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20/92

20 思った以上に本格的でした

前世の話題で盛り上がる2人。

ヒロインにはサスケの顔を見せること、当日は私を同席させること。など絶対外せないが不審に思われそうなところはレオーネ様が上手くオブラートに包んで条件を指定していった。

うんうんと頷いていたサスケは準備に時間がかかるので少しお待ちくださいというので頷いて。

他に協力してくれる人も捕まえてくるっす!といって張り切って去った後のこと。

「自覚はあるの?」

「何のことですか?」

急な問いかけに何を聞かれているのかもわからず返せば「なるほど王道」と頷かれた。

「わからなければいいのよ、まだ」

意味深な言われ方にもしかしてサスケが恋愛感情として私の事が好きだと思っているのかと気付く。

確かにそれなら王道だ。

悪役令嬢ものの話の定番ともいえる。

転生ヒロインの思い人は出会う前に悪役令嬢が攻略済みとか。

そして大抵の場合は無自覚。狙ってない。

サスケが私に向ける感情はオルレンス子爵家に対する忠誠の一環だと思う。サスケは家族全員大好きだ。

あとついさっき振られたばかりでもある。告白してないのに!そういう意味では好きじゃないのに!!

「あと“カイ”はほぼサスケさんで決まりでしょうね」

「どうしてそう思ったんです?あの絵からですか?」

「ああ…そっちもあったわね」

反論しようとしたのだが別な事を言われてしまう。

「あれ?違うんですか?」

「あなた気付かなかったの?」

あれ?既視感デジャヴを感じますね。

「サスケさんの声って石上悠斗と同じでしょ?声優の」

「…初めて聞く名前です。新人ですか?」

新人なら出演している作品が少ないので見てない場合もあるしチョイ役で記憶に残らなかったという事はある。

しかし声優名もしっかり把握とかレオーネ様もなかなかオタク度が高いな。

「デビューしたてではないと思うけど…」

「出演作とか教えていただけませんか?」

私が見ていたアニメとかあるかも…と思ったのだけどいくつか上げられたタイトルは知らないものばかりだった。

「…なるほど、死亡時期のずれ(・・)ね」

「ですね」

前世の私が死亡した後にデビューした人かもしれないという結論になった。

もしかしたら晩年の記憶を思い出せないだけで八十歳まで長生きした可能性はあるが思い出せないという事はそういう事だろう。

という事は親より先に死んだ可能性が高そうだ。過労死するほど働かないだろうし、病死もないと思うし…事故死かな。

前世とはいえ自分の死亡原因を探るのは気分が落ち込む。

それよりも…。

「レオーネ様、血の騎士団(ブラッディ・ナイツ)という作品をご存じですか?」

思った以上にディープな話も出来そうなレオーネ様に前世で一推しだったアニメのタイトルを出す。なお原作は少女漫画です。

「ああ…確か見た覚えがあるわ、吸血鬼ものよね?」

「そうです!」

ああ、久しぶりに萌えトークが出来る!

いやいや待て待て。

レオーネ様の今の口ぶりだと知ってはいてもあまり好みではなかったかもしれない。

いきなりオタク全開のトークをすると今後は付き合ってくれなくなるかもだからセーブはしないと。

距離感大事!


