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学校帰り、信号待ちしていた私は、後ろから誰かに押され、車道に飛び出し車に・・・
気がついたら、
「おめでとうございます。男の子と女の子の双子の赤ちゃんですよ。」
って、赤ちゃん⁈
もしや、物語でよくある転生?
「双子なんて不吉だわ。男の子は跡取りだから、女の子は、捨ててきなさい。この事は、旦那様には内緒よ。さあ、旦那様が来る前に早く!」
って、産まれてすぐ捨てられるなんて。
女の人にどこかに連れて行かれてる。
起きてないとどうなるかわからないのに、睡魔に負けて寝てしまった。
途中起きても、馬で移動してるのか、揺れが心地よくまた寝てしまった。
気がついたら、女の人がミルクを飲ませてくれていて、周りに子供達がいる。
どこかの家族に拾われたのかな?
クレアと名付けられ、育っていった。
ここが家族ではなく、孤児院というのもわかった。
孤児院の子達は、12歳でギルドに登録して、冒険者になる子が多いのもわかった。
それまでは登録できないけど、街中のお手伝いや薬草採取とかで小金を稼ぐらしい。
ただ、孤児院の子だからか、街中のお手伝いはほとんどないし、あってもお金をくれなかったりでほとんど稼ぐことができないらしい。
それでも、薬草をギルドに持っていけば、少しはもらえるが、薬草と雑草とわからないから、たくさん持っていっても安いらしい。
私も8歳になったから薬草採取して少しずつお金稼がないとね。
私の瞳は、アメトリンのように金と紫の2色が入ってる。オッドアイとも違う見たことない瞳だからか、皆気味悪がって近寄らない。
というか、石投げられたり、意地悪されたりするから、早く孤児院から出たいのもある。
出ても行くとこないし、お金ないし・・・
だから、少しでも早くお金を貯めるの!
さあ、いざギルドへ!
ドキドキしながら、ギルドに入ります。
早い時間じゃないから、人もまばらです。
キョロキョロしながら、受け付けのお姉さんの所に行きます。
「あの、薬草採取したいので、薬草を教えて下さい。」
お姉さんは、チラッと私を見ると溜息をついて、
「こっち。」
と言い、歩いていきます。
態度悪いなぁと思いながら急いでついていくと、部屋に入り、そこにいた男の人に、
「薬草教えて欲しいって。」
って言うと出ていきます。
私は、
「クレアです。薬草を教えて下さい。」
と言いました。
男の人は、ビックリしながらも
「僕は、ロンドだよ。よろしくね。薬草を知りたいのかい?」
「はい。どれが薬草かわからないので、教えてほしいです。」
「じゃあ、この本かな。字は読める?」
「えっと、基本文字と数字は読めます。わからなかったら聞いてもいいですか?」
「うん、いいよ。」
「ありがとうございます。」
早速ページをめくります。
薬草の名前や特徴が書いてあるようです。
わからない単語は、教えてもらいながら、何種類かの薬草を覚えます。
そして、ロンドさんに採取の仕方を教えてもらいました。
が、ナイフもスコップも持ってません。
手で摘むと状態が悪く評価が下がり金額も下がるそうです。
でもお金ないから買えないよね。
これは、状態悪くても買えるまでは仕方ないのかもと思ってたら、ロンドさんが貸してくれました。
ナイフとスコップとカゴ。
今からどれだけ採取できるかわからないけど、頑張りましょう!
