表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/92

19 よそ行き仕様はちょっと怖い

歩く速度にイライラしそうになるので他の事を考えて気を紛らわそう。

サスケがいなかったら呼び出せばいいだけ。

そう、物事はポジティブに考えるべきだ。

例えば…そうだな。

レオーネ様はワザとゆっくり歩いてるんですよ!なぜかって?私とお話する時間を長くとる為ですよ!

ポジティブ妄想を実行に移すべくレオーネ様に話しかける。

「レオーネ様、使用人を褒める時ってどうすればいいんですか?」

「…急にどうしたの?」

私の中ではちゃんと流れのある問いだったのだがレオーネ様にとっては突然の問いかけ。

裏庭まではまだ時間がかかりそうだし、放課後なので生徒の数も少くなっており見かけない。

遠慮なくレオーネ様と会話が出来る状況だ。

今後の事も考えるとヒロインにはレオーネ様と会ってるとか情報がいかない方がいいしね。

クラスの噂にはヒロインは疎いし。ボッチですからね、教えてくれる人がいません。

私の場合は同じボッチですが、なかなかの情報通ですよ。

なぜならサスケが教えてくれますからね!

この頃はヒロインが探していた“カイ”という人物に注目が集まってるようです。

直接ヒロインに聞けないからか私に聞いてくるものもいたけど知らないと答えました。だって本当に知らないし。

まだサスケ=カイは確定じゃないし。

「実は先ほどレオーネ様に紹介する交換条件として褒める事になりまして」

「……頭を撫でて良くできました。と言えばよいのでは?」

それは犬の褒め方ですよレオーネ様。

本人はそれでも喜びそうだが、ちゃんと人扱いしてあげてください。

「そうね。相手の名前を呼んで、否定語を使わず、結果だけでなく過程も褒めること、嘘はつかずキチンと感謝していることを伝えること。…これくらいかしら」

「なるほど、ありがとうございます」

えーと名前を呼んで、結果だけじゃなく過程も褒めて。否定はせずに感謝を伝える。

思ったよりも注意点が多い。

サスケの満足がいく褒め方ができるかな?

頭の中で言葉を組み立て、それをレオーネ様に添削してもらったりしていれば裏庭につくまで早く感じた。

そしてサスケの姿はない。…逃げてないって信じてるからね。

「それで?ご自慢の使用人はどこにいるのかしら?」

レオーネ様も辺りを見回して訊ねてくる。言葉に棘を感じるのは演技ですよね?これからサスケにヒロインに対して嫌がらせという名の本命確認行為をさせる為の伏線ですよね?

先ほどまで和やかに話していたというのに落差が酷い。

「今お呼びします」

目線が冷ややかです。

レオーネ様の演技が上手すぎてメンタルにダメージが入ってしまう。

これでサスケが来なかったら泣くかもしれない。

「サスケ…」

メンタルが思いっきり声に影響し、思ってた以上の小声になった。

「お呼びですか、セルリア様」

でもサスケは現れてくれましたよ!

さっきと同じ様に木の上から葉っぱをまき散らして飛び降り片膝を付き待機の姿勢。おいおいいつもと態度が違うじゃないか、どうした?

「…この人が話していた使用人?」

忍者的な出現はわかっていても驚く。事前に説明していたとはいえレオーネ様は見るのも初めてだ。だから直ぐに平静を取り戻し演技を続けられるとか尊敬です。

「確かに身体能力は高いみたいね」

ジロジロと値踏みする様にサスケを見るがサスケは待機の姿勢を崩さない。

「はい!自慢です!」

うちの家族すごいんだぜ!パートツー!

「他にも色々と出来るんですよ!」

え~とデモンストレーションとして何をやらせたらいい?取ってこい?

いかん犬扱いが抜けなくなっている。

犬ではなく忍者ですよ。…手裏剣投げ?手裏剣はないだろうからナイフ投げ?あるかなナイフ?

「例えば…ひ、人を驚かせる事とかは出来まして?」

レオーネ様の震えた声に方向性が違っていたと知る。

そうだった、忍者としていかに優秀かを見せるのが目的じゃなかった。

「人を…ですか?」

サスケの声がいつもと違って冷たい。口調もいつもと違うね、よそ行き?

「例えばどなたをご希望ですか?レオーネ・ナヅ・ケオグジヤ侯爵令嬢様」

ようやく顔を上げたサスケはレオーネ様の視線をとらえて質問する。

なんとなく空気が冷えている感じがするのはサスケが原因だろうか?

レオーネ様は一歩、足を引くけれどそれでも気丈に答えてみせる。

「想像は付いているのでなくて?」

「………」

挑戦的な言葉にサスケは答えず先を促す。

「ユシル・ミラ・コレンス男爵令嬢を少しだけ驚かせてほしいの…」

恐怖なのか怒りなのか、恥辱なのか…レオーネ様は肩と声を震わせて言い切る。え?泣いてません?もしかして本当にサスケが怖い?

「サスケ、意地悪は止めて」

確かにいつもより怖いけど泣くほどかな?

