68 視覚効果は大事です
前回の感想にて、不明だった道具の名前を教えて頂きました。
ありがとうございます。
今回さっそく出させて頂きました。
授業終了後、クラスメイトに再度囲まれる事がない様にとダッシュで逃げた。
授業の最後の方に片づけを済まし、授業終了の合図と共に駆けだした。淑女としては許されない事ですけど走りましたよ。
お姉様の部屋に逃げ帰って肩で息をしているとサスケが目の前に現れた。叫ばなかった事に感謝してください、見つかったら不審者認定されるからな。
「おめでとうっすセルリア様!」
「…ありがとう」
当然、知っているよなと護衛兼ストーカーでもあるサスケにお礼を告げる。
「ボッチだったセルリア様がクラスの人気者に!感無量っす!」
そっちかい!
いや、確かに私も人気者気分を味わったけれども!
「まぁ一過性のものでしょ」
それにクラスメイト達があんなに騒いだのはシルノイ先生への信頼でもあると思う。直ぐに図書室へと寄贈する様にと促す先生であれば騒ぎはしなかっただろう。
珍しくシルノイ先生が注目し、評価したレポートだったからみんな興味を持ったのだ。
その興味もきっと長くは続かない。
「それで?レポートはどうするっすか?」
「貸し出し希望者が多いと私じゃ管理できなくなるから最終的には寄贈する」
声をかけてきた全ての人が本当に見たいわけじゃないとは思うけど。
ただ現時点ではちょっと読みたいと思ってる人はいる。もしかしたら話を聞いて読みたいと言ってくれる人は増えるかもしれない。
こっちが相手の性格とか知らない状態で貸すのも怖い。
私を通して貸し借りをするのではなく、自分が読み終わったから次の興味ある人に直接渡してしまうとか
学生の時の個人間でのノートや漫画の貸し借りでのあるあるだ。
又貸しが続くと最初の持ち主が分からなくなってしまうという事態にも陥る。せめて貸す前に持ち主に了承を取ってくれといいたい。最悪事後承諾でもいい。
返ってこない、どこにあるかもわからない本は最終的に諦めた頃にボロボロになって返ってくるというのもパターンだ。見つからないパターンも当然ある。
最初に貸した友達は信用できても、その友達経由で借りたいと言ってくる人物は信用してはいけない。直接の持ち主を良く知らないというのも粗末に扱う所以だろう。
その友達と持ち主の友情が破滅する原因にもなるので本当に止めてあげて欲しい。直ぐに再購入できるものならまだしも、絶版になった本とか、サイン本とか貴重なものだったら諦められない。絶対に恨む。
無くした人はもちろん、そんな人に貸した友達も。
「でもその前に約束したからリオルド先生とレオーネ様に貸す予定」
約束したのは王弟の方が先なので、そちらに先に貸す予定だ。王弟とレオーネ様はどちらも信用できるのでこの二人の間なら又貸しもありです。許可します。
とはいえ私とレオーネ様の関係は内緒なので無理なんですけどね。レオーネ様が私のレポートに興味を持つきっかけが今のところないから。
それこそ図書室に置いてあるなら見るきっかけは生まれるけど。
「…休みに入る前に渡してこようかな」
今の時期は忙しいかもしれないが最初から期限を設ければそれまでには読み終えるだろうし、読み終える事が出来なかった場合は図書室から再度借りてもらえばいい。
で、休み前に回収して休み中にレオーネ様に貸せばいいよね。
休み明けに少しだけ見直しをして図書室に寄贈。…こういう流れでいいかな?
レポートは明日の放課後にでも王弟へ届けようっと。
レポートに対しての予定を決めたので、今度は別の予定を立てなければいけない。
ユシルに休み中はうちに来る様に伝えるのは…来週頭くらいにしようかな?
