表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻り白豚勇者、日本で準備万端ととのえて、いざ異世界へ(※ただし彼は洗脳されている)  作者: 優木凛々
第2章 ローズタニア王国の日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/79

06.ブラックな研究所と恩賞



異世界召喚されて、11日目。


ウィリアムが突然現れた翌日朝。

シオンは眠い目をこすりながら、まずい朝食をもそもそと食べていた。


(昨日はついつい話し込んじゃったな~)




――昨夜。

シオンはウィリアムに、日本で学んだ流行病に関係ありそうな知識を話した。


地球でも、黒死病やコレラなどの流行病で、たくさんの人が亡くなったこと。

それらをどうやって解決したのか。

下水の整備、マスクや手洗いの推奨、予防接種など。


メモを取りながら、時々質問を挟みながら、熱心に耳を傾けるウィリアム。

熱心な聴者に支えられ、日本で勉強した内容について熱く語るシオン。


そして、気がつけば、夜明け前。

さすがに眠いなと欠伸をするシオンに、ウィリアムは深々と頭を下げた。



「本当に、本当にありがとうございます。これほど有意義な時間を過ごしたのは初めてです」


「それは良かったです。何か疑問点があったら、また聞いてください。分かれば全然答えるんで」


「……これほどの知識を出し惜しみなく話し、更に協力を申し出て下さるなんて、あなたはなんて……」



感動したように呟くウィリアム。

そして、「この恩は必ずお返しします」と言うと、静かに立ち去っていった。





――この時のことを思い出しながら、シオンはニンマリした。


あんなに感謝してもらえるとは夢にも思わなかった。

何だかすごく良いことをした気分だ。

日本でがんばって勉強した甲斐があったというものだ。


寝不足ながらも充実した気分のシオン。


そして、朝食を食べ終わり。

もうひと眠りしようか、などと考えていたーーー、その時。



コンコンコン



ドアをノックする音が聞こえてきた。

続いて、メイドの「ウィリアム・ラディシュ様がいらっしゃいました」という声。



「……え?」



シオンは驚いて目を丸くした。


確か、5時間くらい前に別れたばかりだよな?

何かあったのだろうか。


急いでドアを開けると、そこには笑顔のウィリアムが立っていた。

目の下には見事なクマができている。


彼は優雅にお辞儀をすると、にこやかに言った。



「シオン様。お迎えにあがりました」


「……へ?」



驚きすぎて固まるシオン。


あれ?

俺、何か約束してたっけ?

記憶にないんだけど。


戸惑うシオンに対し、「さあ、行きましょう」と、微笑むウィリアム。


その自信ありげな微笑みに、シオンは思った。


眠かったからよく覚えてないけど、多分、何か約束したんだな、俺。

そうだ、きっとそうに違いない。

もうひと眠りしたいとこだけど、約束したなら仕方ない。行くか。



「分かりました。ちょっと待っててください」



シオンは部屋に戻ると、ベッドの中からリュックサックを取り出して背負った。

その上から半袖のローブを羽織る。

そして、驚くメイド2人に「ちょっと行ってきます」と告げると、部屋の外で待っていたウィリアムと共に廊下を歩き出した。



――そして、歩くこと5分。


ウィリアムが低い声で言った。



「察して頂いてありがとうございます。横やりが入りそうな気配がありましたので、申し訳ありませんが、勝手に既成事実を作らせて頂きました」



シオンは首を傾げた。

横やり? 既成事実? なんだそれ?



彼は、全然察してなかった。



もしも、シオンがここで、「それってどういう意味ですか?」と聞けば、未来が少し変わったかもしれない。

しかし、残念なことに、彼は、よく分からないことは とりあえず流す性格(たち)だった。


彼はすぐに「まあいっか」と流すと、ウィリアムに尋ねた。



「これからどこに行くんですか?」


「研究所です。少し歩きます」



2人は、王宮を出ると、朝の爽やかな空気の中を歩き始めた。


庭園と庭園の間を、歩くこと10分。

ウィリアムが、緑に囲まれた2階建ての茶色い建物を指差した。



「あれが、私が所属する研究所です」


「ほ~。静かで良い所ですね」


「周囲に余計なものがないので、研究がはかどって助かっています」



合理的な雰囲気がするエントランスを通り抜け、2階に上るウィリアム。

少し薄くなった赤い絨毯がひいてある長い廊下を足早に歩くと、一番端の部屋にシオンを招き入れた。



「私の研究室です。少々散らかっていますが、どうぞお入りください。」



部屋は、書斎風の広い部屋で、壁一面には立派な本棚。

真ん中には資料がたくさん乗った大きな作業机があり、いかにも忙しい研究者の部屋といった風情だ。


ウィリアムはシオンに椅子を勧めると、自らも正面に座り、深々と頭を下げた。



「まずは、改めてお礼を言わせて下さい。昨晩は本当にありがとうございました。

シオン様の話を研究員達にしたところ、症状は違うものの、感染経路等については ”コレラ” に近いのではないかという話になり、今急ピッチで検証しているところです」


「え! 俺が話したのって5時間前くらいですよね?」


「はい。あの後すぐに研究所に戻って、残っていた研究員達に話をした次第です」



シオンの目が点になった。

あの時間から研究所に戻るウィリアムも凄いが、あの時間に残っている研究員も凄い。

なんてブラックなんだ。


ウィリアムの話によると、2週間後に、月1回開かれる大貴族会議があり、そこに向けた資料を作っているらしい。



「昨日までは打開策が見つからずに徹夜だったのですが、お陰様で、今日からは解決に向けた徹夜ができそうです」



超ブラックなこと言いながら微笑むウィリアム。

そして、真剣な顔をすると、こう切り出した。



「今回の発表は、未だかつてないほど画期的です。確実に国王陛下より相当な恩賞が与えられるでしょう。

大きな恩賞には調整が必要ですので、今のうちにシオン様の希望をお聞かせ頂ければと思っております」



シオンは目をぱちくりさせた。



「……ええっと、それは、俺も何かもらえるということですか?」


「もちろんです。望めば、領地や爵位も手に入るかと」



ウィリアムの言葉に、シオンは思わず後ずさりした。



「いえっ! 俺は爵位とか領地とか、そういう面倒そうなのはいらないですっ! 俺、生粋の庶民なんで!」


「……それでは、王都の屋敷などどうでしょう? 昨日、王宮は住みにくいとおっしゃっていましたよね?」



シオンは考え込んだ。


王宮の部屋は嫌いじゃない。

豪華だし、至れり尽くせりで面倒を見てもらえる。

でも、いつも監視されている気がして、自由じゃないのだ。

そういう意味では、王都の屋敷も悪くないかもしれないが、ここで望むものはアレしかないだろう。



「何でもいいんですよね?」


「はい。大抵のものは大丈夫だと思います」



自信満々に頷くウイリアム。


じゃあ、大丈夫そうだな、と、シオンは口を開いた。



「では、俺は、王立学園への入学を希望したいと思います」





予想していた形とは違うものの、何とか学園入学の目処がつき、ホッとするシオン。


しかし、この後。

学園入学を巡り、一波乱起きることになる。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] チャット仲間たちの心配的中だなぁ [一言] 自分がすっげぇ危うい立場なのに気付いてなくてヒヤヒヤするw
[一言] みんな怪しく見えるw
2021/09/28 16:40 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