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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第3章 リベンジ

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12.出陣式


シオンが総司令官に任命されて、4日目。


肌寒くてどんよりと曇った冬の早朝。


立派な軍服を着せられたシオンは、自室を歩き回りながら、ブツブツと呟いていた。



「ええっと。


『皆さん、おはようございます。この度の魔王討伐軍の総司令官を務めさせて頂きます、タダ・シオンと申します。今日という日を無事迎えられ、大変嬉しく思っております。……』」



呟いているのは、これから行われる出陣式でスピーチする予定の”総司令官挨拶”。

一晩かけて考え抜いた力作だ。


シオンは考えた。


出陣式の出席者は、騎士魔法士その他含めて、恐らく約1000人くらい。

イメージとしては、全校集会とか、そういう感じだろう。

そんな大人数の前で話した経験がないから緊張するが、恐らくメインは一番偉い国王の話。

総司令の話は、オマケみたいなもんだろうから、多少アレでも大丈夫だろう。




―――と、その時。



コンコンコン



と、ノックの音がして、騎士の1人が迎えにきた。


どうやら出陣式が始まるらしい。


シオンは、深呼吸すると、カンペをポケットに収納。

騎士の後をついて、部屋を出た。






* * *





――そして、部屋を出て30分後。



シオンは、遠い目をして、王宮前広場に面したバルコニーに立っていた。


同じくバルコニーに立っているのは、国王、宰相、カルロス、ゾフィアなどの重役たち。

皆一様に厳しい顔をしている。


そして、バルコニーの下に広がるのは、フジロックの大ステージを髣髴とさせる、数万人の大観衆。

かなり広い広場にも関わらず、人・人・人、で、ぎゅうぎゅう詰め状態。

気が弱い者が見たら卒倒しそうな光景だ。



『見渡す限り人の海』状態の広場を見下ろしながら、シオンは、呆然とした。



――お、おかしい。想像と違い過ぎる。1000人程度じゃなかったのか?



ちなみに、人が多い原因は、ずばりシオン。

勇者シオンが総司令官と知り、民衆が応援に駆け付けたのだ。


しかし、そんなことを知らないシオンは、想定外過ぎる事態に完全に色を失った。


小学校の朝会程度に考えていたのに、まさかの野外ロックコンサート状態。



――こ、こんなところで挨拶するのか?

――お、俺、高校生だぞ!? どう考えても場違いだろ!



パニックに陥るシオン。


しかし、無情にも出陣式は開始。


国王がゆっくりと話し始めた。



「辺境伯領にて魔王出現の予兆が確認された。魔王は確かに強い。しかし我々には最強の部隊がいる……」



朗々としゃべる国王。


その後ろで、必死で心を落ち着けようと、何度も深呼吸するシオン。

手のひらに人を描いて飲み込んだり、人を野菜に見立てようと試みるが、全く効果がない。


そして、よく分からないうちに国王の話が終わり。


宰相が、声を張り上げた。



「それでは最後に。総司令である勇者シオン!」




ワアアアアッ!!!




民衆達が歓声を上げた。


空気が震え、地面が揺れ、その場の熱気が一気に上がる。



――ま、ままままま、まずい! ど、どどどど、どうしよう!



シオンは、必死に頭を働かせた。


ここで考えられる手は3つ。


A.持って来た紙を読む

B.アドリブでうまいこと言う

C.うやむやにする


Aがナシなのは流石のシオンも分かる。

この場であの挨拶を読んだら単なるアホだ。


Bは、スキル的に不可能。


てことは、C、うやむやにする。

これしかない!



――こうなりゃ勢いだ! きばれ! 光の勇者!



生れたての子馬状態の足に鞭を打って、何とか前に進み出るシオン。


その様子を見て、期待するように静かになる民衆達。


シオンは唇をなめると、叫ぶように声を張り上げた。



「私が、総司令官タダ・シオンだ! これから君達に餞別を送る!」



そして、曇った空に向かって手を高く掲げると、ヤケクソとばかりに魔力を込め始めた。


シオンの体から円を描くように光の渦が沸き起こり、派手な魔法陣が空に向かって展開される。


そして、魔法陣が雲まで届いた瞬間。

シオンは大声で叫んだ。



「<銀河ギャラクシー迷宮ラビリンス>!」



シオンの足元から天に向かって眩い光が一気にほとばしる。

広範囲攻撃型の光魔法が、雲に穴を開ける。


そして、光が消え。


ぽっかりと開いた空の穴から見えるのは、まばゆいばかりの太陽。


ワーッ、という、もの凄い歓声が広場を揺らした。



「す、すげーーー!!!!」


「なんだ! 今のは!?」


「あれが勇者シオン!」


「光の勇者シオン! 万歳!」


「「シオン! シオン! シオン!」」



沸き起こる、空気が割れんばかりのシオンコール。


灰のようになりながらも、何とか手を振るシオン。


うやむやにしたことを察し、肩を震わせて笑うゾフィア。

国王や宰相、いつも無表情なカルロスまでも、どこか笑い出しそうな顔をしている。


そして。

広場が少し静かになると。


カルロスが声を張り上げた。



「出陣式は以上だ! 第1陣は、これから出発する!」








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[良い点] 〉「銀河迷宮!」 お茶吹いた。 最高です(笑 [一言] シリアス回とのバランスが良い!
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