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18 放課後裏庭には忍者が出没します

紅茶は淹れられなくても忍者は優秀です。

レオーネ様との作戦会議の翌日。

期待に応える為にさっそくサスケを呼び出す。

今日はずっと計画が上手くいくのかソワソワしていたので放課後までが長かった。しかもこんな時に限って人がなかなかいなくならないので無駄にイライラした。

「サスケ」

「お呼びっすか?」

用がなければ名前は呼ばない。

そんな薄情な事を思いつつ忍者の様に目の前に出現するサスケ。いつもの事だがわかっていてもビックリする。慣れない。

「お願いがあるんだけど…」

「命令じゃないんすか?」

なんでそこでガッカリするんだ。

しかし改めて意識してみるとサスケの顔はかなり整っている部類に入る。性格が残念なので出会った当初はともかく今はあんまり意識してなかった。しかも声もいいよね、私の好みの声だ。

声優として活躍してたらファンになってたかも。とはいっても内容が好みでないアニメに出演してたら見ない程度だが。CDとか出しててもお気に入りのキャラのキャラソンとかじゃない限り買わない。

意識してエンディングクレジットは見る。あ、やっぱりアレそうだったんだ。くらいは見る。もしくはアレそうだったの?となるかもしれない。…一般的なファンとは違うかもしれない。ライトすぎる。

…でも。

確かに続編の新規キャラでもおかしくないだけのスペックはあるな。忍者だし。

「うん、お願い」

「いまいち気乗りしないっすけど、なんすか?」

ちょっとそこで犬気質を発揮するの止めてくれない?思わず取ってこいをしたくなるから。つい木の枝落ちてないかな?って探しちゃうから。

いったいどういった役どころでの出演なのかな?

最初からセルリアの付き人として出てたならヒロインも何か言ってきたと思うのだけど。…セルリアの家の使用人に“カイ”って人いる?とか。…さすがにそこまで露骨な聞き方はしないか。

やっぱり違うのかな?

「わ、私の…と…とも…」

「もしかして告白っすか!?お願いなら聞けませんが命令ならOKすよ!」

「違う!」

なんでそうなった?

しかも命令じゃないとダメなのか。なんで告白もしてない気のない人物からフラれなければならないんだ。

「そうじゃなくて…と、友達のレオーネ様に会って欲しいの」

いった。ついに。

レオーネ様を友達と呼称してもいい日が来るなんて思わなかったよ!

「え~、嫌っすよ」

うん、言うと思った。けどもう少し考えて。感動に浸る時間くらいくれよ。

「なんで?会うくらいいいじゃん。それにレオーネ様を間近で見られるチャンスだよ?」

「レオーネ様は確かに美人っすけど好みとは違うんで」

まぁ人の好みは色々だしな、高嶺の花過ぎて憧れで止まる場合もあるし。美人とは認めているようなので美的感覚はまともだ。

「会ってくれてもいいじゃん!ケチ!」

「命令ならいくらでも従いますよセルリア様」

命令にしちゃうとお姉様に報告がいくから嫌なんだよ、命令しなくても報告する可能性の方が高いけど。

セルリアはかなり雑…いやいやおおらかに育てられているが同時に家族は過保護だ。それは私に対してだけでなく自分より下のもの全てに向けて。

例えばお父様ならお母様と子供たちに対して、お母様なら子供たちに対して。

お姉様たちなら自分より下の妹に対してとなるので、末っ子である私はそういった意味では一番大事にされてる。…出来の悪い子ほど可愛いともいうしね、あ、自分でいってて自分でへこんでしまう。

プライバシー保護法とかない世界なので、自分の情報は隠しておきたい事まで忍者集団によって筒抜けだと思ってもいい。

…まさかレオーネ様との前世話までは盗聴してないよね?

あ、なんか急に不安になってきた。

「セルリア様がレオーネ様と仲良くしてるのは知ってるっすけど、そこで何で俺に会わせる話になるんすか?」

最もな疑問ですね、お姉様に紹介という流れの方がまだ自然だ。既に紹介している様なものだけど。私との出会いの場に同席していたのだから。

「うちの使用人は凄いという自慢をしていたらレオーネ様が見たいって…」

少し拗ねた様に言うのがコツだと教わった。理由はわからん。

「自慢…してたんすか?」

「した」

嘘だ、してない。

むしろケオグジヤ侯爵家の使用人を見習えばいいと思った。

諜報とか緊急時の護衛とか、そっち方面では忍者かな?と思うほどに優秀だけど生活面ではケオグジヤ侯爵家の使用人の方が優秀だ。そして日常ではそちらの方が重宝される。

特にレオーネ様付きの侍女は紅茶を淹れるのが上手い。茶葉の差だと思っていたが違った。

先日私が持っていた紅茶を淹れてもらったのだが見違えるほどの美味しさだった。あと茶菓子が大変美味しかった。

サスケが紅茶を淹れてくれた事はないし、たぶん私と同レベルの味にしかならない。

他に得意分野があるのはいいが、大事にする基本がうちは他とずれている。…家で飲む紅茶は十分美味しいし、そこまで拘りはないがどうせなら美味しい紅茶が飲みたい。そして美味しい茶菓子が食べたい。

あのケーキは本当に美味しかった。売り物ならサスケに買いに行かせるのだが侯爵家のコックが作ったそうなので諦めるよりない。

レシピが欲しいといったら教えてくれるかな?

