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8 趣味がいい!しかし認めん!

本日は少し長めになります。

サスケに初めての命令おつかいをした夜にグレースお姉様が部屋まで訪ねてきた。

幸いヒロインはいなかった。

今日のお相手は王太子らしい。何故かお姉様も知っていた。

もっとお喋りしたかったがヒロインに見せるのは勿体ないので用件だけ聞いて直ぐに帰って頂いた。ちくしょう、ヒロインさえいなければお茶の一杯でも出したのに。と軽く落ち込んだ。

お姉様の用事は勉強会の日取りについてだった。

次の休日に学園の自習室を借りて勉強会を行いましょうというもの。


イオリテールに会うと思えば舌打ちが出そうだったが、悪役令嬢レオーネと会えるのは嬉しい。

転生云々てんせいうんぬんを置いておいてもレオーネ様は美人なので普通に会えるのはテンションが上がる。あとレオーネ様はおっぱいが大きい。大きい胸に憧れるのは何も男性ばかりではない。むしろ小さいからこそ大きな人に憧れるのだ。叶うなら一度でいい、大きな胸を揉んでみたい。自身の胸ではボリュームが足りない以上は人のものでしか触れる機会はなく、人のものだからこそ同性である私には男性以上にハードルが高い。うら若き乙女の一員として変態認定される覚悟はまだない。

あと自分の胸のサイズには満足しています。大きいと肩こるというので。

男性にエロ目線で見られる事も増えると思いますしね、私はそれを武器として使う度量を持ち合わせていないので余計なトラブルとは距離を置きたいのです。

門限ギリギリに駆け込んできたヒロインの今日のお相手はお姉様の言った通り王太子でした。

なお明日は王弟と個人授業デートらしい。わからないところを教えてもらうの。とはしゃいでいた。

あまりのはしゃぎっぷりに「私も聞きたい事があるから一緒していい?」と聞いてみたかったが止めておいた。だって明日はサスケの報告を聞かねばならない。


そして翌日、放課後。

昨日と同じ裏庭にてサスケを呼び出す。

「で?イオリテールの調査は終わったの?」

「勿論っす!」

瞳の中に敵愾心という名の炎を燃やす私と同じ炎がサスケの瞳にも灯る。

グレースお姉様に目を付けるとは趣味がいいと思う。ヒロインよりもよっぽどお薦め物件だ。しかし許さん。

グレースお姉様に限らず私のお姉様たちは三人が三人とも素敵だから好きになるのはわかる、だが許さん。

ファンクラブがあると言われたとしよう。

当然と納得できる。

それだけ私の姉たちは魅力的だ。

私?

真逆の方向で有名ですとだけ言っておく。

悲しくなるから二度と聞かないで欲しい。

「お姉様を愛人になんてさせないんだからね!」

上位貴族が相手だと下位貴族であるグレースお姉様は大変遺憾ながら軽んじられる恐れがある。

本人の器としては王妃級だとしても、いかんせんこの国では身分という権力には勝てない。上位貴族であるイオリテールがなりふり構わずお姉様を手に入れようとすればうちの身分だと抗い難いのだ。

なら他の情報ものを使い優位に立つしかない。

「それで?何か弱みは見つかった?」

「ん~…使えそうなネタは二、三あるんすけどね…」

歯切れの悪い答えに何?と続きを促すが答えてくれない。

「セルリア様に教えるのはちょっと…」

「なんでよ」

「グレース様に止められました」

「なんでお姉様がでてくるの?」

「グレース様からセルリア様が俺に命令した場合はその内容と結果を報告しろと命令されているんすよ、なんでも刺激の強すぎる事は耳に入れたくないからと」

「かほご!」

いやいや、そうでなく。

「私グレースお姉様には内緒でって言ったよね?」

「言ってたっすね、でも俺頷いてないんで」

サラッと言われた言葉に昨日のやり取りを思い出す。


『あとグレースお姉様にはくれぐれも内緒でね』

『報告は明日の放課後、またここで…でいいっすか?』

『え?早くない?』


確かに頷いてはいなかった。

「いやいや、それでもあなた私の直属だよね?」

「確かにセルリア様は俺の直属の上司っすけど、命令遵守めいれいじゅんしゅの順番としては一番下っす!」

今明かされる衝撃の事実!

