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15 芸術祭はイベントの宝庫です

15話になります。

よろしくお願いします。

芸術祭当日。

ヒロインと違い特にデートの予定も入っておらずボッチを満喫中です。

クラスメイトからの視線は若干優しさを増したものの友達と呼べる人はいない為です。軽い会話が出来る様になったのは進歩だと信じてる。

合唱メンバーではないので拘束時間も特にない。

教室に絵さえ飾ってしまえば後はフリー。…時間の持てあまし方が半端ない。

日本の文化祭と違ってお化け屋敷とか出店とかないし。ただひたすらに各教室に飾られている絵を見るか講堂で生徒の合唱、準備の合間に行われる伴奏も担当しているオーケストラによる音楽鑑賞をするかだ。

オーケストラの負担が半端ない。

ぶっ続けで何曲も弾く事になるので合唱は三部構成となっており、それぞれ別のオーケストラが担当する。

当日のデート時間を確保する為か攻略キャラも合唱ではなく絵画を選択したようなので、ちょっと覗いた限りだと教室から女子生徒が溢れていた。

好きな人(憧れ含む)がどんな絵を描いたかとか気になるよね。

作者名は書かれないスタイルなのだが、みんなはお目当の作品をどうやって見分けているのだろう?

人が集まってる作品かなと目星はつくが人が邪魔でよく見られない。よし諦めよう。

お姉様やレオーネ様が絵を描かれているならまだしも二人とも合唱メンバーなので目当ての絵はない。よって暇。

お姉様とレオーネ様の出番が近くなったら講堂に見に行く予定だけど。あと自分のクラスの出番の時も。

幸いみんなの出番は三部構成の真ん中の時間帯に集中しているので鑑賞するのに都合がいい。

演奏中の出入りは制限されていないが、用事がない以上はやはり避けるべき。

出演時間にはまだ時間があるので、席の確保はサスケに任せた。

新入社員に花見の席取りを前日からさせているかの様な罪悪感はあります。

なんか頼むと嬉しそうにするからいいんです。

だってお姉様とレオーネ様が同じ部にでるんだよ?そりゃ人気が集中しちゃうじゃん。入場制限かかるかもしれないじゃん!

私が見に行かなかったらお姉様が悲しむし!

それはサスケだって嫌なはずだ。

自己弁護をしながら一通り攻略キャラのいるクラスは覗いたので次は自分の教室に。

盛況といえるほどではないが、そこそこの人数が教室内にいた。

保護者とか外からの部外者の参加は許されないが、学園に連れてきた使用人の参加は許されているので生徒には見えない人たちも一定数いる。自分の主の作品を見に来たのかな?

人数が少ないからか、スペースが狭いからか人の流れというべきものもなく空いているところから作品を見ていく。

端の方に飾られているクオリティの低い自分の絵からは目を反らしつつ他の人の絵を順に見ていく。

やはり見応えのある作品に人は集まるため、クオリティの差で配置は適度に離されている。とはいってもメインはあるけどね。そしてそこに人が集まっているから後回しだな。

私よりは上手いがやはり素人が描いた作品だな、と思わせる絵の中で突出して上手な作品も混じっているのでなかなか侮れない。

作品のタイトルは書かれているけれど作者の名前は書かれていないので誰が描いたのかはわからない様になっている。

匿名が許されるとかありがたい。

全校生徒に私の絵のヤバさが伝わらないとか本当にありがとうございます。

しかしそのせいでヒロインが描いた絵もわからなかった。

提出する絵を結局見せてくれなかったんだよね、私のはバッチリと見て「個性的ね」という感想までもらしたというのに…。

私の絵のタイトルは捻りも何もなく花瓶です。

抽象画ではありません。ちゃんと花瓶だとわかる絵を描きました。

立体感とかないので美術の成績的には最低評価で終わりそうな出来ですけど。

美術専攻ではないので構いません。

刺繍の提出でもありなら人並みのものが出来たというのに!

ザっと見た限り攻略キャラの絵は王太子のものが何点かあった。…ただタイトル的にも絵的にもヒロインのものではなさそう。

タッチも全然違うのが数点あるから単にテーマが被っただけだと思われる。

戴冠式の様子を描かれた作品に「未来」というタイトルが描かれてますからね、そしてプロでも通用するのでは?というレベル。

ぜひお姉様をモデルに描いてほしい。

作者が誰だかわかればお願いしたいレベルだ。

…ヒロインは無難に風景画でも描いたのだろうか?

