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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第2章 ローズタニア王国の日々

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エピローグ:砦の告白


辺境伯領へ到着した翌日早朝。

シオン達4人と護衛の騎士2人は、馬に乗って北の砦に向かっていた。


ちなみに、北の砦に向かっている理由は、「どこか行きたいところはないか」と、聞かれ、シオンが「北の砦!」と、答えたからだ。


ジャックスは、「なんであんな辺鄙なところに」と、首を傾げたが、シオンの真剣な様子を見て、快く了承。

「あんな砦に行ってどうするんだ」と、訝し気な顔をする辺境伯(父親)を説得し、すぐに砦に行く準備を整えてくれた。


領主館から北の砦まで、およそ半日。

早朝に出て、昼過ぎに到着。

周囲を散策して、砦に1泊する予定である。





日の出前に領主館を出て、ひたすら森やら草原を進んで数時間。

太陽が頭上を少し過ぎた頃。


ウィリアムが、汗を拭いながら尋ねた。



「それにしても、地図で見る以上に奥地にありますね。どうしてこんな奥地に砦を?」


「ここ1,2年はさっぱりだけど、その前は魔獣がウジャウジャいたんだ」


「そうなんですか。意外ですね。あまりいないように思えますが」


「親父も不思議がってるんだ。あんなにウジャウジャいたのに、なんで急にいなくなったのかって」




何気ない会話をする2人。


シオンは思った。

恐らく、8カ月後の魔王出現が関係しているのだろう、と。




ーーそして、更に進むこと数十分。



先頭にいた護衛の騎士が叫んだ。



「そろそろ崖に近づきますので、注意してください!」



慎重に馬を進める一行。


しばらく行くと。

突然、森が切れ、目の前に切り立った崖が現れた。


“ 地面の割れ目 “ と言われる崖で、下までおよそ100m、対岸まで約5m。

正に地面が割れたような、険しい崖だ。

崖には頑丈そうな吊り橋がかかっている。


シオンの顔から一気に血の気が引いた。

思い出すのは、橋が壊されているのを発見した絶望の瞬間。



馬から降りたジャックスが、下を覗き込んで、顔を顰めた。



「うわ。相変わらずエグい高さだ」



そして、シオンの表情を見て、心配そうな顔をした。



「シオン、大丈夫か。顔が真っ青だぞ」



シオンは、冷や汗をぬぐうと、努めて平静に答えた。



「大丈夫だ」



馬を下りて、橋を渡る一行。

対岸に着いて、再び馬に乗り、しばらく行くと、前方に大きな石の砦が見えてきた。


シオンの心臓が早鐘のように打ち始めた。

前回(召喚1回目)の記憶が頭に浮かび、呼吸が浅くなる。


シオンの只ならぬ気配に気が付いたアリスが、心配そうな顔で振り向いた。



「シオン、大丈夫?」


「……ああ。大丈夫だ」



必死で体の震えを押さえながら答えるシオン。


一行は、馬を降りて砦の中に入った。

中にいた兵士に誘導され、馬と共に中庭に誘導される。


そして、中庭を出て。


シオンは、思わず立ち尽くした。


思い出すのは、前回(召喚1回目)、最後に見た仲間達の変わり果てた姿。


真っ青な顔でフラつきながら立っているシオンを、ウィリアムが軽く揺さぶった。



「シオン! シオン! 聞こえますか!?」


「……あ、ああ」


「どうしました。大丈夫ですか?」


「……ああ」



駆け寄って来たジャックスが、今にも倒れそうなシオンを支えながら言った。



「部屋が用意してある。とりあえずそこで休め」


「悪い……。そうさせてもらう……」




その後、シオンはジャックスに背負われるように、砦の部屋に運び込まれた。





* * *





――砦到着から、数時間後。


シオンが目を開けると、そこは砦内の小さな部屋だった。


外はすでに薄暗い。

どうやらかなり長い間寝ていたらしい。


シオンは上半身を起こすと、片手を額に当てて、深い溜息をついた。



(やばいな。思った以上にしんどい)



