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3 知りませんよ現在の好感度なんて

ヒロインにはそろそろ現実を見て欲しい。


「アルレール様は私のことどう思っているのかしら?」

「う~ん…ユシルなら直接聞けるんじゃない?」

「………そんな恥ずかしいこと出来ないわ」


不満そうな眼付きとは裏腹に顔と声は可愛らしく恥じらうヒロイン。

一介の子爵令嬢が王太子の心情、それも言っては悪いがただの男爵令嬢への好感度なんてどうやって調べると思ってるんだよ。確かにゲームでは知ってましたけどね!

そろそろ気付きましょう、ここはゲームと恐ろしく似通ってはいるけれど“現実”なのだと。

ゲームとの齟齬にも気づいているのでしょう?

シナリオと違うとボソッと何回か呟いていた事にこっちはちゃんと気付いてるんですよ。


逆ハー狙いのヒロインの手際はそれは見事の一言につきた。

攻略キャラとは一か月ほどの時間をかけないと全員と会えないのだが、どうやったのか一週間経つか経たないかのうちにヒロインは全員との出会いイベントを終えていた。

中でも物理的に一か月後に登場予定だった王弟とどうやって出会う事が出来たのか非常に気になる。あの人、今はまだ調査中とかで学園にいない設定だったはずですよ?

王弟。

つまりは国王の弟であり、王太子とっては叔父にあたる人物は様々な理由によって今は王位継承権を返上して学園の教師の一人として暮らしている。

植物研究学が好きという表向きの理由と、王太子とその弟が生まれた事によりもうスペアはいらないだろうと余計な火種にならないようにと国政から退いたという裏事情は個別ルート後半で明かされるストーリーだ。

国の為に身を引いたというのも本当だがそれ以上に植物が好きで、王族として働くより好きな事(研究)がしたいというのも紛れもない本心。

エピローグでは彼が品種改良した新種のバラをヒロインの名前をつけてプレゼントしていたなかなかのロマンチストだ。

王太子、王弟の他の攻略キャラは三人。

悪役令嬢の二番目の兄である商魂逞しい実業家と、質実剛健な王太子の側近でもある騎士と若くして父親の急死により侯爵家を継いだばかりの若き当主…の合わせて五人がヒロインの獲物である。

なおたぶん転生者の“悪役令嬢”がしたゲームの改変は以下の通り。


〇王太子と婚約していない

〇王弟と王太子の確執はなし

〇兄(実業家)との仲も良好

〇騎士とも仲良し

〇侯爵の父親は健在


といったところだろうか?

これだけ色々と変化があるところを見ると悪役令嬢がかなり頑張った事が伺える。

そしてこれだけ改変されているのに悪役令嬢が転生者という可能性を考えもしないヒロイン。…前世ではあまり本を読まないタイプだったのだろうか?

ネット小説だけでなく漫画やアニメだって類似の作品はあったのに。

ヒロインに転生したから大丈夫とか楽観視したのだろうか?

なら悪役令嬢の方が一枚も二枚も上手だ。

なんといっても王弟と王太子とのアレコレとか、ヒロインにだって全て問題なく解決とはいかなかったというのに既に解決済みだ。

問題が大きくなる前に解決したのだろうなとは思う。

また悪役令嬢と攻略キャラとの仲も悪くはない…と思う。

表面上だけ取り繕われたとしても直接顔を見る機会も少ない私では確かめる術もない。当然、攻略キャラのヒロインへの好感度なんて調べられない。調べる気もない。

むしろヒロインである本人の方が詳しいと思うんですけどね、なんで一度も会ってない人物に聞くのか。ゲームでそうだったからですよね、スミマセン。


入学してから約一か月。

既にヒロインは尻軽という認識が令嬢たちの間で広がってしまっている。

それも仕方のない事だ。

攻略キャラ五人ととっかえひっかえデートしているのだから。

見知らぬ令嬢から同室なんて可哀想だとか同室のよしみでご忠告してあげれば…と私まで良くない方向で目立ってしまっている。

私本人…というよりもヒロインと関わり合いになりたくないという理由(だと思いたい)で私まで避けられる始末。よって私まで現在友達がいない状態が続いてしまっている。

ヒロイン?

