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モテキのお約束(3)女神官の誘惑

「ふう~。疲れた~睡魔が~」


 サイトウは泥のように眠った。添い寝をしていたジャスティは、朝が明ける頃に部屋に帰って行った。サイトウは夜明けの薄暗い窓を薄目で見る。


(実にいい気持ちだ……朝方のこういう時間は最高……うっ……)

 サイトウは違和感を感じた。下の方に誰かがいる。そっと毛布をめくる。

「んんん……サイトウさん、お目覚めですか?」


 そこには露わな姿の女神官が。

「と、ちょっと、ルミイさん、一体、何をして……うっ……」

「ほほほ……サイトウさん、何って、神のご加護による浄化ですわ」

「こ、これが……浄化?」

「そう浄化です。どうやら、不浄がサイトウさんの身にこびりついています。今晩、きっと2匹のサキュバスが現れたのでしょう」

「サ、サキュバス?」


 いや、それは絶対ない。昨晩の相手は公女マルガリータに女戦士ジャスティである。昼間の清楚な涼やかな目の女神官が淫らな光を宿している。


「サイトウさんはじっとしていてください。今から浄化の儀式です。清らかな神官による儀式ですわ」

「ぎ、儀式?」

「この儀式をすると、あなたは私の思い人、信仰のパートナーとなるのです」

「信仰のパートナー?」

「はい。女神官が愛し、身を捧げる対象ですわ」


 くすくすと悪戯っぽく笑うルミィ。昼間の清楚な感じとは違う。まるで小悪魔のような仕草であるが、それがたまらなく可愛い。

「女神官って、身を捧げるのは信仰する神様に対してじゃないの?」

「違いますわ。女神官は神に遣わされた勇者様に捧げるのです。さあ、わたしと契約を」

 ルミィは目を閉じた。その誘惑に抗えないサイトウ。


「ルミィさん」

「うれしいですわ、サイトウ様」

 サイトウは女神官ルミィと契約した。信仰のパートナー契約である。まあ、下世話に言うと彼氏と彼女の関係である。


 ルミィからもまだ2人の関係は公にしないでと言われて、サイトウは承知した。先ほど、婚約と告白を承諾したことを忘れてしまっている。


「それでリッチ退治は全員でいくのか?」

 朝ご飯を食べながら対面で、あきれたように野菜スープを飲んでいるエルフの少女。

サイトウの両脇にはお姫様と女神官。そして後ろから抱き着いているのは女戦士。じゃれあいながら、朝食を口へと運んでもらっている。


 何しろ、マルガリータ姫とは結婚の約束をし、女戦士ジャスティの告白を受け入れて恋人同士。女神官ルミィとは信仰のパートナーとなった。立派な3つ股であるが、それぞれの女の子には、まだ秘密にしてと言われているから、現在のところはサイトウにとっては実に都合の良い展開になっている。サイトウの世話を争いながらも、3人とも自分こそが1番だと思っている。


 こんなハーレム展開を純粋に楽しんでいるサイトウ。3つ股修羅場がどうなるか、恋愛経験が全くないサイトウには見当もつかなかった。だから、言葉もすごく軽くなる。

「ああ……まあ、俺が行けば楽勝だからね……彼女らを連れて行っても問題ないだろ」

「……そういうこと」

 エルフの少女の目は実に冷ややかだ。昨晩のサイトウのクズな行動のことを知っているかのようだ。いや、現場を見なくても、今のこの状況だと誰でも推察できるであろう。


「ジゼルちゃんはどうする?」

 そうサイトウは聞いた。このエルフの少女は来ないだろうとサイトウは思っていた。しかし、答えは意外であった。

「わたしも行く……お主がどうなるか興味が出た……」

「興味?」

「そう」

 そう言ってスープを飲み干す。興味が出たと言っても、サイトウにまとわりつく雌猫たちとは、全く違う視点からだろう。ジゼルの目に宿す色あいはサイトウにまとわりつく3人の女の子たちとは違う。


「はい、あ~ん、サイトウ様」

 スープをスプーンですくってサイトウに食べさせようとする公女。女神官はパンをちぎってはサイトウの口に放り込む。女戦士は後ろからサイトウの後頭部に豊かな双丘をぐいぐいと押し付ける。

「サイトウは勇者だから、ハーレムは許されるかもしれない。だけど、忠告する……」

 そうエルフの少女はサイトウに小さな声で言った。


「女は3人までにしておけ……」

「いや、3人って……」

「遊びならそれなりに付き合えるだろう。だが、将来を共にするとなると結局は1人だ。3人の中から選ぶのならまだできる。それ以上だと収拾できたためしがない」

「一人と言ってもねえ……。選べないよ。みんな可愛いし……」

「はあ……。優柔不断な男の運命は決まっている」

「え、運命って……ジゼルちゃん?」

 ジゼルは黙って離れていてしまった。しばらくその姿を見ていたサイトウであったが、またまたグイグイと押し付けられる両サイドの圧力に、サイトウは考えるのを止めた。もはやどうでもいい。この幸せを永遠に……と快楽に身を沈めたのであった。




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