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016.そうだ、街に行こう

 唐突に始まった、俺と恋唄のスローライフ。

 そのスタートは問題の山積みだ。


 まず、服がない。下着もタオルもない。歯ブラシも石けんもトイレットペーパーも生活に必要なあれもこれもない。


 スローライフを行っていくには自分でその辺りを作っていくことが必要になるんだろうけれど、必要なものがありすぎて一から全部作っていくのは時間的に無理がある。


 確かに材料さえあれば魔術でなんとかなるし、材料も集めようと思えば、賢者様が「わしのだんじょんはいいぞよ」と自慢げに言っていたのでそこに行けば揃いそうだ。


 ただ、それをするには必要なモノが多すぎるわけである。


「ということで、街に行かないか?」

「うん?」


 朝食を終えてのんびりしていた恋唄に声をかける。

 ちなみに朝食から肉は重そうだったので、朝から賢者様の【迷宮ダンジョン】に行って鶏の卵をゲットしてきた。


 目玉焼きというシンプルなメニューだが十分美味しかったので、満足だ。

 というか、食べ過ぎて太っていきそうな危機感がある。


「街ってどこにあるんですか?」

「……」


 当然の疑問。

 この世界のことを知らない俺たちに、街の場所や生き方なんて分かるわけもない。


「……賢者様」

「かかか。そうですなぁ……まずはこちらをご覧ください」


 当たり前のように朝食の場に現れ、満足そうに食していった賢者様が手を振るう。長い骨だけの指から光があふれ、それが大きなホログラムディスプレイになる。


 そこに映されたのは世界地図だ。

 大きく六つの大陸と、いくつもの小さな大陸が描かれている。


 真ん中にある大きな大陸の中心には、大きな木が描かれていた。その木の周りには森が書かれている。


「この木は、世界樹?」

「その通りです。ここが儂らのいる世界樹となります。この大陸には5つの大国と十数の小国が存在しております」


 世界樹が描かれている大陸だけがズームアップされ、国境のような境界線が出現した。


「世界樹から見て西が、かのゴスペラズ帝国。聖皇様達をこの世界に召喚した国ですな」


 一番領土……というか国の面積が広い。西側一帯すべてが帝国の国土のようだ。


「逆に東側……北東からチョウコリア人民共和国、エルネリア王国、ヤハエル神聖国家となっております」


 東側を三等分するように、大国が連なるわけか。


「さらに北……このグングニル山脈が連なる国がドルフエイム連合国。ここはドワーフ族や獣人族などがそれぞれの代表を立て、合議制で統治している珍しい国ですな。

 南は小さな都市国家群となっております」


 こうしてみると世界樹を中心に国が取り囲んでいるようだ。


「この世界樹はどこの国の所属になるの?」

「かかか。結界があるためここに世界樹が存在しているとは分かってはおらぬと思いますが、ヒト共にはこの森の資源だけでも垂涎すいぜんの的ですからな。

 いつの時代もいくつもの国が手を伸ばしてきましたが、お灸を据えてやると諦めました。それ以来、どの国にとってもここは不可侵となっておりますな」


 老獪に笑う賢者様。怖い。


「さて、聖皇様は買い物をご所望とのことでしたな。

 国によって主義、思想、文化、差別に偏見は様々ですが……そうですな。それでしたらエルネリア王国の首都であるアレクサンドリアがお勧めでしょう」

「格好良い名前ですね」


 国や都市のイメージが全くないので、ありきたりな感想しか出てこない。


「でも、先生。お金はどうするんですか?」

「……あ」


 忘れていた。

 現代社会において、モノをもらうためには金銭による支払いは必須である。


「ちなみに賢者様。そのアレクサンドリアってところはもちろん貨幣制度が……」

「存在しております」

「……ですよね」


 お金か。

 今まで考えなかったけど、俺所持金も貯金もゼロになってしまってるんだな。

 いきなり持ち金0という現実に恐怖しか感じない。


 俺は通帳の金額が100万を下回ってしまうと、怖くて夜も寝られなくなる。余力やゆとりがないとそわそわしちゃう、できるだけ安全パイを多く抱えておきたいタイプなのだ。


 エリクサーは最後まで取っておいて結局使わないまま終わる、みたいな。


「かかか。安心してくだされ。聖皇様が持たれている魔石は、ヒトの社会では高い金で売れますからな。

 日用品を買うくらいの金銭には十分なるでしょう」

「そうなんですか!」


 それは一安心だ。

 世界樹を目指すに当たって倒した魔物達からも、エルフ姉妹のアドバイスもあり魔石を回収してある。

 優に100個はあるだろう。


「じゃあ、さっそく行くかー!」

「先生! どうやって行くんですか!?」


 出発しようと立ち上がると、恋唄が慌てて止めてきた。

 確かに……。今の俺なら走っていっても楽勝で行けそうだけど、恋唄を抱っこしながら行くのはさすがに悪いな。


「かかか。お任せくだされ。儂の転移魔術で近隣まで送り届けましょう」

「ありがとうございます。さすが賢者様!」

「先生……いつも秘密道具に頼ってる少年みたいになってます……」


 困ったときの賢者えもんって感じだな。

 ちょっと反省。

 もうちょっとしっかり考えていこう。

区切りが良いので短いですが今日はここまでです。


読んでいただきありがとうございます。

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