そう判断してお姉様たちの出演までまだ時間があるが講堂に向かおうと思った時だ。

廊下側、ドア近くに飾られた小さな絵に気付き足を止める。

写真サイズの小さな絵は完成したものというよりは途中っぽさがあった。

線画といえばそう見えるのだが、下書き段階の様にも見える。

人物画という事はわかるし、男性を描いたという事もわかる。

胸より上、顔を中心に描かれたその絵がなぜ気になるのかというと…知っている人物に似ている気がしたからだ。

ただマジマジと見ると違う気もする。

タイトルは…「運命の人」

何かを暗示させるタイトルだ。


「…まさか、ね」


胸に湧いた疑念を振り払うように呟く。

ああ、ここにスマホがあればとりあえず写メっておくのに!

そしてレオーネ様に報告して一緒に検証してもらうのに!

芸術祭は一日限りだ。今日が終われば直ぐに片付けられてしまう。

レオーネ様が例えこの教室を訪れても、この絵をスルーする可能性は高い。それくらい存在感は薄い。いや、他がカラフルに彩色されているから目立つといえば目立つけど!

…レオーネ様の出番の前か後に伝える方法を考えよう。

まずは講堂に向かおうと後ろ髪を引かれながら教室を出た。


まさかの最前列!

薄暗い講堂に入り席取りをしているサスケの姿を探す。

時間がまだ早いというのに席はほぼ埋まっていた。私と同じく使用人に席取りをさせているパターンが多そうだが。

普段は出入り口がいくつもあるのだが音が逃げないようにか今は一か所しか開放されていない。

開けっ放しのそこからは中の音楽が漏れている。

ちょうどインターバルの時間なのか人の声ではなく弦楽器の音が響いていた。

卒業パーティーもこの講堂で開かれるので広さはかなりのもの。

ステージに見立てた上座の左右にはオーケストラが陣取り、真ん中で各クラスの発表が行われる。

そこから少し距離を離して席が用意されている。

パイプ椅子とかないから長椅子が等間隔で並んでいるだけだけど。

その最前列ど真ん中にサスケはいた。

なんでそんな目立つ位置にいるんだ。ボッチには辛い位置取りじゃないか、嫌がらせ?

もっと後ろの方の端っこで良かったんですよ?

「あ、セルリア様」

私の気配に気づき振り返ったサスケは褒めてといわんばかりの表情。

「ここいい席っしょ?グレース様のお顔もバッチリ見えますよ!」

これは純度100%の善意だ。

確信して溜息を吐く。

陽キャと陰キャの常識は違うのだと考慮するべきだった。もっと具体的に席の指定をしておくべきだった。

今さら場所を変えたいとは言い出せず、確保された席に座る。

人気席だけに私が座ればサスケのスペースはなくなる。さすがに一人で二座席分は確保できない。命令したなら確保しただろうけど、どうせボッチなので二人分もいらないと思ったんですよ。でも自分サスケの分は確保してても良かったんだよ?一緒に鑑賞してグレースお姉様にきゃーきゃー言いたかった。あと陰キャにここに一人は辛い。

出来れば残っていて欲しかったが、周りはみんな座っているので立っていると目立つ。場所もあるしサスケの背がなかなかに高い事にも由来する。

「グレース様の出番が終わるまではいますか?」

「…うん」

今すぐ帰りたいと思いつつ頷く。

この前は私の思考を読むほどの有能ぶりを発揮したくせに今の私の心情は汲んでくれないらしい。

「なら後でまた来るっす!」

一応、場所が場所なので私もサスケも小声です。

オーケストラによる演奏も続いているので自然に顔が近づくが直ぐに離れるし周りも似たような状態。

確認を取った後に他の人の鑑賞の邪魔にならない様にと後ろに下がるサスケから視線を前へと戻す。

私と同じくボッチなのは席取りをしている使用人が多く、友達や恋人と来ている人は周りを見るよりも相方とのお喋りの方が大事らしく…思ったよりかは目立たないかも。

開き直ってこの場を楽しむことにした。

生オーケストラをこんなに近くで鑑賞できる機会はなかなかない。というよりも初めてだ。

体に音が響く感じとか前世ではライブとかにも行った覚えもないし…これは楽しまないと損ですね?

グレースお姉様の出番まではあとどれくらいだったけ?

確かレオーネ様の出番の方が早いんだよね。あ、そうだレオーネ様に伝えなくてはいけない事もあった。

ああ、でもお姉様でもわかるかな?

解散後に少し付き合ってもらおうかな?

頭の中には予定と期待と感動がゴチャゴチャとひしめき合っていた。

最前列という場所にボッチという事もあり周囲に視線を向ければ羞恥心に襲われる可能性があるので目の前の非日常に意欲的に集中していたせいもある。

だから。


「カイ様!?」


講堂中に響く大声を聞いた時に初めて気づいた。

いつのまにかヒロインが来ていたのだと。


ブクマ、評価ありがとうございます!

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