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死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第2章 ローズタニア王国の日々

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(閑話)ピクニックと写真


本日3話目です。


ある晴れた休日の午前中。


シオン、ジャックス、アリスの3人を乗せた馬車が、王都に程近い丘陵地帯に止まった。


馬車を降りたシオンが、周囲を見回しながら言った。



「まさか王都の近くに、こんなところがあるなんてな」


「実験農場ってやつだな。もう少し行くと畑があって、家畜もいっぱいいるぞ」



ジャックスの話では、ここは200年前に日本から召喚された清水さんの提案で作られた農場らしい。

管理しているのはラディッツ公爵家で、ウィリアムに頼んで特別に入れてもらった形だ。


馬車から大きな寸胴鍋二つと、布袋を幾つか取り出すシオン。

ジャックスも、かなり大きな箱を下ろす。


そして、3人は、馬車から少し離れた小高い丘の上にある大きな木の下を陣取った。



「よし、ここを拠点にしよう。

では、これから、”アリスの歓迎会” 兼 “異世界料理試食会” を、始めます!」


「よ! 待ってました!」


「ん。超楽しみ」



シオンの宣言に、ぱちぱちぱち、と、楽しそうに拍手するジャックスとアリス。


シオンは袋から、塩漬けの大きな肉を取り出した。



「まずはベーコンを作ります!」


「べーこん?」


「まあ、見てなって」



手際よく竈を作り始めるシオン。


ジャックスが感心したように言った。



「お前、すごいな。職人みたいだぞ」


「ん。手慣れてる」



まあな、と、照れるシオン。

こうやって褒められただけでも、日本で特訓した甲斐があるというものだ。


竈が出来上がり、袋からジャックスの実家から送ってもらった酒樽に使われていた木のくずを取り出すシオン。

それを寸胴鍋の底に置くと、薪に着火。

煙が出始めた木くずの上部に、塩漬け豚を吊るして蓋をした。

(※高温で鍋を温めるため、木くずから煙が出ます)


アリスが珍しそうに覗き込んだ。



「これ、食べれるの?」


「もちろんだ。時間はかかるけど、うまいぞ」


「うおー! これは楽しみだ!」


「では、待っている間に、美味しいスープと、チキンステーキを作ります!」



袋の中から野菜を取り出すシオン。

そして、ジャックスに尋ねた。



「そういえば、肉を調達してきてくれるって言ってたけど、どこにあるんだ?」


「ああ。ちょっと待っててくれ」



馬車まで走るジャックス。

少しして、彼は大きな鳥かごを取ってきた。

中には、鶏のような生きた鳥。


シオンは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。



「ま、まさか、今から解体?」


「もちろんだ。生肉はすぐに痛むからな」



マジか、と、呟くシオン。

ジャックスはアリスの方を向いて言った。



「アリス。手伝ってくれ」


「ん。了解。あそこに小川があるから、そこがいいと思う」



鳥かごをぶら下げて、少し歩いたところにある川に向かう2人。


シオンは遠い目をした。

なんか、ものすごいことになってきた気がする。


そして、なるべく聞こえないようにと、歌いながら野菜を切って油で野菜を炒め、一旦お皿に出す。



その後、歌いながら待つこと10分。


2人が、きれいに切り分けた肉を持ってきた。



「持ってきたぞ。肉だ」


「……ありがとう」



さっきまで生きていた鳥を想像しないように、肉を受け取るシオン。

更に少し小さく切ると、油と一緒に炒め、出しておいた野菜と水を入れて、煮始めた。

調味料は、乾燥ハーブと塩コショウ。


アリスが、鼻をヒクヒクさせた。



「ものすごいいい匂いがする!」


「本当だな。嗅いだことないくらい、いい匂いだ」



煮えるのを待つ間、残りの肉に調味料をまぶすシオン。

スープの出来上がりに合わせ、鉄板の上で焼いていく。



――そして、到着から2時間後。


3人は、出来立てのスープと簡易ベーコン、チキンステーキを食べ始めた。


スープを一口飲んで、アリスが目を見張った。



「美味しい! こんな美味しいもの食べたことない」


「この鳥もうまい! 違う肉みたいだ!」



シオンは満足そうに笑った。

どうやら喜んでもらえたらしい。

ベーコンも少し味が薄いけどまあまあだな。もう少し燻ればもっと美味しくなる。


アリスが言った。



「毎日こんな美味しいの食べてるなんて、シオンずるい」



シオンは残念そうな顔で言った。



「それがさ、寮の部屋で料理をしようとしたら、匂いがすごくて、とても作れる感じじゃなくてさ。運んで来てもらった料理に調味料をちょっとふりかけるのが精々だよ」



そして思い出した。

記念すべき1回目のキャンプを形に残さねば、と。



「そうだ。写真撮らないと」


「シャシン?」



首を傾げるアリス。

シオンは空間収納を開くとカメラを取り出した。



「なんだそれ。魔道具か?」



物珍しそうに見るジャックス。


シオンは、2人に向かってカメラを構えるとシャッターを切った。

そして、液晶画面にその画像を映してみせると、2人は目を丸くした。



「すごいな! 絵を保存できるのか!」


「ん。すごい。ジャックス、間抜け顔」


「お前人のこと言えるのかよ!」



ジャックスのツッコミを無視して、物珍しそうにデジカメを触るアリス。

どうやら相当気に入ったらしい。



「やってみたい。これどうやってつかうの?」


「このでっぱりを押すんだ」


「やった。どうやって見る?」


「ここを回すんだ」



楽しそうにデジカメを操作するアリス。


そして、撮った写真達をながめて、――ふと首を傾げた。



「これ、だれ?」



見ると、そこには最初に何枚か撮った柚子胡椒の写真が表示された。


ジャックスが物珍しそうに覗き込んだ。



「これはシオンの世界の人間か?」


「うん」


「へえ。向こうの世界にも可愛い子がいるんだな」


「……まあな」



何となく照れながらぶっきらぼうに答えるシオン。


すると、写真をずっと見ていたアリスが尋ねた。



「……この子って、シオンのなに?」


「なに、って……、普通に友達だよ」



若干挙動不審になりながら説明するシオン。


その様子をじっと見ていたアリスが、小さな声で言った。



「ふーん。そういうこと。……なるほどね。だから そっけなくしてたんだ」



シオンは首を傾げた。

後ろの方がよく聞こえなかった。



「え? 何か言ったか?」


「……なにも。ただ、この前シオンに話かけてた女の子のことを思い出しただけ」


「???」




その後、3人は引き続き異世界料理を堪能。

また来ようね、という話をして、第1回目ピクニックはお開きとなった。






次、本編に戻ります。

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― 新着の感想 ―
街とか喜んでたのに今まで撮ってなかったのが気になる。 城の誰も居ない時とか外観とか、騎士団とか。
[気になる点] >「とってみたい。これどうやって取るの?」 >「このシャッターを押すんだ」 >「とった。どうやって見る?」 「やってみたい。これどうやってつかうの?」 「このでっぱりを押すんだ」 「…
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