騎士、魔法士共に、超エリート。
お飾り状態の自分がリーダーで大丈夫なんだろうか。
しかし出発してみると、その不安は杞憂であることが分かった。
メンバー達は皆とても優秀で礼儀正しく、シオンを総司令官として立ててくれた。
シオンは思った。
不慣れな自分をここまで立ててもらって、有難い反面、なんだかとても申し訳ない。
ここは何とか頑張らねば、と。
リーダーらしく振舞おうと努力し始めるシオン。
――そして、王都を出発して3日目の夕方。
馬を走らせていたシオンに、隣を走っていたジャックスが叫んだ。
「領主館だ!」
前方に見えてきたのは、夕焼けに照らされた領主館。
領主館前に馬で乗りつける、シオンと第1陣。
館の中から、プロディア辺境伯と長男であるエドモンドが出てきた。
辺境伯が笑顔で言った。
「数日振りですな。シオン総司令官殿」
「お久し振りです。出迎え感謝します」
「先発隊も疲れたことでしょう。まずは宿泊所に案内させよう」
「ありがとうございます」
シオンは、くるりと後ろを向くと、声を張り上げた。
「まずは宿泊場に案内して頂く! 食事まで休憩!」
了解! と、返事をして、エドモンドの案内で移動を開始する先発隊。
辺境伯が感心したように言った。
「いやはや。どうなることかと思いましたが、大したものですな。立派な総司令官ではありませんか」
シオンは、バツが悪そうにポリポリと頭を掻いた。
「いや。そんなことはないです。皆さんにお世話になりっぱなしです」
すると、ジャックスが、シオンの肩をバンバンと叩いた。
「謙遜するなよ。最初はヒヤヒヤしたけど、今じゃみんなもシオンのこと頼りにしてる。すげーよ、シオン」
辺境伯が頷いた。
「地位が人を作ると言いますからな。心構えや自覚が出たのでしょう」
「そんなものなのでしょうか」
「そんなものですぞ。ささ、2人とも館に入りなさい。美味しい料理を準備させましょう」
* * *
辺境伯領に到着した翌日から。
シオン率いる先発部隊は、領民たちの避難を手伝いながら、周辺調査を始めた。
毎日届く、魔獣の情報と魔王出現の兆し。
それらを紙にまとめながら、シオンは思った。
前回(召喚1回目)よりも、明らかに難易度がかなり上がっているよな、と。
原因は、魔獣の数と強さだ。
前回(召喚1回目)は、5日かけて辺境伯領に入ったが、魔獣に襲われたのは1日に1,2回程度。
それも、 Eランク Dランクなどの小物ばかりだった。
しかし、今回。
襲われた回数は1日3~5回。
しかも、魔獣の強さは主にCランク。
Bランクのものまでおり、前回と比べて明らかに強い。
辺境伯領に出現する魔獣も同様で、数もランクも前回を大きく上回っている。
シオンは、考え込んだ。
きっと、何か理由があるはずだ、
前回(召喚1回目)と今回、何が違うんだ。
そして、気がついた。
もしかして、魔獣を倒し過ぎたんじゃないだろうか。
魔獣を完全に倒すには、光魔法が必要だ。
光魔法以外の方法で倒すと、魔獣は消えるが、魔物を組成していた瘴気は空気中に散ってどこかに飛んでいく。
今回、前回よりもずっと魔獣を倒している。
光魔法以外の方法で倒した魔獣の瘴気が、魔王出現場所である辺境伯領に集まってきているのではないだろうか。
――まずいなぁ。もしこの考えが正しければ、魔王も強くなる、って、ことだよな。
今回はシャーロット王女の引っ搔き回しがないので楽かと思いきや、どうやら魔王が強いらしい。
うまくいかないもんだ、と、溜息をつくシオン。
――でも、まあ、前回よりもみんな強いし、人員も装備も揃ってる。多分なんとかなるだろ。
数日すれば、主要メンバー全員が揃う。
その時に、また改めて相談しよう。
しかし、事態は思わぬ方向に進む。
数日後、招かれざる客が領主館に現れたのだ。




