7
クレアが布や糸を選んでいるのを見ながら、
「マリウス、私の事をなんと説明したんだ?
すぐ怒る怖い人と思われているじゃないか?」
「いや、クレアは貴族は、気に入らないと殺すとか、金を搾り取るとか思ってるらしくてな・・・ 。じい様は、そんな事はしないと伝えたんだが、伝わってなかったようだな。」
「はぁー。まぁいい。それより、マリウスお前
クレアさんと婚約するか?」
「はぁ?なんでそんな話になる?」
「いずれ王家にもクレアさんのことは伝わるだろう。その時に、彼女を守るためだ。彼女が望んでいなくても、王家は絶対逃がさない。クレアさんがいるだけで国が栄えるなら、なんとしても、囲いこもうとするだろう。閉じ込めてでも、この国に縛りつけるだろう。お前と婚約していれば、無理矢理はできないだろう?まぁ、王命を出されると困るが。」
「だが、彼女の気持ちはどうなる?」
「話して聞くしかないな。」
「わかった。彼女がいいなら、俺は構わない。」
「じゃあ、彼女と話そうか。ロンド、ルークここでの話しは、口外するな!いいな!」
「はっ。」
「はい。」
楽しそうに布や糸を選んでいる彼女に話しかける。
「クレアさん、布とか、気にいったかな?」
「はい!とても質がよくて手触りも最高です!
糸もたくさん色があって、選ぶのに迷ったけど、決まりました。」
「そうか。では、選んだ布と糸以外の残りの布などは、クレアさん貰ってくれないか?その布を使って、マリウスに何か作ってあげてほしい。」
「えっ?マリウスさんに作る?何を?えっ?」マリウスさんを見ると
「楽しみにしている。」
と言われて余計にアワアワしてしまいます。
「ところでクレアさん、話があるのだが、いいかい?」
「なんでしょう?」
「クレアさんのその瞳の事なんだ。」
「あっ!気持ち悪いですよね?ごめんなさい。あの、もう会う事も無いと思うので、殺さないで!
マリウスさんどうしよう?私のこの瞳のせいで、マリウスさんが勘当されたら、私、私・・」
ボロボロ泣いてしまいます。
孤児院にいる時は、イジメられました。
でも、気味悪がる人もいるけれど、多くの街の人達は、受け入れてくれてました。意地悪されることがなかったので、忘れてました。
どうしよう。涙が止まりませんが、ここを出ないと・・
「ごっ、ごめん・・なひゃい。かえ・・・る。
ごめ・・ん・・」
立ち上がって出て行こうとすると、
「クレア、大丈夫だ。」
マリウスさんが、手を掴みます。
「でも・・うっ、うっ。」
「大丈夫だから、落ち着け。話を聞いてくれ。」
膝に乗せて、背中をポンポンしてくれます。
しばらくして、落ち着いてくると、恥ずかしくて顔をあげられません。
「クレアさん、落ち着いたかな?泣かせるつもりじゃなかったんだ。その瞳で嫌な思いをしたんだね。配慮が足りなかった。すまない。」
「いえ、私も泣いてしまって、ごめんなさい。マリウスさん、下ろして。」
マリウスさんの隣に下ろしてくれました。
「話して大丈夫かな?」
「はい。」
「君の瞳は、2色はいってるね?今では、王家と我が公爵家にしか伝わってないんだが、言い伝えがあってね。2色の瞳を持つ者は女神の加護を受けて、その者がいる国は栄えると。女神の加護がどのようなものかはわからない。何か心当たりがあるかい?」
「いえ、特にはないです。」
「そうか。まぁ加護があるないはともかく、クレアさんのことが王家に伝わると、君は、確実に王家に狙われる。王家に入りたいなら構わないが・・クレアさんは、王家に入りたいかい?」
「いえ、私は孤児院で育ったので、無理です。入りたいとも思いません。」
「そうか、では、マリウスと婚約しないか?」「は?婚約?なんでマリウスさん?」
「君は確実に王家に狙われる。だが、マリウスの婚約者なら、強引な事はできないだろう。マリウスは公爵家の次男だからな。」
「うーん。王家で籠の鳥になるか、マリウスさんと婚約かってことですかー。マリウスさんは、どうなんですか?公爵家なら婚約者がいてもおかしくないだろうし、仮にいなくても、こんなお子様が婚約者だなんてイヤじゃないですか?私
12歳ですよ。」
「俺に婚約者はいないからな。12歳差なんて、貴族じゃよくある差だから気にするな。クレアがいいなら、俺は構わない。」
頭をなでてくる。
「そうなんだ。で、婚約者って何するの?」
「さぁ、何するんだろうな?じい様、何すればいいんだ?」
「マリウス、お前は・・・。まあ、2人で出かけたりすればいいんじゃないか?お互いに想いあってるとおもわせれば、無理矢理引き離そうとはせんだろう。」
「そうですか。でも、私、孤児院出身なので、公爵家も無理ですよね?」
「いや、女神の加護を持つ者は身分関係ないから、大丈夫だ。」
「そうですか。加護もちかわかりませんが、王家なんて関わりたくないです。お言葉に甘えて
マリウスさん、お願いしていいですか?でも、他に好きな人ができたら、教えて下さいね。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。」
「あぁ。」
「じゃあ、クレアさんは、マリウスの婚約者でいいね?多分、王家だけじゃなく他の貴族達も、クレアさんを手に入れようとしてくるだろう。マリウスはもちろんだが、ロンドもルークも、クレアさんを守ってくれ!いいな?」
「はっ。」
「はい。」