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63 え?何それズルい

問題は増えていくばかりでちっとも解決していない。

しかも続編ヒロインは転生者でも転生者でなくとも問題ありの性格の可能性が高そうだ。

そうレオーネ様に説明すれば重々しくため息を吐かれた。

「本当に、問題しかないのね…」

声には疲れが見える。

「“イネス”が学園に来る前にどういった人物なのか探らせたいけど…情報が足りないから見つけ出すのは難しいわね」

「今のところ年齢もわかりませんしね」

普通に入学するなら私達の一つ下を探せばいいが、急に貴族席を手に入れたので編入しました。となると年齢が不明になってしまう。

「あ、でも学園に入学可能な年齢で、急に貴族になったご令嬢…とかならまだ絞れるんじゃないですか?」

「そうね…その辺りでアプローチをするしかないかしら」

と策を練りだしたレオーネ様。

あれ?でも。

「どうやって探すんですか?レオーネ様?」

ケオグジヤ侯爵家ほどの名門になれば諜報を専門にする使用人はいるだろうし、現に王太子暗殺の件で動いてもいそうだけどうちほどは人数いないんじゃないかな?

なにせうちは全員が忍者みたいですからね。

レオーネ様が自由に動かす事が出来る人材がいるかはわからないし、いてもどうして探しているのかの説明は必要だ。うちみたいに絶対に父親であるケオグジヤ侯爵に報告がいくだろう事も考えると迂闊な事は言えない。

「そうね…また噂を拾った事にでもしようかしら?」

レオーネ様にしては投げやりな案だ。でも人名か暗号までかはわからないけど“イネス”という単語だけなら言い訳も聞くかな?

王太子暗殺の噂を聞いた時に、その単語が出てきたとでもいえば。

ただ問題はそう何度も噂を聞くのか?ということ。レオーネ様周辺でワザと立てられたものだと勘ぐる事も出来る。そうして本当は起きてもいない、起こすつもりもない事件の犯人にレオーネ様を仕立てあげケオグジヤ侯爵家そのものを失脚させようとするとか…。

あれ?

私いま変な考えに辿り着いたな。

気になる事をハッキリしないからと胸に秘めていて情報共有を怠った事でピンチに陥るのも王道パターンですね。

刑事もので犯人が誰だかわかって捕まる前に自首を進めた結果返り討ちとかパターンですよね。

なので私はアッサリとレオーネ様に伝える。何かの役に立つかもしれないし。

レオーネ様は私の言葉に大きく瞳を瞬いた。

「なるほど、ただ噂を巻くだけでケオグジヤ侯爵家を失脚させるきっかけは作れるわね。証拠なんて捏造してしまえばいいのですもの」

「探索する側に嘘の証言者をワザと捕まえさせるのもアリですね」

王太子暗殺を企んでいる。だなんて噂が起きただけでアウトだ。

証拠がなければ罰する事は出来ないが、ハッキリと疑念を払拭できず疑いを持たれたままだと派閥争いにも影響は出る。如何に名門ケオグジヤ侯爵家といえど…いやだからこそ影響は大きなものになるだろう。

「でも良い案を出してもらったわ。

それが目的の一つと示唆すれば私にワザと“王太子暗殺”の単語を聞かせたのでは?とお父様に説明できるもの。

これでユシルからの情報をお父様に報告するのに毎回言い訳を考えなくてすむわ」

お役に立てて何よりです。

でもそれだと情報が本物だった場合は犯人はただの間抜けとケオグジヤ侯爵に判断されますね。私は困らないので構いませんが。

「ワザと偽の情報をリークしていると推測しても放置するわけにはいかないから調査する事には変わりがないですし、そこで本物を引き当てる事が出来ればラッキーですね」

事が大きいだけに調査をしないわけにはいかないし、狙いが王太子からケオグジヤ侯爵家に移ったとしても敵の目的と正体を暴くために調査続行になる可能性は高い。

「オオカミ少年の様にならないのを祈るわ」

「あ~…」

オオカミが来るぞと何度も嘘を吐いたせいで最後に本当にオオカミが来た時に信じてもらえなかった少年の話だ。

少年の悲惨な末路を思い出し、うっかりとレオーネ様で想像してしまった。

「断罪エンドになりますかね?」

「もっと酷くなるでしょうね、確実に家にも被害がでるでしょうし」

ゲームだとレオーネ様のせいで多少の被害は被っただろうけどケオグジヤ侯爵家が没落したりはしなかったもんね。

攻略キャラの身内でもあるからか、本人だけに被害が留まっていた。本人は辛いに違いないし、ゲーム内でした程度の事であそこまで断罪する必要があったのか?とは思うけど。

他人の婚約者、それも王太子にちょっかいをかけるという問題児に対してしたと思えばどっちもどっちもじゃね?と思うんだけどね。

あ、ちゃんと虐めは犯罪だと思ってますよ。

物を盗んだり隠したり壊したりとかは窃盗罪と器物破損に問われると思いますし、金銭を要求したり暴力を振るったりは恐喝に傷害罪ですよね?