街を抜けて森に向かいます。
あまり奥には行かないよう気をつけて薬草を探します。
あった。ナイフで採取したり、スコップで掘って根の部分まで採取します。
教えてもらったことを丁寧にして採取していきます。
遅くならないうちに帰らないといけないので、切り上げます。
ギルドに戻って買い取りしてもらいます。
数は多くないけれど、丁寧に採取したので買い取り価格は下げられず、思ったよりお金がもらえました。
でも、ギルドに登録してないので、ギルド預金ができません。でも持って帰ると盗られてしまう。
ロンドさんにナイフなど返さないといけないので、相談しましょう。
朝行った部屋に行き、ロンドさんに採取道具を返します。
「ロンドさん、ありがとうございました。おかげで思ったよりお金がもらえたのですが、相談です。私は、まだ登録できないのでギルド預金ができません。持って帰ると、盗られる可能性が高いので、お金を預かっていただけませんか?」
「お疲れ様、クレアちゃん。頑張ったんだね。盗られるって、誰がとるの?」
「私、孤児院でお世話になってるんです。でも、この瞳だから・・・ロンドさんは、気味悪く思わないんですか?」
「どうして?綺麗だと思うけど?そっかぁ、クレアちゃんが頑張ったのに盗られるのは困るね。でも、知らなかったんだね。登録は12歳からだけど、登録前に
採取とかでお金を貯めるのは、見習い登録でできるんだよ。だから、クレアちゃんも見習い登録したらいいよ。ギルド預金もできるから。」
「ふあぁぁー、見習い登録・・・知らなかったです。登録お願いします。あっ、お金これです。」
「ちょっと待っててね。」
ロンドさんが登録とギルド預金してくれて、見習いカードを持ってきてくれました。
「はい、カード。入金してきたから、なくさないようにね。」
「ありがとうございます。また、ここにきてもいいですか?」
「うん、もちろん。」
「えへへ。嬉しい。今日は、これで帰りますね。ありがとうございました。」
「気をつけるんだよ。」
よかったー。カードをなくさないように、とられないように気をつけなきゃね。
孤児院に帰って、お手伝いして、食事をして身体を拭いて寝ます。
次の日もギルドのロンドさんのとこに行きます。
また、薬草の本を見せてもらいます。
読めない字は教えてもらいます。
覚えたらまた薬草採取に行きます。
少しずつお金が貯まっていきます。
ロンドさんに借りてばかりいられないので、
貯まったお金で、自分の、採取道具を買いました。
薬草も採取できる数が増えました。
そんな毎日を過ごして、あと数ヶ月で12歳になります。
ロンドさんにお礼がしたいのですが、高い物は買えませんし、男の人は何がいいかわかりません。
なので、ハンカチに刺繍することにしました。
刺繍道具に布などを買い揃えます。
ロンドさんの前で刺繍する訳にもいかないし、孤児院ではできないので、採取するときに時間を作って少しずつしていきます。
モチーフを本にしようかとおもったけど地味ですし、薬草だともっと地味です。
なのでギルドマークにロンドさんの名前を刺繍します。
前世ぶりの刺繍ですが、スイスイ針が進みます。
上手くできてます。
喜んでくれるといいなぁ。
ある程度刺したら、採取をはじめます。
最近、森の状態が良くないみたいで、薬草がなかなか見つからない。
なんとなく、前世の学校で合唱していた、大地讃頌を歌いながら、少し奥に入り見つけた薬草を採取してると、
ガサッ
振り返ると、孤児院で意地悪してきた男の子達がいます。
「クレアじゃねーか。こんなところで採取かぁ。」
ゲッ⁈ヤなやつらに会ったっていうかなんでここにいるの?
「お前、気味悪い瞳してんだよ。人間じゃないんだろ?」
逃げようとしたら、剣を買えるほどお金がないのだろう。ナイフで襲ってきます。
腕を斬られ血が流れる。
「はっ、血の色は一緒か。みんな気味悪がってんだからよ、お前を殺せば、俺達ランクが上がるだろうな。」
なんて人達。こんな人達に殺されるなんて・・・
その時低い唸り声が聞こえてきて、
大きな犬が現れた。
「なっ、ウルフにしては大きい⁈」
ウルフ・・・犬かと思ったら狼ですかー。
遠吠えをしたら、最初のウルフより小さいウルフが集まってきた。
あーこれは、詰んだな。
人に殺されるか、ウルフに殺されるかの違いで死ぬのは逃れられないようです。
集まったウルフ達は、逃げようとする男の子達に襲いかかってます。大きいウルフは、ゆっくりと私のそばにきて
『その瞳・・・さっきこの森に祈ったのは、お前か?』
へっ?喋った?狼が?この世界の狼は喋るのかぁ。
ファンタジーだねー。他の動物も喋るのかなぁ。
『おい、おいっ!聞いているのか?どうなんだ!』
「あぁ、言葉わかるかな?私は、歌っただけで、祈ってないよ?」
喋りながら、止血する。
『歌?もう1度歌え。』
「えっ?」
『いいから、歌え。』
仕方ないなぁ。また大地讃頌を歌う。
歌い終わると、狼が
『フン、やはりお前だな。一緒にきてもらおうか。乗れ。』
「えっ、乗れない。乗ったことない。無理無理無理!」『つべこべ言わずに乗れ。』
ひえぇー。カゴを持って上に乗る。腕を怪我してるからあまり力が入らない。
狼が連れて行った所は、森の奥にある一軒家。
誰がいるんだろう?
