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いい提案、?(3)

柊さんと話を合わせるために少しだけ打ち合わせしてからリビングに戻り、今は花月を向かいに二人で並んで座っている。

それと、花月の事情はある程度、悟るから聞いているらしい。


あいつ、ぺらぺら喋りやがって……。明日シメてやろうか。


「えっとだな、花月。きょ、今日から付き合う事になった、柊 奏さんだ」


自分で言っていてあれだが、かなり痛い奴だ。だが花月のためにも羞恥心を押し殺す。


「改めまして、柊 奏です。よろしくね?花月ちゃん」

「んーと、かなでおねえちゃん?」

「んーとね、私の事は"ママ"って呼んでいいよ」

「え、おねえちゃんがママ……?」


聞いてるだけでもかなり心にくるな……。ほんと、柊さんには申し訳ない。こんなやつと嘘でも恋人のふりをしないといけないんだからな……。


花月は首を横に捻ってじっっっと柊さんを見ている。


暫く沈黙が続く。


やっぱ駄目か。本当のお母さんはいるんだし、見ず知らずの相手をいきなりお母さんなんて思えないよな。


「………ママ」

『『!!』』


お? いまママって……。これいけるのか?


ちらっ、と横目で柊さんを見ると、何故か身体を震わせ、はぁはぁと息を切らして興奮していた。え、怖いんだけど。


「か、花月ちゃん。も、もう一回、お願いできる?」

「ママ!」


満面の笑みでそう言う花月。可愛いなおい。

その瞬間、がしっと強く花月を抱きしめる柊さん。


「ふぇ? ママ?」

「し、白上くん…………。何この可愛い天使は!!!!」


柊さんは満更でもなさそう、、、と言うより喜んでる? いや、興奮してる?

まあ、二人が良いのならいいんだけど。


俺は一安心して、そっと胸を撫で下ろす。


でも、ちょっと気持ち悪いよ?柊さん……。


「ママ〜くるしいよ〜」

「あ、ごめんなさい!」


ぱっ、と花月を離し、我に返る柊さん。柊さんってこんなキャラなの?よく分からん……。


「パパ〜お腹空いた」

「あ」


スマホで時刻を確認すると、六時四十分とでていた。

ヤバい、話し合いをしていたら晩飯を作るのを忘れてしまっていた。


「花月、少し待ってろよ。直ぐに作るからな」

「うん!」


俺は急いでキッチンに向かい、冷蔵庫から食材を取りだす。と、その前に邪魔で仕方がないので、伊達メガネを外しとく。


なんで伊達メガネをつけてるかって言うと、


『副会長はメガネと決まっている!明日から付けてこい!』


と陽乃さんに言われて、特に断る理由が無かったので付けてきているが、最近は邪魔だと思い始めている。


「あ、柊さんはどうする? 帰る?」

「あー、そうですね。今日は一回帰りますね。ん? どうかしたの? 花月ちゃん」


「かえっちゃうの?いっしょにたべないの?」

「うぐっ!」


花月は上目遣いで今にでも泣きそうなぐらい瞳を潤わせながら柊さんを見ていた。柊さんは会心の一撃を受けたかのように胸元を抑えて苦しそうにしてる。


「こらこら。花月? 柊さんを困らせちゃだめだぞ」

「でもぉ……パパとママ、花月といっしょにたべてたよ?」

『『……』』


ママとパパなら一緒に食べる……たしかに普通の家庭ならそうなのだろう。だけど、柊さんと俺は花月の前だけの偽の恋人だ。


それに、柊さんの家で待ってる家族の方もいるし、そろそろ暗くなってくるから帰してあげないといけない。


でも、このままじゃ花月が………。


「柊さん……もし良かったらだけど、うちで食べててってくれないかな」

「私なら大丈夫ですよ。どうせ一人暮らしで家に帰っても誰も居ませんし。なにより、今は花月ちゃんのお母さんだからね」


ニコッと笑みを向けてくれる柊さん。

なんて、善意の塊なんだ。天使、いや、女神様か?


「あでも、食材足りますか?よかったら買い出し行きますよ」

「大丈夫だよ。直ぐ作るから待ってて」


「ママ、一緒に食べてくれるの?」

「うん、一緒に食べてくよー」

「やったー!」


◇◇◇◇


「今日はありがとうな。柊さん」

「いえ、私も花月ちゃんと遊べて楽しかったです」


晩飯を食べ終わり、玄関先にいる。

花月は疲れてしまったのか今は自分の部屋で寝ている。

さすがに、お礼として謝礼を渡そうとしたのだが、断固拒否を続けられてしまった。だけど、俺もそれでは申し訳ないので無理にでも渡そうとしたが、柊さんがいくつか約束をしてくれるだけでいいとの事で、悩んだが渋々納得した。


「あ、帰る前に一つだけいいですか?」

「ん? 何んだ?」

「学校でもメガネ外してみては? 付けていてもいいですけど、付けてない方がカッコイイですよ」


では、と言って柊さんは行ってしまう。


俺はそれをぼーーーっと眺めているだけだった。

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