028.コロシアム
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ありがとうございます!!
「そういえばさ。決闘の場所や時間って指定してなかったよね?」
みんなで朝食を取り終えまったりとしている時に、ふと思い出した。
「そういえば……そうでしたね」
「あのバカがまた来るんじゃないかな?」
相変わらずララノアちゃんのキザエルフに対する当たりが強い。
「んー。でも、ここで決闘されて汚されるのは嫌だな。せっかく先生がつくってくれたものが壊れるのも嫌だし」
「分かる! あのバカの出すモノはなんか汚染されてそうだもんね!」
「……」
「……」
「……」
笑顔で毒を吐く三つ編みエルフに戦慄してしまう。
お姉さんのアリエルさんは恥ずかしそうに俯いてしまっていた。
「かかか。手はずは既に整えておりますぞ、我が王よ」
「賢者様!?」
手には小さな酒瓶の入った桶、頭には手ぬぐいのようなタオルを乗っけて賢者様が現れた。
どうやら今朝もひとっ風呂浴びてきていたらしい。しかもお酒付きで。
「手はずとは……?」
「もちろん決闘の日時と場所についてですぞ。既に相手方のエルフにも伝えております」
なんて出来るマネージャーさん。
有能っぷりをまざまざと見せつけられてしまう。
「かかか。時間は正午から。場所は……そうですな。実際にご案内しましょう」
そう言って『扉』を作り出した賢者様。扉は言ってしまえば簡易的な転移魔術だ。複数人がそれぞれ任意のタイミングで転移したいときなどによく使われる。
促されながら『扉』をくぐると、どうやらエルフ一族が集落を作った森のさらに奥に出てきたようだ。
周りは木が生い茂っているものの空から降る太陽の光のおかげで、暗い雰囲気はない。緑の瑞々しい明るさの中、丁寧に整備された土道があった。
その道を辿るように視線を向けると、正面にはでかい建築物が。
両端に向かって曲線を描くように建てられた石壁は、重厚な雰囲気を醸し出してる。
その石壁にはいくつもトンネルの出入り口のような穴があり、そこから何人かエルフの住民が出入りしている。
「ん?」
正面の一際大きな入り口の上には、なぜか俺の似顔絵のようなモノがどーんと飾られていた。あれだ。よく古風な城とかに飾られていそうな自画像風絵画だ。
「こ……これはっ!?」
「かかか。我が王のご尊顔を使わせて貰いました。いやぁ、これがあるだけで、ここの神聖さが増しますな」
いや、全然増さないよ!?
これは拷問か、恥ずかしすぎる。
「うーん、最高の仕事ですね。でも、実物の方がやっぱり素敵かな」
「かかか。コウタ殿もそう思われますか。まだまだ儂の実力では、聖皇様の魅力を全て引き出せぬわけですな」
そんな魅力ないから! 恋唄も何言ってるんだよ!!
というか、この絵は賢者様の直筆ですかッ!? 無駄に芸達者だな、この骸骨賢者は。
骨だけの手でどうやって描いたのか気になるところだが、突っ込めばやぶ蛇になりそうなのでスルーしておく。
「では、中に入りますか」
入り口から入ってすぐのホールは、白亜の大理石のようなものできれいにまとめられている。おしゃれな高級ホテルのような感じだった。
動線には絨毯が敷かれてあり、既に中に入っていたエルフ達はそれに従って歩を進めいてた。
「このエントランスから出場選手は控え室に、観客は観客席に行くことができるようになっております。
まぁここはまたの機会にしてきましょう」
ツアーコンダクター賢者様の案内で、上階の見晴らしの良い席に案内された。
そこからは全景が一望できる。いわゆる貴賓席のような感じか。
「これは……コロシアム?」
「かかか。よくご存じで」
屋根はないが、まぎれもない円形闘技場だった。
中央には円形のリングが鎮座している。広さはおよそ直径50メートルくらいだろうか。
3メートルほどの高さのあるリングの外は、緑の芝のようなものが敷かれ、さらにそれを囲むように壁がフェンスのようにできあがっていた。
フェンスの外は観客席となっており、一列ずつ高く段差をつくっていくことで後ろの席からもリングが不自由なく見られるようになっている。
すでにその観客席には何人ものエルフ達やアンデッド達が座り、盛り上がっていた。
観客席の最上部は一周できるような広い通路になっているようで、そこには屋台がいくつか出ている。店主はアンデッドのようだが、売られている商品はお酒やジュース、つまみになりそうな食品とまるで野球場のようだ。
中には俺の顔のイラストが入ったタオルのようなモノなど記念品のようなものまで売られている。
「……」
何をしているんだ、この賢者様は。
「かかか。突貫でつくったとは言え、我ながらなかなか満足いく出来ですな」
「すさまじいです! さすが賢者様」
一晩でとんでもないことをやりきりとか、どこのマンガのキャラクターだよと思っている隣で、エルフ姉妹は賢者様の偉業に大感動しているようだった。
「賢者様、聖皇様っ!!」
貴賓席に座っていた初老のエルフが、俺たちが来たことに気づいたのか慌てて走り寄ってきた。
「あ、おじいちゃん」
立派な髭を生やした細身の高齢エルフ――エルフ姉妹の一族の長であり、祖父でもあるイズレンディアさんだ。
つい先日も同じような光景を見た気がするが、昨日よりも疲れた顔をしている。
「これ、ララノア。人前では『おじいちゃん』と呼ぶなと言っておろう!
と、聖皇様……度重なる無礼まこと、誠に申し訳ありませぬ!!」
「いやいや、イズレンディアさんが謝ることじゃないですよ!
お互い納得の上の決闘ですから」
「しかし、恩を仇で返すような振る舞い……これはもう我らも覚悟を決めました」
キザエルフの行動に一番迷惑を被っているのは俺ではなくこの人なんだろう。
せっかく助けてくれた賢者様に、すぐさま迷惑をかけていく一族の青年。連日でそれが起これば、いくら温厚な人でもキレてしまっておかしくない。
「ロイントリッヒは一族に害する存在。もはや庇い立ても出来ますまい。この決闘の結果がどうであれ、追放処分は確定しております。ならばいっそ、ここで一思いに――」
「大丈夫、大丈夫っ!!」
とんでもないことを言い始めたイズレンディアさん。怒りで血管が切れてしまわないか心配だ。
とりあえずイズレンディアさんへの対応はエルフ姉妹に任せて、俺たちは選手控え室に行くことにした。
運命の決闘まで、後少しだ。
少し短いですが、キリが良いのでここで一度切ります。
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