入り口で降ろしてもらうと、狼は勝手に入って行く。
「お邪魔しまーす。」
言いながら、ついて行く。
『ここは、お前の家だ。これから、ここに住んで、さっきの歌を歌え。』
「待って、待って。なんで?私家買うほどのお金ないし、歌えって言われてもなんで?」
『さっきお前が歌った時に、この森の大地に僅かだが力が満ちた。ここ数年、大地の力が弱まり森の女神も姿を消した。荒れ果てていくしかない森をどうすることもできずにいたのだ。お前が歌って、大地に力が満ちていけば、森の女神も姿を現すかもしれない。』「えーっと、ここに住んで歌って、力を満たせば、女神様が現れると。言いたいことは、わかったけど、すぐには無理だよ。あと1カ月ほどで12歳になるから、それまで待ってくれない?12歳でギルドに登録したらここに住むよ。それまでに、お金稼いで、この家に必要な物とか買わないとね。あぁ、私クレアっていうの。よろしくね。狼さん。」
『フン、クレアか。我はフェンリルだ。狼ではない。ここに住むまでにも、ここにきて歌え。1ヶ月後からは、ここに住んでもらうぞ。』
「フェンリルだね。わかった。フェンリルも一緒に住むの?あっ、ここがどこか道わからないから森の入り口まで送ってくれないかな?お願い!」
『仕方ない、送ってやろう。』
送ってもらい、フェンリルにバイバイしてギルドに戻った。
買い取りしてもらい、どうして怪我をしたのか聞かれたので、森の中で男の子達に襲われた事。殺されると思ったら、ウルフが男の子達に襲いかかり、男の子達が逃げて、ウルフが追いかけて行ったので、あとは知らない事を伝えた。フェンリルの事は内緒。
ロンドさんは、人を襲うなんて、冒険者失格だから、カード剥奪だなと言ってた。まぁウルフに勝ってギルドに戻ってくればだけどね。
次の日から、森に採取に行くと、どこからともなくフェンリルが現れ家に連れて行かれる。
歌って、刺繍して、歌って採取する。このあたりの薬草は、今まで採取した薬草よりも葉がツヤツヤしてるし、少し奥にある滝壺から流れて川になってる近くには、なかなか見つからない希少な薬草があった。
たまたま見つけたということにして、2株採取する。
今日はこれでいいかと、刺繍を仕上げていく。
そんな日々を過ごして、12歳を迎えた。
お世話になった孤児院へも、お別れの挨拶をした。
見習い登録を卒業して、ギルドに登録をする。
ロンドさんから「おめでとう。12歳かぁ。ギルドにきたら、僕のところにも顔出してね。これからも、気をつけて活動するんだよ。」と、言ってもらえました。
「ありがとうこざいます。ロンドさんに会えて、色々教えてもらえたから、今の私がいます。私の瞳を綺麗と言ってもらえて嬉しかった。本当に、ありがとうこざいます。あの、よかったらこれ、もらってください。お世話になったお礼。何がいいかわからなかったので、いらなければ捨ててください。」
刺繍したハンカチを渡します。
ロンドさんは、ハンカチを見て、
「ありがとう。これって、クレアちゃんが刺繍したの?すっごく上手だね。大事に使わせてもらうね。」
と言ってくれました。
喜んでもらえてよかった。
1ヶ月の間に少しずつ揃えていったので、今日は、食材を買って森にいきます。
森の中を歩いていると、フェンリルが迎えにきてくれました。
さぁ、今日から森の家で暮らします!