というか序列を遵守するとかまんま犬!

「あ、因みにグレース様には内緒でって部分もちゃんと報告済みっす!」

「せめてそれは内緒にしてくれても良かったんじゃないかな!?

まかり間違って私がイオリテールの事が好きって誤解されたらどうするの?責任を取ってくれるの?」

「命令なら取りますけど、ちゃんと理由も報告したから大丈夫っすよ」

全て筒抜けじゃないか!

サスケを使ったのは初めてで、便利だと思ったけどやはり控えるべきだった。

いや、待てよ。

「お姉様がやけに私の噂やヒロ…じゃなくユシルの情報に詳しかったりするのは…」

「そりゃ俺らが調べているからですよ」

あっさりと頷かれて脱力する。

「そもそもイオリテールの調査が一日である程度完了したのも前もって俺らが調べているからですし。セルリア様がボッチになってる元凶のアバズレが尻追いかけている奴の情報とか当然収集します、常識です」

どこの常識かと問いたい。

少なくとも一般的なものでないのは確かだ。我が家の常識が怖い。

「…もういい。で、その弱みはグレースお姉様にはいってるのね?」

「ずっと前には耳に入ってたはずっす」

「…じゃあいっか」

「いいんすか?」

「お姉様なら私より効果的に使うでしょ?」

だから構わないと、どうせ私に教えてくれはしないのだからと流す。

「…じゃあ、レオーネ様の情報とかもある?」

イオリテールの妹なのだから少しはあるだろうと聞いてみればこれまたアッサリと頷かれる。

「あるっすよ、どんな事を聞きたいんすか?」

「そうね…」

一番聞きたいのは転生者かどうかであるが、そんな事はさすがに聞けない。

「ユシルをどう思っているのかと、王太子を始めとしたユシルがちょっかいかけてる五人との現在とそれまでの仲…とか」

「俺が知っている限りでは、良くは思ってないと思うっす。あれだけアバズレがあからさまに振舞ってるっすからね。他の令嬢たちにアバズレを諫めるべきとか、しっかり王太子を捕まえておかないからだ~とか散々忠言されるという二次被害もでてるっす。

五人との仲は…以前よりは距離を置いてるみたいっすけど、決定的な仲違いはしてないっすね。

あと王宮でもアバズレの事は報告されており血迷って正妃にしたいという前にレオーネ様と王太子を婚約させるべしって話がでてます」

こいつさっきからごく自然にヒロインをアバズレ呼ばわりしてるな。気持ちはわかるが。

「…男の目から見てユシルって可愛くないの?」

「俺、グレース様を見慣れてるから目が肥えてるっす。性格の悪さが顔面ににじみ出てるのでアバズレとしか思えないっすね」

「…レオーネ様は?」

「綺麗な人だと思うっすよ?ただ好みではないっす」

「そう…」

良かった、サスケの美的感覚はまだ正常だ。

そしてヒロインをアバズレ認定するサスケがレオーネ様を綺麗だというのなら、レオーネ様は真面な人なのだろう。

ここまで話したところで門限も近づいてきていたため、会話を切り上げる事にした。

「興味があるなら調べるっすよ」

「…じゃあ、王太子たちがユシルをどう思ってるかは?」

「表面上は嫌がっている様には見えないので…何か裏があってアバズレの行動を許しているのか、完全に色ボケに毒されているのか、ってとこっすか?」

散々な言われようである。間違ってはないが。

「まぁ、そんな感じ」

頷いてからこれもお姉様に報告されるのかと気付いた。


門限ギリギリに部屋に駆け込んだのだがヒロインはまだ戻っていない。

寮の門限時間は過ぎたが就寝の時間ではないため、多目的スペースである一階の談話室はまだ使える時間。テストも近くなってきたので勉強をしている令嬢も多数いるがそこにはいないだろう。

人数がいるからこそ今のヒロインにとっては鬼門。

注目を集めるのは大好きでも、陰口を叩かれるのは好きじゃない。

かといって直接部屋を訪ねられる様な友達もいないはずだ。ボッチだからね。

本人はセルリアがいると否定するかもしれないが私はヒロインの友達ではない。友達よりもボッチを選ぶ。

まぁいない方が静かでいいかと勉強しようとすれば、いきなり窓が開いた。

ビックリして注目していればそこから入ってきたのはヒロインだった。おい、ここ2階。確かにベストポジションな位置に木が生えているけどさぁ。令嬢として木登りはどうかと思う。私も忍者修行のせいで出来るけどさ。

