(閑話)カルロスとゾフィア
本日2話目です。
シオンとの1回目の訓練を終わった後。
ゾフィアは、万華鏡片手に鼻歌交じりに歩いていた。
いつも比較的機嫌のよいゾフィアだが、今日は特に機嫌が良い。
なぜならば、長年謎だった魔道具の謎を解く切っ掛けが見つかったからだ。
(やっぱり光魔法が鍵だったわ~。ようやく、大魔法士ラーラ・ムークの魔道具の解析ができるわね~)
なかばスキップするように廊下を歩いていると、廊下の端に腕を組んで壁に寄りかかっている騎士服を着た男がいた。
ゾフィアは軽やかに男の横に着地すると、ニッコリ笑って顔を覗き込んだ。
「ごきげんよう~。カルロス。また会ったわね~」
「ああ。そうだな」
興味が無さそうに相槌を打つカルロス。
ゾフィアはにこやかに言った。
「不愛想な男はモテないわよ~。もうちょっと愛想良くしないと」
「………」
「で、こんなところでどうしたのかしら。やっぱり、あの異世界人の男の子が気になってる感じかしらね~?」
「……まあ、そんなところだ」
どうだったのかと尋ねるカルロスに、ゾフィアは溜息交じりに言った。
「でたらめよ。全属性適性ありの、膨大な魔力。一言で言うと、化け物ね。間違いなく、あと数カ月でこの国最強の魔法士になるわ。剣の方はどうなの?」
「非常に目はいいし、動きの基礎もできている。体力もあるし、成長も早い。ただ、化け物と言えるほどではない」
「そうなのね。でも、剣が使えるのは良いことだわ。魔法士が死ぬのは、魔力が尽きた時よ。その時に戦える術があるかどうかは生死を分けるもの」
まあそうだな、と、難しい顔をするカルロス。
ゾフィアが苦笑した。
「複雑な気分よね~。あなた、最後まで異世界召喚に反対していたものね」
「それはお前も一緒だろう」
「それはそうよ~。私達の問題を他の世界の人間に押し付けるなんて変だもの。―――まあ、結局止められなかったんだけどね~」
「それを言うなら俺もだ」
「仕方ないわよ~。まさか私達の遠征中に、陛下に黙ってやらかすとは誰も思わないじゃない。結局はすごい衝撃ですぐにバレたみたいだけど」
口の端を軽く上げて苦笑するカルロス。
ゾフィアが遠い目をしながら言った。
「あの時は驚いたわね~。王宮に戻ったら異世界人がいるっていうんだもの。みんなビックリよ」
「そうだったな。……同時に腹も立ったが」
一斉に、ハアッと溜息をつく2人。
ゾフィアがポツリと言った。
「彼は、これからどうなるのかしらね……」
「――しばらくは何もないだろう。一時期よりも魔獣の数は減っているから、討伐依頼もないだろう。ただ、魔獣が増えて、俺達が対処しきれなくなってきたら分からんな」
「そうね……。そうならないように私達だけで頑張りたいけど、こればっかりは何とも言えないわよね……」
再び、ハアッと溜息をつく2人。
その後、2人は話し合い、
万が一に備えて、シオンが自分の身を守れる術を教え込もう、と、いう話で一致した。