恐怖やショックが、腹の底からせり上がってくるような、全身が冷えるような感覚。

座っているだけでも、呼吸が乱れてくる。


体を丸めて、懸命に呼吸を整えるシオン。


そして、ある程度マシになったところで、フウッ、と息を吐き。

胸ポケットに入れていたパスケースを取り出した。

中に入っているのは、柚子胡椒の写真。


彼は、写真を見ながら思った。


正直、めちゃめちゃ辛い。

でも、これを乗り越えないと、俺は帰れない。



(よし、気合入れるぞ)



パスケースを胸ポケットに戻し、上からポンポンと軽く叩くシオン。

ひよりそうな心に鞭を打って立ち上がると、ドアを開けて薄暗い廊下に出る。

石の階段を下って1階に降りる。


そして、震える膝を叱り飛ばしながら中庭に行くと、そこには小さな焚き火が複数焚かれており、それを楽しそうに囲む兵士たちの姿があった。

どうやら夕食の時間らしい。


なんとか呼吸を整えて、中庭に入るシオン。


すると、端の方で小さな焚き火を囲んでいたジャックス達3人が、シオンを見つけて手を振った。



「おーい! シオン! こっちだ!」



手を振り返し、少しフラフラしながら行くと、3人は心配そうな顔でシオンを見た。



「まだ顔色悪いぞ。寝てた方がいいんじゃないのか」


「大丈夫ですか? 何か飲みますか?」


「シオンが元気がないと心配」



いつも通りの3人を見て、シオンは安堵した。



(そうだ。まだあの悲劇は起こっていないじゃないか)



これからやるべきことは、過去に怯えることじゃなくて、あの悲劇を起こさないことだ。



「ごめん、もう大丈夫だから」と言って、椅子替わりに置いてある丸太の上に座るシオン。


3人は、気を紛らわした方が良いと思ったのか、シオンが寝てる間に何をしたのかを話してくれた。



「俺たちは、騎士達と一緒に、街と反対側の山の上に行ってみたんだ。親父が急に魔物が減った理由が気になるって言ってたから、調べようと思ったんだ」


「……何か見つかったか?」


「いえ。特に原因のようなものは見当たりませんでした。そんなに強くない魔物が数匹いた程度です」


「ただ、アリスの話だと、山の向こう側にはかなり大物がいるみたいだから、もしかすると、山の向こう側は事情が違うのかもしれない」



そうか、と、火を見ながら頷くシオン。


いつの間にか薄闇は夜に変わり、周囲は闇に包まれている。


中庭にいた騎士達も、1人、2人と消えていき。

残るは小さな焚火を囲む4人のみ。


そして、長い沈黙の後。


ジャックスが静かに口を開いた。



「……嫌なら答えなくてもいいんだけど。シオン、お前、ここに来たことがあるんだろう?」



しばらく沈黙した後、コクリと頷くシオン。



「やっぱりか。まあ、じゃなきゃ、こんな砦に来たがらないよな」



納得するような顔をする3人。



シオンは、彼等の顔をじっと見つめた。


この世界で最も信頼している3人。

話すなら、きっと今だ。



シオンは、フウ、と息を吐くと。

3人を真っすぐ見つめながら、ゆっくりと口を開いた。




「これからとんでもない話をするけど、どうか信じてほしい。


―――実は、俺。約半年後の未来から来たんだ」







ここでシオンが思い出しているのは、一番最初のパートのプロローグ部分です。


そして、ここまでが第2章です。

お読み頂きありがとうございました。(*'▽')


第3章は、リベンジパートになります。


繁忙期に入ったので、1日1話くらいペースで更新していきたいと思います。


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― 新着の感想 ―
[一言] ついに切り出したか
[一言] ついにですね! ざまあパート、楽しみにしてます!
2021/10/07 00:17 退会済み
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