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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第3章 リベンジ

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04.勇者伝説が幕を開けてしまった


砦の密談から7日後。

空がうっすらと銀色に染まる、夏の早朝。


シオン、ジャックス、ウィリアム、アリスの4人を乗せた馬車は、たくさんの人に見送られて、領主館を後にした。


いつまでも手を振る家族に、馬車の窓から身を乗り出して手を振るジャックス。


ウィリアムが済まなさそうな顔で言った。



「せっかくの帰郷なのに、帰りを急かすような形になってしまいましたね」


「気にしないでくれ。家族とはまた会える。……それと、例の件なんだけど」



ジャックスが声を潜めた。



「クロスボウ部隊新設を、親父に頼んでおいた」


「ありがとうございます。どうでした?」


「しつこく理由を聞かれるかと思っていたんだが、案外アッサリだったな。兄貴に指示して、すぐにでも着手してくれるらしい」



シオンは胸を撫でおろした。

クロスボウ隊がいるといないのとでは、魔王討伐の負荷が違う。

大した説明もなしに準備してくれる辺境伯には感謝だ。



ウィリアムが、「これからの話をしましょう」と、地図を広げた。



「3人には、5日後の騎士団と魔法師団合同の遠征に付いて行ってもらいます。行先は、〇印部分。恐らくですが、夏休みいっぱいかかるかと」



ジャックスが、地図を見ながら呟いた。



「……教会派の領地が多い気がする」


「ご名答です。魔物が多いというのもありますが、どうせ武勇を立てるなら、ついでに恩も売ろうと思いまして。恩というのは使いようによって組織を脆くしますからね」


「それは名案だな。あいつらも別に一枚岩って訳じゃないからな」



シオンは苦笑いした。

どうやら彼等は教会派閥を崩しにかかるつもりらしい。


ウィリアムがシオンの方を向いて言った。



「シオンは、例の魔法でガンガンやって下さい。辺境伯領であれだけ好評だったんですから、他の土地でも目立つこと間違いなしです」



「またアレをやるのか」と、顔を引き攣らせるシオン。


ジャックスが感心したように言った。



「いやあ。あの魔法、本当に凄いよな。うちの兄貴なんて、見たことないくらい興奮してたぜ。 ”さすがは異世界人、勇者と呼ぶのにふさわしい!” とか言ってさ」


「ん。他の騎士も大騒ぎしてた。ちょう大成功」



うんうん、と、頷くアリス。


シオンは、羞恥のあまり顔を手で覆った。


黒歴史ノートを参考に開発した、中二病光魔法。

確かに、これ以上ないほど受けている。


しかし、シオンからしてみれば、公衆の面前で叫びながら変身ポーズを決めているようなもの。

恥ずかしくない訳がない。



「いつか慣れる日が来るんだろうか……。いや、慣れちゃいけない気もする……」



窓の外を眺めながら、暗い顔でブツブツと呟くシオン。




――と、その時。


アリスが、何かに気が付いたように、急に立ち上がった。


次の瞬間、ガクンッ、と馬車が止まる。


御者の男が声を張り上げた。



「前方に魔獣です! 魔獣が村を襲っています!」



馬車から飛び降りる4人。


目に飛び込んで来たのは、2mはあろう大きな熊型魔獣2匹。

逃げ遅れた村人達を背に、兵士達が必死に戦っている。


ジャックスとアリスが走り出した。



「シオン! 俺達が引き付ける! 例の魔法頼む!」



分かった! と、返事をして、急いで魔力を高め始めるシオン。



アリスが、走りながら腰に下げていたナイフを抜いて、魔獣に投げつけた。


ナイフは、見事に魔獣の後頭部に命中。


ジャックスが声を張り上げた。



「こっちを見ろ! 俺達が相手だ!」



魔獣の注意が兵士達からそれる。


この隙に、と、必死で逃げようとする兵士達。


しかし、魔獣の注意がそれたのはほんの一瞬。

すぐには逃げようとした兵士たちを見止め、唸り声を上げて襲い掛かかった。


うずくまる兵士たちと、悲鳴を上げて手で顔を覆う村人たち。



だめだ、やられる。



誰もがそう思った、――ーその時。


シオンの声が響き渡った。



「<南十字サザンクロス症候群シンドローム>!」



その瞬間。

眩い光を放つ光魔法矢が放たれ、兵士たちに襲い掛かろうとしている2匹に次々と突き刺さった。



ギャアアアアアアッ!



のけぞりながら断末魔の叫びを上げる魔獣達。

ドサリ、と、地面に倒れ、そのまま動かなくなった。



「す、すごい……」


「まさか、一撃で倒すなんて……」


「今のは、奇跡か何かか?」



座り込みながら、呆けたように呟く兵士と村人たち。


ジャックスは村人や兵士にケガがないことを目で確認すると、剣を掲げ、大声で叫んだ。



「皆のもの! 安心せよ! たった今、光の勇者、タダ・シオンが魔獣を討伐した!」


「な、なんと! 勇者様が!」


「聞いたか!? 勇者様がやったんだとよ!」



村人たちから、ワアっと歓声が上がった。



「すげー!!!!」


「あんなの見たことない! あれが勇者様!」


「光の勇者様、万歳!」


「光の勇者、シオン、万歳!」


「「シオン! シオン! シオン!」」



空に響き渡るシオンコール。


ひえー! やめてくれー! と心の中で叫びつつも、何とか笑顔で手を振るシオン。




――そして、この話はあっという間に国中に広がり。


シオンの偉大なる勇者伝説が幕を開けてしまったのであった。







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― 新着の感想 ―
[一言] トリファイレスガーン!!(((友達が中2の時に作ったファンタジーの魔法名)
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