09.魔王出現の兆し
話の切れ目上、短いです。
異世界召喚されて11ヶ月目。
これまでのシオンの成果は下記。
・全ての魔法が、国一番と豪語できるほどの腕前になった
・上級騎士に剣で勝てるようになった
・『光の勇者タダ・シオン』の地位が不動のものになった
ちなみに、シオンの知名度を一気に引き上げたのは、子供達。
彼らは、シオンの中2病魔法に熱狂。
「タダ・シオンごっこ」と称し、ところかまわずシオンの必殺技を叫びまくった。
「<断罪の刃>」
「<聖域浄化>!」
「さ、さすがは勇者ぢゃ!」
「シオン! シオン! シオン!」
※シオンコールもセット
そして、この新しい遊びは、国中の子供達に伝染。
シオンの羞恥心が木っ端みじんに吹き飛ぶという弊害はあったものの、知名度は一気に向上。
勇者としての地位が不動のものになった。
カルロスは、これまでになく精力的に魔獣討伐を行い、ゾフィア、ジャックスとともに英雄の地位を固めつつある。
ウィリアムとアリスは、情報収集や分析を担当。
アリスは、学校に行く時間を除いて、隠密メイドとして王宮に潜入し、情報収集に努めている。
――そんなこんなで迎えた、よく晴れた冬の日。
3週間後に想定されている魔王出現に備え、騎士団で鍛錬をしていたジャックスとシオンの元に、突然アリスがやってきた。
「お、アリスじゃん。珍しいな」
手を止めて、アリスに手を振るジャックス。
そして、首を傾げた。
「どうした? アリス。顔色が悪いぞ?」
「本当だね。どうした?」
心配して尋ねるシオン。
彼女は2人に近づくと、声を潜めて言った。
「……辺境伯から連絡があった。2日前に、山の瘴気が赤く染まったんだって」
それは、シオンの記憶よりも3週間ほど早い、魔王出現の前兆。
長い戦いが、ついに始まった。
5カ月ほどワープしました。