レオーネ様とは好みが合致する事がわかりました。

上げた作品名の半分くらいはわかってくれました。

テンション上がって古い作品の話もしたが、さすがにそっちはわからなかったらしい。

これだけ好みが合うならサスケの中の人が出演していたという作品も見てみたかった。レオーネ様が見ていたのだから好みに合う可能性は高い。

「…ストーリーを教えましょうか?」

「聞きたいですけど…見る事が出来ないので我慢します」

あらすじ聞いて面白そうだったら見たくなるし、それで見られないと悔しさが増す。

私が知っていてレオーネ様が知らない作品も同じように語るのは避けた。手元に原作がないのがすごく残念。

あとヒロインの事が解決して心配事がなくなってから盛り上がりたい。

人がいない事もあり、オタトークが盛り上がってしまったので時間が経つのは早かった。辺りは大分暗くなり門限も間近だ。

「そろそろ帰らないといけないわね」

空を見上げたレオーネ様の言葉がお開きの合図となった。

「送りましょうか?」

いつもであれば時間をずらして帰るのだが…暗いと心配。

学園の敷地内だから暴漢とかでる事はないと思うけど。

「心配してくれているの?」

「友達ですから」

からかう響きの言葉に真顔で答える。

「……そうね」

「そうです」

やや間があってからレオーネ様が笑い、それに釣られて私も笑ってしまう。

「では今日は一緒に帰りましょうか?」

「いいんですか?」

「暗いと何かがでそうで怖いでしょ?偶々帰りに会って、一緒に帰る事になっても不自然ではないでしょう?」

「確かに」

女性一人で夜道を歩くより二人の方がまだ怖くないと、あまり親しくなくても顔見知りであれば一緒に帰る事はある。同じ寮に帰るのなら尚更。

誰かに訊ねられた時の口裏を合わせながら、二人で寮への道を辿った。


サスケからの音沙汰がないまま数日。

学園内には幽霊の噂が飛び交いだした。

ゲームではなかったイベント(うわさ)はサスケ達が立てたものに違いない。

パターンは色々とあるけれど、統一しているのは男子生徒の幽霊がでるというもの。

場所は図書室だったり美術室だったり音楽室だったり…などと統一性がない。

男子生徒の趣味も読書だったり絵を描く事だったりピアノだったりと様々。

死因も病死に自殺に他殺にバリエーションが豊富。

この学園の歴史は古いので、探せば条件に当てはまる者は何人かはでてくるため尾びれのついた具体的な噂が回りだす。

幽霊の正体は伯爵家の次男だ、いや侯爵家の五男に違いない。といった風に。

噂の発生源はサスケで間違いはないだろう。短期間にここまで流行らせるとかうちの使用人はやっぱり凄い。

噂を流す事で目撃者も増える。

本来であれば単なる見間違いで気にもしなかったものが噂のせいで幽霊へとすり替わる。

目撃者は噂の信憑性しんぴょうせいを高め、更に噂を煽っていく。

段々と幽霊の容姿が統一されていき…それはサスケを連想させる特徴へと収束していく。

サスケの容姿になる様にコントロールしてるって事だよね?

手並みが良すぎません?

オカルト系の話だったなら本物が創造されちゃうところですよ?

そして幽霊がサスケの姿になる頃にはヒロインの様子も可笑しくなっていった。

攻略キャラとのデートも控え、幽霊が出没するというポイントに何度も出向いているみたいだ。

特に夕方以降に出やすいという噂が立ってからは門限を過ぎて帰ってくる事も増えた。探しているらしい。

噂のせいで放課後に校内に残る者は減ってきたし…そろそろ頃合いかな?

サスケからの連絡はないが、いつ決行しても大丈夫な様に布石くらいは打って置いた方がいいでしょ。

「ユシル…最近帰りが遅いけど何かあった?」

今日もいつもと同じ様に門限を過ぎてから帰宅したヒロインに問いかける。

問いかけ自体は同室ならしても可笑しくはないだろう。

ヒロインは私から話しかけた事に動揺したらしく、一瞬取り繕うのが遅れる。

…私のこと普段はNPC扱いしてるもんね、自分から話しかけなければ私はその場でずっと待機しているとでも思ってるのでは?と不安になる。

「セルリア…ううん、なんでもないよ。大丈夫」

そういって儚げに微笑むヒロイン。

「でも…この頃ちょっと様子も変だよ?」

話しかけてくんなよ、邪魔だな。とか思ってそうな迷惑そうな表情に気づかないフリで更に続ける。

「幽霊騒ぎが起こってから…だよね?」

確信をつけば何も言わずにギュウッと拳を握る。

「もしかして…ユシルも興味あるの?」

「…え?」

予想だにしない返答にユシルは警戒を浮かべる。

「実は黙ってたんだけどさ…」

「な、なに…?」

促す声が硬い。

安心してください転生者(どうるい)ではあるけどライバルではないので。

攻略キャラに恋愛感情(そういった気持ち)はないので。

「私、怖い話とか好きなんだよね〜。

だから今回の幽霊の話とかワクワクしちゃって!」

前世ではオカルトも嗜んでました。

肝試しとかには行きたくないけど、遊園地のお化け屋敷とかなら平気。

自分で歩くタイプのものでは友人に「なんで平気なの?」とか言われた事もあるし。

漫画では神話をモチーフにしたものも多いので、ちょっと調べた事もある。

悪役が悪役じゃなかった。

むしろ善側の神様の方が酷いことしてた。

「でも一人で確かめに行くのは怖くてさ…」

たぶん、ヒロインの頭の中ではグルグルと問いが回っているはずだ。

ゲームにはないイベント(幽霊騒ぎ)の発生。

それが“カイ”に関係していそうなこと。

そしてNPC(セルリア)に話しかけられたこと。

本来なら繋がらないはずの点は転生者(ゲーム脳の持ち主)にとっては線となる。

「…ユシルが平気なら一緒に幽霊見に行かない?」

こちらが目論んだ通りの筋道を辿ったらしいヒロインは、決心した様にセルリア(イベント発生装置)に縋る。

「仕方ないなぁ、付き合ってあげる。親友(セルリア)の頼みだもんね?」

いつから親友になったのでしょうか?

それとヒロインのツンデレは可愛くない。

やっぱりツンデレはシア様が最高ですね!


ここでようやくサスケ=攻略キャラと確定します。

評価、ブクマありがとうございます!

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