「ユシル!?どうしてそんなところから?」

そもそもなぜ外から開けられた。キチンと鍵は閉まっているはずですよ。

「あ、セルリア。良かった、帰ってたのね。

ちょっと手伝ってくれる?」

「………」

突き落としたい衝動を堪えて中へと引き入れる。この年で牢獄暮らしは辛い。

前世と違って罪人の人権はほぼない。…と思われる。

「なんで窓から入ってきたのよ?」

「今日は門限に間に合いそうになかったから…」

答えている様で微妙に聞いている事とずれている。

間に合わなかったではなく、間に合いそうにない。

似て非なる言葉は門限破りを前もってわかっていたという事だ。

確か今日のデート相手は王弟だったか…なるほど五番目のイベントである星空デートか。

ゲームでは王弟に質問をしに行き、あれもこれもと質問しているうちに門限が過ぎてしまい寮まで送る途中で夜空を見上げ星座の講義が始まるというものだった。

もう五番目のイベントを済ませたのか、ペース早い気もするが先に個別イベントを終わらせておくつもりなら納得だ。

攻略対象を一人に絞った方がただイベントを発生させるだけなら楽だからね。

このゲームの好感度は上がりっぱなしではなく、ふとした事で下がる。

みんなを同時に攻略しようとすればイベントに必要な好感度に振り回される事になる。

それを避けるためにバレンタインイベントが終わった後はひたすら必要なステータスを上げる。ステータスが下がる事はないので目標値に達したら順に攻略キャラとのイベントをクリア。

最後に各キャラの好感度調整。というのがネットで紹介されていた手順。

「こんな遅くまでどこに行ってたのよ」

一応“親友”としては聞いておくべきだろう。ほぼ間違いないだろうが確認の意味も込めて。

「うふ、聞きたい?」

どうしようかな?と迷った素振りを見せてはいるが本当は惚気たいのを知っているからな。

無駄に時間かけずにとっとと言え!

内心のイライラを表に出さない様に注意しながら「うん、ききたい」と言ってみる。

棒読みになってしまったのだが、ヒロインは気付く様子もなく惚気だした。

「しょうがないなぁ、セルリアだけ特別だよ?」

と語られた内容は王弟の五番目のイベントで間違いなかった。

画面越しに見ればそれなりに素敵だったんだけどね、自分をその場に置くのはかなり辛い。

いかにイケメンといえ「君はこの星空より綺麗だよ」なんて言われたら叫ばない自信はない。やはり画面越しが一番である。

ヒロインはよく耐えられるな、とおそらく前世は似たような庶民の出であろうにと感心する。

グレースお姉様と違ってこのヒロインからは気品の様なものは感じられない。家も男爵だし、うちと同じく下位貴族ならそれほど厳しくは育てられなかったのかな?

愛人の子だし、ゲームでは冷遇もされてたんだよね…現代っ子がよく耐えたな。

相槌も適当に打っていたのだが特に文句を言われる事もなく散々に惚気た後に「早く寝ないと美容に悪い」といって早々に寝てしまった。

灯りを消されてしまったため、私も寝るより他は出来なくなった。

相変わらず私の都合は丸無視である。

そしてお前は勉強しなくていいのか。これだけ遊び惚けていたら首位とか十位以内とか無理だぞ。

いっそ落第点を取ってくれれば逆ハールートも途絶えるので楽なのですがね。

こっそりと落第しろと呪っておく。それくらいはしても構うまい。思うだけなら誰にも迷惑はかけない。

最低ラインの真ん中はキープするでしょうけどね、この女なら!


全く!

今はヒロインよりもお姉様の事ですよ!

お姉様がイオリテールを好きになる事はないだろうけど…まてよ、それならイオリテールを攻略できないからヒロインも逆ハールートが絶たれるのでは?

それなら好都合だが、イオリテールは早めに退治したい。


自身の複雑な心中に翻弄されたせいでその日の寝つきはすこぶる悪かった。



評価、ブクマありがとうございます!

アクセス数も増えておりとても嬉しいです!

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