あ、でもレシピがあっても再現できるかわからないか。

レシピを手に入れるだけならうちの忍者集団がなんとかしそうだが…。

「………」

何かを考え込んでる風のサスケはもう一押しで頷きそうだ。ただの希望です。

追撃した方がいいのか迷っていると自分から口を開いてくれる。

「例えばどういうところっすか?」

忍者なところです。

頭の中で即答するが、この世界で忍者という職業は聞いた事がない。

近いところだと暗殺者?いや忍者は諜報がメインだ、暗殺もするかもしれないが。

となるとスパイ?イメージが多少異なるけど間違ってはいまい。うん、スパイであってる。

「神出鬼没でいつの間にか欲しい情報を集めているところとか、身体能力が異常に高いところとか」

一言でいうのはどうだろうか?と思ったのでイメージを羅列する。改めてほぼ全ての使用人が忍者技術を持っているのってどうなのか?

あれ?まって。

料理長のおじいちゃんや庭師のおじさんも忍者なの?

実家にいるよくお菓子をくれた人たちを思い浮かべる。そしてお菓子を貰った事は必ずバレて怒られた。料理長のおじいちゃんと庭師のおじさんゴメンナサイ、物欲しそうな顔をして。思わずあげたくなるほど哀れに思ったんですね。そういやサスケはくれた事なかった。逆に太ると取られた事はある。

思い出したら腹立ってきた。食い物の恨みは怖い。あのクッキー美味しそうだったのに!

「照れるっす」

サスケのアピールポイントと私の褒めポイントが合致した瞬間だ。

言葉通りに少しだけ顔を赤くして頭を掻くサスケを不覚にも可愛いと思ってしまう。滅多に見られない表情だ。

「美味しい紅茶は淹れられなくても、すっごく頼りになると言ったの」

「なんすか、俺だって美味しい紅茶くらい淹れる事ができるっすよ」

しまった、つい願望がもれ出てしまった。

先ほどまで機嫌が良かったのに急に不機嫌になる。貶されたせい?別に貶してないよ、人には向き不向きというものがある。

「そう、じゃあ今度淹れてくれる?」

「俺の紅茶は高いっすよ」

「じゃあいいや」

「なんでっすか!諦めが早いっすよ!もっと粘ってください、いっそ命令してくれれば淹れるっすよ!」

キャンキャンと吠える小型犬の様にむきになるサスケにどれだけ命令されたいんだ。そして命令されなければやはり紅茶一つ淹れるつもりはないのかとイラっとした。

「今は紅茶よりもレオーネ様に紹介したいの!それでうちのサスケはこんなに凄い事が出来るって自慢したいの!」

子供の喧嘩かな?

うちの家族凄いんだぞ!って自慢する小学生かな?

レオーネ様が考えてくれた作戦は吹っ飛んだ。もう思い出せない。

本来は次に何をするんだったか。

サスケの反応によって何パターンか教えてもらったんだけどな、実行者がポンコツだとせっかくのブレーンが台無しだ。

「自慢…したいんすか?」

おや?

やはり命令するしかないのかと思ったのだけど…これは良い流れでは?

再び照れている様子を見せるので「したい!」と強く力説する。

「……じゃあ、ちょっとだけですよ」

よし!

「本当に?嘘じゃない?」

ようやく引き出せた一言を撤回させない様に畳みかける。

「レオーネ様の前で自慢してくれるんですよね?」

「うん」

頑張る!

「じゃあ…ちょっとだけならいいっす」

なんか反対に言質を取られた気がする。

「その後でいっぱい褒めてくれるっすよね?」

犬かな?

「わかった、褒める」

〇〇ゴロウさんのように「よ~しよしよし」と褒めて撫でまくればいいのかな?

顔がいいとはいえ成人男子を?ちょっとキツくない?耳と尻尾がついてさえいれば抵抗感も薄れたのに。

後でどうやって褒めればいいのかレオーネ様に聞こう。

使用人を多く抱える侯爵家の令嬢なら使用人の褒め方にも精通しているはずだ。

「じゃあ呼んでくるね」

「え?今からっすか?」

「善は急げ!」

後回しにしてサスケの気が変わると困る。

待っててね~と言いおいて、ダッシュでレオーネ様との待ち合わせ場所の自習室に急ぐ。

こことは結構距離があるから時間はどうしても掛かってしまう。

戻ってくるまでにいなかったら…いや、それなら再度呼び出せばいいだけだが呼び出しても来なかったらどうしよう。

変人認定だけは避けたい。

…その時は命令をしてでも呼び出そう。


学園に入学してからは忍者修行はしていない。

体育の授業は一般的な令嬢のレベルに合わせているので忍者修行をしてた私には楽勝だった。

つまりは…体がなまっている。

実家にいたころは何でもなかった距離が遠く、途中から走るのは諦めた。うう、脇腹が痛い。

あと走るのははしたないと注意を受けそうだったので止めた。うっかり教師に見つかって説教でも始まったら大変だ。

それでも行きは早歩きくらいのペースだったのだが、戻りはレオーネ様のペースに合わせたのでゆっくりだ。

今までレオーネ様と会うのはレオーネ様の部屋が多かった。歩く機会がなかったので知らなかった。

緊急時でもない限り令嬢は優雅さを求められる。

つまり…。


淑女(レオーネ様)って歩くの遅い!



評価、ブクマありがとうございます!

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