10.持ち物の検討
元の世界に帰ってきて、約6か月目
異世界召喚まで、あと6カ月。
寒い日が続く、年明けの1月5日。
オンラインゲーム上には、いつもの5人が集まっていた。
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腹黒小学生:
『年も明けたし、そろそろ持ち物とか決めといた方がいいんじゃないかな』
ひまぽ:
『そだねー。揃えなきゃいけないものがあるかもだし』
すみれ:
『そういえば、シオンちゃん、前回色々と持ち込めたって言ってたわね』
柚子胡椒:
『うんうん。確か、着ていた服と、ポケットに入ってたものは持ち込めたんだよね』
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前回。
紫苑は、意図せず地球の物を幾つか異世界に持ち込んだ。
持って行けたものと、持って行けなかったものは、下記である。
<持って行けたもの>
・着用していた衣服
・ポケットの中身
⇒スマホ、財布、キャラクターガイドブック、イベントパンフレット、ガム、飴、レシート等のゴミ
<持って行けなかったもの>
・背負っていたリュックサック
・かぶっていた帽子
・持っていたうちわ
・格好つけてしていた指輪、ネックレス
・指に巻いていた絆創膏
このことから、『着用している衣服』と、『そのポケットに入っている物』が持ち込めるだろうと推測された。
紫苑がチャット欄にこれらを入力すると、柚子胡椒が尋ねた。
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柚子胡椒:
『前回は、どんな服を着ていたの?』
シオン:
『シャツとTシャツの上に、イベントで買ったTシャツを重ねて着て、その上からポケットが多いフィッシングベストを着てました』
『その日、イベントに行ってたんで、両手が空く服を着てた感じです』
ひまぽ:
『あー。だからやたらいっぱいポケットに物が入ってたのかー』
すみれ:
『いいわね。結構持って行けそうじゃない』
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そこから5人は、異世界に何を持って行くべきか、それぞれ案を出し合うことにした。
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ひまぽ:
『まずは、スマホとソーラーバッテリーかなー。スマホなら知識本データがいっぱい入るし』
柚子胡椒:
『お勧めはメタルマッチ! 何回でも火が熾せて便利だよ』
すみれ:
『サプリメントは持って行った方が良いと思うわ。異世界は栄養事情が悪そうだし』
腹黒小学生:
『薬の製法はスマホで持って行くとして、回復魔法がないのなら、最低限の薬はあった方が良いと思う』
『シオンは、向こうに行って、これがあった方が良い、と、思ったものとかないのか?』
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そう腹黒小学生に問われ。
紫苑は、異世界にいた時のことを思い起こした。
(生活面は不便だったけど、割とどうとでもなったんだよな。ただ、食事がな……)
全ての料理が、エグミのある薄塩味。
あれほどカレーや焼きそばが恋しくなったことはない。
本音としては、異世界の食事事情を何とかするものを持って行きたいが、そこまで優先順位が高いものでもない気がする。
その他、これからお世話になる異世界の人々にも何か持って行きたいところだけど、それも同じく優先順位が高くはないだろう。
散々悩んだ末、紫苑は言った。
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シオン:
『すみません。今すぐは思いつかないので、考えておきます』
ひまぽ:
『そだねー。じゃあ、1週間後くらいにまた話そうー』
柚子胡椒:
『がんばって考えてくるね!』
腹黒小学生:
『OK』
すみれ:
『了解♪』
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―――そして、その1週間後。
紫苑達は再び話し合い、とりあえず下記を持って行くことで話がまとまった。
・スマホ
・ソーラーバッテリー
・知識データ(スマホ内)
・LEDミニ懐中電灯
・メタルマッチ
・麻ひも少量(着火用)
・十徳ナイフ
・方位磁石
・マルチビタミンミネラルのサプリメント
・薬(抗生物質など)
・消毒薬
・医療用ボンド
・ポイズンリムーバー(毒吸出し)
ケガから栄養不足にまで対応できる実用的なラインナップだ。
ちなみに、この中のメインは、ズバリ「スマホ」。
知識データーあり、カメラ機能あり、いざとなれば懐中電灯にもなる優れモノだ。
持ち物リストをながめながら、紫苑は4人に感謝した。
4人がいなかったら、こんなすごい持ち物を思いつかなかったに違いない。
紫苑は、ありがとうございます、と、打ち込みながら、PC画面の前で深々と頭を下げた。




