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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第2章 ローズタニア王国の日々

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24.それは出発前に知りたくなかった


夏休み初日。

まだ外が暗い夏の早朝。


辺境伯領への出発日。


シオンは軽食を食べ終わった後、ノートに辺境伯領でやることを書き出していた。



――――

<辺境伯領でやること>


・北の砦の下見をする

・みんなに事情を話して協力をあおぐ

・魔王討伐の作戦を立てる

・ミノタウルス対策の作戦を立てる


――――



シオンは、息を小さく吐いた。


前回(召喚1回目)殺された場所に行くことを考えると、体が震えてくる。

最後の記憶を思い出そうとするだけで眩暈がするし、みんなに信じてもらえるかも不安だ。


でも、ここまできたらやるしかない。


シオンは、ノートを収納にしまうと、部屋を出た。

大きな荷物を抱えて1階に降りる。


そして、管理人に鍵を預けて、外に出ると。

朝もやの中に大きな馬車が2台停まっていた。


馬車の横に立っているのは、ラフな格好をした、ジャックス、ウィリアム、アリスの3人だ。


ジャックスが笑顔で手を振った。



「おはよう! シオン。時間通りだな! 荷物はそれだけか?」


「おはよう。何か足りなかったら現地で買おうと思って」


「お! 領地での買い物は大歓迎だ!」



荷物を受け取りながら、ニカッと笑うジャックス。


そして、4人が「さあ出発しよう」と、馬車に乗り込もうとした、ーーその時。



アリスが、何かに気が付いたようにピクリと動くと、右横を指差しながら、小さな声で言った。



「なんか来る」


「え? なんかって?」


「人と車」



意味が分からず、アリスの指差す方向をながめる3人。


すると、朝もやの奥から、かすかに、ガラガラガラ、という台車を引きずるような音が聞こえてきた。



「なんだ?」


「……さあ?」



そして、首を傾げる4人が見守る中。

霧の中から、何とも不思議な一行が現れた。


先頭を歩くのは、おっとりと手を振る、目の下がクマで真っ黒なゾフィア。

その後ろに、ヒーヒー言いながら大きな台車を押す魔法士達。

そして、台車を引いているのは、仏頂面のカルロス騎士団長だ。


ジャックスが呆然と呟いた。



「え? ゾフィア師団長? しかも、なんでカルロス団長が台車を?」



ゾフィアは、険悪な表情のカルロスに、馬車の横に台車を止めるように言うと、笑顔でシオンに走り寄ってきた。



「良かったわ~。間に合ったわ!」



ホッとしたように微笑むゾフィアに、シオンはジト目で言った。



「……まさか、魔道具の魔力を補充しろって言うんじゃないでしょうね」


「正解よ~! 頑張って使い切ったのよ~」



得意げに言うゾフィア。


ウィリアムが、カルロスにそっと尋ねた。



「……つかぬことを伺いますが、カルロス団長は、なぜここに?」


「……遠征の帰りに捕まった」



憮然とした表情のカルロスに、うわあ、という顔をするジャックス。


そんなカルロスを他所に、ゾフィアがシオンにニッコリと微笑みかけた。



「お願い~」


「……分かりましたよ」



シオンは、苦笑しながら台車に乗っている魔道具を触ると、魔力を込め始めた。


悪いわね~、と、言いながら、シオンの横に立つゾフィア。

そして、彼女は小声で、「それとね~」と言うと、2つ折りにしてある小さな紙をさりげなく差し出した。



「頼まれていたものよ~。早目に教えた方がいいと思って」



シオンはドキリとした。

頼まれたものって、シャーロット王女がくれた “身体能力向上の魔道具” の解析結果、だよな。



「……解析が終わったんですか?」



小声で尋ねるシオン。



「ちょっと違うけど、そんな感じね~」



小声で答えるゾフィア。

彼女によると、昨晩、別の魔道具に収納されていた、ラーラ・ムーク製作魔道具の目録が出て来たらしい。



「その中に、解析を頼まれていた魔道具の機能と使い方が書いてあったのよ~」


「……この紙、見てもいいですか?」


「どうぞ~」



シオンは深呼吸した。


中に書いてあるのは、シャーロット王女がシオンにやたら着せたがった魔道具の機能解析結果。

嫌な予感しかしないけど、どんな結果が書いてあっても、受け入れよう。


みんなから見えないように気を付けながら、そっと紙を開くシオン。


そして、中に書いてある内容を見て、思わず目を見開いて絶句。

2度3度と読み直し、大きく深い溜息をついた。



(うわあ……。最悪だ……。思った以上に酷い……)




――――


魔道具名:

『身体能力向上の魔道具』


効果:

身に付けると、魔力を消費して身体能力を2.5倍にする


副作用:

1日6時間以上の着用で、魔力回復力の低下、元の身体能力の低下が認められた

複数の人体実験の結果は下記。


・魔力回復力 :6割 低下

・元の身体能力:3~5割 低下


――――



つまるところ、これは「身体能力向上」に見せかけた、「身体能力低下の魔道具」だった訳だ。


道理で、前回(召喚1回目)、ミノタウルスから逃げる時、魔道具ナシの自分が役立たず過ぎると思った。

走れないし、魔力も全く回復しないし、思えばおかしなことばかりだった。



心の底からげんなりするシオン。


想像していたのの倍は酷い。


結果が早く分かったのは良かった。

でも、正直なことを言えば、旅行前にこれは見たくなかった。


無言になるシオンに、ゾフィアが囁いた。



「こう言っちゃなんだけど、その魔道具、すごく怪しいと思うわ。どういう経緯で手に入れたか分からないけど、気を付けて」



シオンは、深い深い溜息をつきながら言った。



「……分かりました。ありがとうございます」





―――その後。


笑顔のゾフィアと不機嫌そうなカルロスに見送られ。

表情が死んだシオンと他3人を乗せた馬車は、無事に王都を出発。


2日後、辺境伯領に到着したのであった。






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― 新着の感想 ―
[一言] あのロイヤルビッチぃぃぃ! 身体強化されてるなら着てもいいじゃんとか思っちゃったよ…orz
[一言] うわあ…。 思ったより地味にエグかったw
2021/10/06 16:32 退会済み
管理
[一言] 姫様も真っ黒かぁ。。。 現実世界のゲーム仲間が優秀ですねぇ…。
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