レオーネ様をとりあえず庇うように前に立ち、素に戻れと促す。そうすれば怖さも消えると思う。

はぁ…とため息を吐いたサスケは立ち上がる。

「具体的にどんな事をして欲しいんですか?」

完全には素に戻ってないが、それでも無駄に威圧をするのは止めて口調も軽いものになる。

「少し…少し驚かせてくれればいいの。…そうね、幽霊のフリをして目の前に現れるだけでいいわ」

「また面倒な注文ですね」

まるで縋る様にレオーネ様が私の肩に手を置く。その手が震えていて…もしかして私はいま頼られているのでは!?

え?なんのフラグが立ったの?

レオーネ様のルートなんてあったっけ?

いや、落ち着け、レオーネ様のルートはない。そしてコレはただの演技だ。フラグは立たないから落ち着こう。

「出来そうにない?」

「出来ますよ」

出来るんかい!

私が訊ねれば即答するサスケ。

「じゃあ…」

言葉の途中でレオーネ様の方を見る。やだ涙目とかドキンとしちゃう!

「今回だけはしてあげて」

「それは…命令でしょうか?セルリア様」

再び他人行儀な口調になるサスケにそれでもいいと告げれば。

「ダメ!」

まさかのレオーネ様から待ったがかかる。

え?なんでせっかく上手くいきそうだったのに止めるの?

「それはダメよ。撤回するわ、何もしなくていい」

フルフルと頭を振るレオーネ様は私の手をとって謝罪までしてくる。え?ほんとなんで?

「申し訳ない事をしたわセルリア様、今の発言は忘れてくださると嬉しいのだけど…」

「え?でもレオーネ様?」

計画はどうするのかと問いたいが今はサスケがいるので出来ない。

後で別の作戦を考えるという事ですか?

「あなたにも、あなたの大切な主に対して無礼な真似をしたわ」

深々と頭を下げるレオーネ様。

前世は同じ日本人なので頭を下げたくなる時があるのはわかる。しかし前世ほど気軽に下げてはいけない。この国に会釈の文化はない。

え?なにこの空気?

私どうすればいいの?

レオーネ様が何を考えているのか、どう収集を付ければいいのかわからずオロオロするしか出来ない私。

仕切り直せばいい?それとも一度解散するべき?

どうするべきか悩んでサスケに助けを求めてしまう。あれ?私まで涙目になってない?

動揺している私が面白かったのか、ふいにサスケの表情が和らいだ。

「いいっすよ」

と思えば、いつもの口調にいつもの空気に戻ったサスケが軽くいった。

「あのアバズレを少し驚かすくらいはやってもいいっす」

レオーネ様の前でアバズレ呼ばわりはさすがに止めて欲しい。

「レオーネ様がすこ~しだけあのアバズレを懲らしめたい気持ちもわかるっすし」

急に砕けた態度に不安になったのは私だけではなくレオーネ様も一緒らしく、きょとんとした顔でサスケを見ている。

「でも…嫌なのでしょう?」

だから威圧してたんですよね?

レオーネ様の問いかけに一緒になって頷く。

「俺が嫌だったのはセルリア様がレオーネ様の命令で俺に命令する事っす」

「いや、私レオーネ様に命令されてないし」

「同じ事っすよ」

「同じ事よ」

否定するが同時に二人揃って否定されてしまう。

「俺はセルリア様の命令に逆らいたくないので、セルリア様からの命令なら従うっす。

…でもそれをしたらレオーネ様は味を占めて何度も同じ事をするかも知れないっすよね?」

レオーネ様はないと思うけど、メンタル弱いと勘違いする事はあるかも。自分の力だって。

なんとなくサスケの言いたい事がわかってきた。

「でもレオーネ様は自分でそれに気付いてセルリア様を止めたっす。…ちゃんと友達だから止めたんすよね?」

「セルリア様がまだ私を友達と思ってくださるのなら…ですけどね」

「え?友達ですよ?」

そう思ってもいいのなら。むしろこちらが友達になってほしいと頼むべき立場では?

「と、いうわけっす」

「なるほど、そういうわけね」

なぜか二人で分かり合いうんうんと頷くレオーネ様とサスケ。

「セルリア様の初めてのお友達のお願いなら聞いてもいいっす。むしろ面白そうっす!

あのアバズレには俺もイラついてたっすから!」

ヒロインへの好感度はむしろマイナスに振り切っていそうなんですけど。

予想通りにヒロインの本命がサスケならここからの巻き返しは辛そうだ。

あとレオーネ様が初めての友達じゃないです。

学園内では初めてかもしれないけど実家に帰れば近所(遠く離れた領地)の貴族とかに友達いるし。

年が近い子がいないから通う時期が違うだけでちゃんと友達だもん!それに…。

「サスケも友達でしょ?」

主人と使用人という垣根はあるけどさ、子供の時から一緒にいるし忍者修行を遊びに含めれば一番一緒に遊んだ仲だ。

「光栄っすね」

サスケの満面の笑みとか初めてみた。

「…王道パターンね」

それを見たレオーネ様がポツリと呟いていた。


ブクマありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