普通に犯罪です。

それをなぜ“子供がした事だから”と許されるのか。

自分がした事は犯罪行為なのだと知らしめる為にも逮捕してしまえばいいのですよ。そしてニュースで流せばいいのです。実名を晒せとはいいませんが、虐めで逮捕歴が付いた人がいると知れ渡ればちょっとは抑止力になると思うんですよ。

とはいえ権力でどうとでもなってしまうのも事実である。

ゲームのレオーネだって、ヒロインの味方に王太子が付かなければ大きな問題にはならなかったと思うし。せいぜい周囲に眉を顰められるか、身内に注意されて終わりといったところか。

いや、ゲームのレオーネの家族なら邪魔ものの排除という面でむしろ当然という判断をされたかもしれない。王太子にわざわざ言いつける者もいないだろうし。

…そう思うとゲームでは増長するレオーネを止める事の出来る人がいなかったんだな。

それはそれで悲しい事だと思うが、一般的な善と貴族の善とは時に異なる事があるから難しい。まぁ虐めは悪い事ですけどね。ゲームだと注意といえない注意をしたすぐ後に虐めに発展してましたから。

もうちょっと根気よく諭していたらゲームのヒロインであれば納得したかもしれない。或いはヒロインがレオーネの価値観を壊すというのもありか。まぁそうはならないんだけど。

「とにかく、ゲームの情報を聞き出さなくてはいけないわね」

「そうですね…」

レオーネ様の協力が得られない以上は私がやるしかないのだが…相手があのユシルなので必要な情報を上手く聞き出せるか不安だ。基本はカイ様の事しか話さないし、こっちがあまり情報を持っていないので嘘を吐かれても気付けない。

嘘を吐いてなくても忘れていて肝心な事を言わないでいたり、勘違いや思い込みの情報などもあるだろうしユシルのいう事を全面的に信じて行動するのは危ない。

続編が一年後を舞台としているのなら基本の世界観は一緒だと思われる。それに追加して攻略キャラが増えたという認識でいるのだが。

ナンバリング作品なのに世界観そのものの設定が変わっている場合もないとは言い切れないのがゲームの怖いところだ。

それでも数百年後とか数百年前とか時代が離れているならともかく、たった数年でそこまで変わる?というものもあるからね。

一応理由付けはされているが納得出来るものと出来ないものがある。

例えばだけど急に来年から魔法が使える様になりました、とかの設定が組み込まれていたらなんでだよ!と叫ばずにはいられない。

この辺りの事もユシルに聞きださないとなぁ。

…そういえば最終回で伏線なく強制的に物語に落ちが付けられた作品があったな。思わずリアルでも叫んだわ、なんでだよ!と。そんな素振りどこにあった?と。口に出してアニメにツッコんだのは初めてだったよ。

…あの時は誰かと一緒に見てたんだよね、それで同時にツッコんだのを思い出した。

誰だったっけ?

口に出したという事はかなり気を許している相手だ。

ボンヤリした記憶は思い出そうとすればするほど遠ざかる。見ていたアニメの情報は思い出せるというのに、前世の家族や自分の事、どんな風に生活していたのかはハッキリと思い出す事が出来ない。

考え続けると頭が痛くなりそうだったので止めた。

思い出したら辛くなるかもしれないし、深追いするのは止めておこう。いつか自然に思い出せる事もあるかもしれないし。

「……時間も限られているし、長期休暇期間も有効に使いたいわね」

「それはそうですけど…どうやってその時間を確保するんですか?」

「行儀見習いという形で家に招く方法もあるけれど…」

「却下です」

レオーネ様の提案を即座に却下する。

それってつまりレオーネ様の家にユシルを侍女か何かとして雇うという形を取るという事ですよね?

侯爵家に行儀見習いに行くとか男爵令嬢としてはむしろ光栄な事ですよ?

罰じゃなくてご褒美じゃないですか!

〇〇様のお邸にお勤めしたと言えば箔が付いて良い嫁入り先が見つかるやすくなるからだ。それもケオグジヤ侯爵家にとか…縁を結べるのなら細い縁でもいいと求婚してくる者も増える。そんな事になったら今のユシルだと調子に乗る可能性が高い。

せっかく無自覚愛されヒロイン症候群が改善されたばかりだというのに。

というかレオーネ様のお世話とかむしろ私がしたいです。立候補します。仕事の内容によっては毎日会えるかどうか分からないけど今よりは会える機会が増える。そりゃ親しく話す事は出来なくなるけど。

我が家は子爵家なので侯爵家に行儀見習いに行くのも変ではないし。

「…そういう方法もあるけれど、現実的ではないと続けるつもりだったのだけど」

私の目が据わったものになったせいかレオーネ様の声が幾分小さくなっていた。

「レオーネ様とはコレンス家も含めて接点はないですよね?」

「ええ、夜会などで挨拶を交わした事はあるかもしれないけれど、行儀見習いとして招くほどの交友はないわ」

レオーネ様が否定した事で冷静さが戻ってくる。

下位貴族が高位貴族の家へと期間限定で行儀見習いという形で奉公する事はある。

でもそれは家同士に繋がりがない場合はあり得ない事でもある。

同じ派閥に属しているでも、取引している相手でも、いっそ親同士が友達でも成立するが…万が一行儀見習いとして勤めた相手が何かやらかした場合は責任を追及される事もある。どんな教育をしてたんだ!とかね。

多いのはやはり恋愛関係でしょうかね?

実家よりも地位の高い跡取り息子や主人を誑かして、正妻は無理でも第二夫人に収まったりとかもありますよ。

正妻相手とは家同士の繋がりでいわゆる政略結婚のパターンも多く、付け入る隙はある。それを目的として行儀見習いにいく場合も、反対に向こうから手を出してくる場合もある。

向こうから来られた場合は明確な拒絶も出来ないほど実家の力差があったりするとドロドロになります。昼メロ展開です。

…純愛の場合は大衆小説として人気があります。

格差婚を描いた話ってどこも一定の人気が出ますよね、シンデレラストーリーというのは夢見る乙女の憧れのですからね。



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