それまでに謝罪リストを完成させよう。
「サスケ、ユシルのところに行きたいんだけどメルーセは今手が空いてる?」
一人でユシルに会いに行くのはまだ止められている。サスケが付いてくると色々と問題が生じるのでお供役はもっぱらメルーセになる。
「呼んでくるっす!」
本人もユシルには会いたくないそうだしちょうどいいよね。と思った時には既にサスケの姿はなかった。
さて、ちょっと時間が空いたし、サスケかメルーセが戻ってくるまで返却されたレポートに目を通す事にしよう。
ちょっと時間が空くと色々と粗が見つかりますね。これをこのまま図書室に寄贈するとかやたらと恥ずかしくなってきた。めっちゃ書き直したい。
しかし書き直したところで満足がいくものに仕上がるかは別問題。
せいぜい分かりやすい言葉を使うくらいに留めておいた方がいいかな、やりだすと止まらなくなりそうだし。
あ~…コピー機が欲しい。
そうすれば添削用と保存用で取っておけるのに。更に提出用も作れるのに。添削しまくって元の文章が分からなくなった時とかに便利なのに。これを全て書き写すとか考えただけで辛い、無理。
結局はこのまま寄贈という形になりそうだな、と最後まで読み切って思った。
ノックはするが返事はせずに部屋に入る。元は自分の部屋でもあるのでいいのです。
今日はちゃんと起きていたユシルはドアを開けようとしたのか思ったよりもドアの近くにいた。
入ってきたのが私だと分かると不満げに口を尖らせる。
「ひどいわ、セルリア」
何故開口一番に責められなければならないのか。原因は自分にあるんですよ?
何の事を責めているのかちょっと分からないですけどね。
「何のこと?」
「決まってるじゃない!今日の事よ!」
ユシルにして見れば頑張って終えた宿題が評価されなかった感じなのでしょうが、宿題はして当たり前です。ついでにいえば褒められる内容でもない。結論、やはりユシルが悪い。
「セルリアのレポートばかり褒められるなんて!これもセルリアが一緒にレポートをしてくれなかったせいだわ!」
だれか~!ハリセン持ってきて~!!
もしくは警策をお願いします。あの座禅の時に使う棒です。そちらの方が攻撃力が高そうなので希望が叶うならそっちをお願いします。
もちろんどっちも用意できないので頭の中で存分に素振りをして心を落ち着ける。
ちょっともう何から話をすればいいのか分からない。
そもそも人の手柄をナチュラルに自分の手柄の様に思うのはどうかと思う。
「アレは私の成果であってユシルの成果ではないから」
まず事実を一つ告げる。
「でも私との共作という事にすれば私の成果でもあるでしょう?」
「ユシルは何もしないのに人の評価を自分の評価にする事に何の抵抗もないの?」
「手伝ったのだから私の成果でもあるじゃない」
それだと“共作”とも言えないと思う。それで“共作”となるのなら資料探しや纏めを手伝ってくださったお姉様やサスケの方が権利がある。
「ユシル、座って」
頭が痛くなってきた。思った以上に手ごわいんだけどこの子。本当に反省したの?
いや、そこを疑うのは可哀想だ。けれど全然足りていないのも事実。
私の指示に素直に従って椅子に座るところとか、ちょっとは成長したと思う。でも…。
「誰が椅子に座っていいって言った?」
「え?」
視覚効果ってやっぱり大事だと思うんですよね、私。
「そこ、座って」
と指さしたのは床である。
この国は土足文化なので当然床は汚く直に座るところではない。
なお実家の私の自室は土足厳禁にしている。
前世の感覚が残っているせいで土足文化にはどうしても慣れないんだよね。せめて自分のテリトリーくらいは好きな様に過ごしたい。
「早く」
戸惑って目線のみで撤回、あるいは勘違いを求めているが許しはしない。
しぶしぶながら座ったユシルは何も言わずとも正座をしている。…この辺は日本人の感性が生きているな。それとも前世の親の教育方針だったのか。まぁどっちでもいい。
私がユシルを見下ろし、ユシルが私を見上げる。この立ち位置が大事なのだから。
ブクマ、感想ありがとうございます。
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