あなたさえいなければ
あなたさえいなければ、私は虚空を飛び続ける鳥でいられた。
甘い花の蜜を吸う蝶でいられた。花から花へと飛び移り。
けれど私はある日あなたに出逢ってしまった。
囚われた。
心にあなたがいて、そのどうしようもない重さにもがいてあがいて、あがいて諦めて白旗を挙げた。
心重く苦しくて、恋の華やぎとは遠く思えるのに、それはまがうかたなき恋だった。
こんな屈辱を連れてくる恋もあるのだと思い知らされた。
どうしてくれるの。
満タンの絶望は微量の希望を連れてくる。
あなたが笑えば世界は晴れて、あなたが俯けば世界は曇った。
染め上げられた世界の責任をあなたはどうとってくれるの。
あなたさえ、いなければ。