同じく友達なんていないけどイベント消化に忙しくって気にしてませんよ。

なにせ五人分ものイベントを消化していかなくてはならないのだ。一日に二人とデートとかも当たり前、でないと逆ハーエンドは迎えられない。

遠目で見る限りは実に仲良さそうにしてましたよ、中庭とか目立つところでの密会は避けた方がいいのでは?と忠告をやんわりとしたが聞く耳を持ってはいなかった。

「心配かけてごめんなさい、でも私は大丈夫だから…」

と耐え忍ぶヒロインを気取って答えられたので無駄だな、と諦めた。

そして惚気話を聞かされるセルリア

うるせぇ!と怒鳴りつけたいのを堪えて聞き続ける理由はどこまでイベントが進んでいるのか把握する為だ。


逆ハールートが難しいのは好感度調整が難しいため。

うっかりと上げ過ぎると個別ルートに入ってしまい、逆ハールートが絶たれてしまうからだ。

反対に好感度が一定数に達していないと逆ハールートそのものに入れない。

具体的にいうと全員の好感度が40以上かつ49未満でないといけない。好感度が50を超えてしまうと早い者勝ちで個別ルートに入るので微妙な調整が必要となる。

その調整に役立つのが私お助けキャラのセルリアだ。

先ほどの「アルレール様は私のことどう思っていのるかしら?」という台詞、各攻略キャラの名前だけが違うテンプレ台詞を言われたら「覚えているかも怪しいわ」「意識していないんじゃないかしら」「そうね、嫌ってはないみたい」「好ましいと思ってるんじゃないかしら」「あら気づいてないの?…ふふ、な~いしょ」と五つの用意されている台詞から答える事になる。

好感度の上限は100で20上がるごとに台詞が変わる。

つまりヒロインが求めている答えは「そうね、嫌ってはないみたい」になる。

この台詞を聞いた直後に逆ハールートに繋がるイベントまでは攻略キャラに会わなければいい。

もしくは会っても好感度が上がる事をしなければいい。最もゲームでは会うだけで好感度が上がるしようなので油断すると直ぐに50を超えてしまう。

あと41~59の間は台詞が変わらないのでうっかりと最初に聞いた時に超えていたというパターンもあるのでセーブは大事。

猛者はわざわざセルリアに頼らなくても全員の好感度が今どれくらいかと把握してますけどね。

実際に前世の私はイベントフルコンプの為に手製のメモ使って好感度の計算してましたよ、よっしゃ逆ハールート確定!と思った次の瞬間には放課後デートに誘いに来た奴のせいでロードし直す羽目になったけどな。

好感度が上がるとキャラの方からデートに誘いに来る事があるのだが、断ると下がるし受けると上がるという逆ハールート狙いにとってはとても困るプチイベント。

個別ルートならむしろウェルカムなんだけどな。

あと他の男とデートしてると好感度が下がります。プチデートも同様。

だからロードし直したのだし!

くっそ、思い出してもイラっとくる。

せっかく緻密に立てたチャートが無に帰したのだから。

戻ったところからだと何故か失敗が続き放り出したくなったのを覚えている。

なおその時にデートに誘いに来たのが全て王太子だったので私は王太子が攻略キャラの中で一番嫌いである。

王道をイメージして作られたキャラだから他のキャラと比べて個性も足りないしね、うん、良くいるキャラだよねで感想が終わった。

王道だけあって叫びだしたくなるくらい甘い台詞を連発していましたよ。かなり初期の段階でそれだからこいつ既にヒロインのこと好きだろ?と思ったものだ。ゲーム的にも攻略が一番楽でしたよ、捻った答えを選ばずこれまた王道を選択すれば外れなかったのだから。


まあそういった事情からヒロインがセルリアに先の台詞を言うのはわかる。

しかしその度にセルリアが「知らない」「自分で聞け」と言っているのにも関わらず毎日訊ねてくる。しかも律義に五人分。

いい加減に諦めてくれ。セルリアの疲労感が半端ない。

こんなやつと友達にはなれないし、友達とも思っていないが情報は必要。

このまま逆ハールートの道が途絶えてしまえばいいのに…。


逆ハールートはバレンタインデーの様な共通イベントを通って確定する。

ゲーム的には1年間の学園生活を通して攻略キャラとの仲を深めていくというものだが、その最初の方…3か月が経った頃にそのイベントは行われる。

女性から好きな男性にチョコを送るという行為はバレンタインデーと同じだが、大きく違うのは義理チョコや友チョコが一切ないこと。

もしも複数人に上げてしまうとたちまち悪評が立つ。

個別ルートなら大幅に攻略キャラの好感度を上げられる大事なイベントであり逆ハールートなら反対に誰にもあげてはいけない。

ヒロインからチョコが貰えないとイベント後に大幅に好感度が下がる仕様なので、それを計算して全員40後半の好感度を維持したいところである。

ヒロイン・・・・も当然そのつもりなのだろう、だからしつこく答えの返ってこない質問をしてくるのだから。

普通なら縁切られてるからな、このしつこさ。

いっそ個別ルートに入ってしまえば楽なのに…。



ブクマありがとうございます!

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