14.座談会4:『半分は解けた、でも、もう半分が問題だ』
2月15日、土曜日の夜。
柚子胡椒が紫苑の家を訪問した、その夜。
疲れて寝てしまった紫苑を除いた4人が、オンライン上で会話していた。
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ひまぽ:
『柚子胡椒って、今日シオン君の家に行ったんだよねー? どーだった?』
すみれ:
『私も気になってたのよね。シオンちゃんってどんな感じだったの?』
柚子胡椒:
『真面目でいい人そうだった。悪いこととか出来なさそう』
腹黒小学生:
『あ~。そんな感じだな。裏表がない感じ』
柚子胡椒:
『あと、普通だけど、意外とカッコよかった』
ひまぽ:
『普通だけど意外とカッコいい、って、なんか分かるw』
柚子胡椒:
『家の庭がすごく広くて、案山子みたいなのがいっぱい置いてあった』
すみれ:
『かかし?』
柚子胡椒:
『ローズタニア剣術の練習してるみたい。見せてもらったけど、技とかゲームのキャラみたいで、すごいカッコよかった (*´ω`*) 』
腹黒小学生:
『へえ。異世界剣術か。それは見てみたいな』
ひまぽ:
『でも、その庭は確実にホラーw』
すみれ:
『近所から苦情とか来ないのかしら』
柚子胡椒:
『塀が高いし、庭の向こうが駐車場だから、多分バレてないと思う』
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リアル紫苑の話で盛り上がる4人。
そして、腹黒小学生が、3人が最も気になっていることを切り出した。
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腹黒小学生:
『柚子胡椒から見て、シオンは、異世界のきな臭さに少しは気が付いていそうだった?』
柚子胡椒:
『 (´・ω・)う~ん……。半々、かな』
ひまぽ:
『はんはんー?』
柚子胡椒:
『ローズタニア王国という ” 国 ” については、色々気が付いてるっぽかった。「思ったよりも良い国じゃないかも」みたいなこと言ってたし』
ひまぽ:
『おー! ついに気が付きましたか!』
柚子胡椒:
『うん。世界の歴史を勉強していたら、そんなことを思ったみたい』
腹黒小学生:
『やったな! 勉強の成果が出た!』
すみれ:
『良かったわ! これで1つクリアね!』
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良かった良かった、と、喜び合う4人。
シオンは、召喚国であるローズタニア王国を、「人に優しい良い国」だと頑なに思い込んでいた。
しかし、どうやらそれが間違いだったと気が付いたらしい。
あんな国を良い国だなんて思っていたら、ロクなことがない。
本当に良かった。
そして、ひまぽが尋ねた。
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ひまぽ:
『で、半々って言ってたけど、あとの半分は何なの?』
腹黒小学生:
『もしかして、人、か?』
柚子胡椒:
『うん。人に関しては、全然疑ってなかった。「みんな良い人だった」って、言い切ってた』
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3人は黙り込んだ。
みんな良い人とか、絶対にあり得ない。
というか、どこをどう見たら、みんな良い人になるんだ。
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すみれ:
『……確かに良い人はいたでしょうから、間違いではないと思うのよ』
『ただ、話を聞いていると、圧倒的に悪い人の方が多いわよね』
腹黒小学生:
『俺も同感です。シオンを陥れようとしていた奴の方が絶対多かったと思う』
ひまぽ:
『だねー。特に教会関係者とか、真っ黒だよね』
『少しくらい疑っても良さそうな気がするんだけどなー』
柚子胡椒:
『多分、命を助けてくれた仲間の中に教会関係者がいたから疑ってないんだと思う』
『あと、詳しく話を聞いたら、”仲間に命を助けられた” というより、”仲間が自分達の命を犠牲にして助けてくれた”、って感じみたいで』
すみれ:
『なるほどね……。それは確かに疑いにくいわね』
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ここ1カ月ほど。
4人は事あるごとに、それとなく異世界人の怪しさについて言及してきた。
言動の矛盾を指摘したり、昔のヨーロッパに例えたり、宗教の恐ろしさについて話したり。
しかし、紫苑は、「ああ、あの人達心配性なだけなんですよ」とか、「なんと、昔そういうことが」と、言うだけで、自分が騙されているとは全く思っていないようだった。
4人は疑問に思った。
こんなに怪しいのに、なぜ気が付かないのだろうか、と。
だから、柚子胡椒の、「仲間が自分達を犠牲にしてシオンの命を助けた」と、いう話を聞いて、妙に納得した。
なるほど、それであれば、盲目的に信じても不思議はないな、と。
多分、シオンの中のイメージは、
“ 仲間=ローズタニア王国の人全員 “
になっているんだな、と。
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ひまぽ:
『……これは、まだまだ時間がかかりそうですなー』
すみれ:
『そうね……』
『でも、幸いまだ5カ月あるし、地道に言っていけば、気が付いてくるんじゃないかしら』
腹黒小学生:
『国の矛盾にも気が付いた訳ですから、人の矛盾にもいずれ気付くでしょう。地道にいきますか』
柚子胡椒:
『賛成 ( `―´)ノ』
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その後、4人は相談。
引き続き、矛盾を指摘していくことに加え。
本の知識よりも、実際にあった話の方が、ピンとくるかもしれない、ということで、
ひまぽは、詐欺にあった親戚の話。
すみれは、架空の投資話に引っかかった友人の話。
柚子胡椒は、ネットワークビジネスにはまった従妹の話。
腹黒小学生は、新興宗教に洗脳されたミュージシャンの話。
など、実際にあった洗脳話をして、気付きを促そう、ということになった。




