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エルと実験!

目が覚める。いつの間にか寝ていた・・・

いや、違う。

俺は「神」を名乗る男と対話をしていた。


部屋の中を見る。

ホテルのシングルルームの様な部屋。何の変哲も無い、ただの部屋だ。


今の会話は夢だったのだろうか。


「デバイス」

「はい」

「今の会話を聞いていたか?」

「今の会話とは?」

「俺と『神』を名乗る男との会話だ」

「いいえ。何も記録されていません」

「そうか、ありがとう」

「どういたしまして」


デバイスには神の声は聞こえなかった。神の力ってやつか?


ステータスを開く。


大庭 士朗


ポイント 1176


スキル シフト タイムコントロール フォーチュナテリィ フレンド


!!!!


表示が変わっている!! 


ポイント? ポイントってなんだ? あの「ポイント」なのか? 1176? 1176・・・1176って何でこんな中途半端な数字なんだ?

まさか、これも「役に立つ贈り物」というんじゃないだろうな?

こんな中途半端な数字が?

だが神は「いつか」と言っていなかったか?

「いつか」というのはこんなすぐの話ではないだろう?

これは本当に「贈り物」なんだろうか?


スキル・・・スキル欄にある「フレンド」。

スキル欄にあるという事は、これはスキルなんだろう。

「称号」とは違うはずだ。

ユニークスキル。 神の力のカケラ。

それは神によって与えられた、いや、神によって「押し付けられた」力だ。

だとすると・・・

「フレンド」がそうであるように、「ポイント」もまた神からの・・・?


おかしい。何かが違う、何かおかしい様な気がする。

だが、どうおかしいかが分からない。


ステータス表示を見つめる。クソッ、あいかわらず不親切な仕様じゃないか。

見ていても何の説明も・・・!?


違う。違っている! 数字を見つめていると・・・わかる・・・分かるぞ! 

少なくとも「ポイント」は分かる。

使える気がする!


この「ポイント」はスキルに対して使うものだ。それが分かる!!


どうしてだ? なぜ急に分かる様に・・・いや、今はそんな事はどうでもいい。


「使える」という事が重要なんだ!


このポイントを消費することでスキルを使う事ができる。それが分かる。

どうする? 今すぐ使ってみる・・・ダメだマズイ!


分かるのは「ポイントを消費することでスキルを使う事ができる」という事だけだ。

肝心の、「スキルの中身」が分からない。

「スキル」を見つめても、その使い方は分からない・・・違う、「シフト」だけは使える気がする。


!!!


何故だ?! 何故急に「使える気がする」様になった?

「ポイント」が生じたからか?

どうする?

だが使ってみない事には何も始まらない。何も分からない。

しかし・・・


まずは相談だ。

俺一人の考えだけで決めるのはマズイ。それが「正解」なのか確信が持てない。

エルに相談しよう。

彼女と「帝国」なら、俺よりずっと良いアイデアがあるかもしれない。


(プルルルル)


うわっ! びっくりした! 着信音? 電話? どこから?

スマホの・・・スマホの電源は切っていたはずだ。


俺はスマホを取り出そうとしたが、それより早くデバイスがエルからのコールだと教えてくれた。

こちらでも同じなのか・・・


「おはようございます。エルです。朝食はどうなさいますか? よろしければ朝食後に本日の予定についてお話をしたいのですが」


「あぁ、おはよう。エル。今から食堂へ行くよ。俺も相談に乗って欲しいことがあるんだ」


「わかりました。では食堂でお待ちしていますね」


俺は部屋を出て、食堂へ向かう。



食堂で待っていたエルは、朝からビシッとした制服姿でいた。

食堂の中は朝の日差しが差し込んでいて明るくなっている。

外から差し込む朝日を浴びて、エルの長い黒髪がキラキラと輝いている。何かのCMみたいだな。


エルと向かい合って座り、朝食をとる。

エルの前には何も置いていない? エルの朝食は?


「エルは朝は食べないのか?」


「私は自動人形なので食事は必要ないんです。食べる事自体は可能ですが」


「そうなんだ」 


そうだった。彼女は自動人形だった。

彼女は「自然な感じ」だからすぐ人間のように思ってしまう。


「じゃあ自動人形の動く為のエネルギーってどうなっているんだ? 補給とか」


「主に、太陽から放出されている力を受ける事によって得ています」


ソーラー発電?


「えっと、太陽からエネルギーを貰っている、という解釈でいいいのか?」

「はい。大体合っています」


大体なんだ・・・もっと詳しく聞くべき?


「じゃあ太陽からエネルギーを得られない時はどうするんだ?」

「内蔵バッテリーに切り替わります。もちろん、外部バッテリーからの補給も可能です」


もちろんなんだ・・・


そんな小粋な? 自動人形トークなどをしながら朝食を終える。

かわいい女の子と一緒にとる食事は楽しいな。

相手は一口も食べないけど。


いよいよ本題だ。


「今日の予定について聞く前に、先に俺に話をさせてくれないか? 相談したい事があるって言ったろう?」

「いいですよ」


俺は今朝? の「神との対話」の内容、それに対する自分の考え、

ステータスについての考察、スキルが使えるような気がする事などをエルに話す。


エルはふんふん頷きながら話を聞いてくれている。

一通り話し終えると、エルは言った。


「では、実際に使ってみましょう」


「えっ?」


えっ!


「使うと言うのは、スキルの事だよな? 今から?」

「はい。実際に使ってみれば何か分かるかもしれません」


そうかもしれないけど! 思い切りが良過ぎないか?


「シローのお話の中で重要な事は主に二つだと思います。1つは『ポイント消費と実際に発揮されるスキルの効果の関係』

もう1つは『どうしてポイントが生じているのか、あるいはどうすればポイントを増やす事ができるのか。』です。

それ以外の事は後回し、もしくは判断を保留する、で良いと思います」


神の存在については重要な話ではない、という事なんだろうか?


「先にポイントについてですが、ステータスは常に表示させる事はできますか?」

「出しっぱなしという事か? 試してみるよ」


ステータスを開く。


大庭 士朗


ポイント 1176


スキル シフト タイムコントロール フォーチュナテリィ フレンド


常に表示させる事はできるが、ちょっと位置が気になるな。

もう少し左の端のほうへ動かせないかな? ・・・できる。良し!


「できるよ。常に数字を確認しろ、という事だな?」

「はい。私やデバイスにはそれは見えないので。次に、使える、という感じがするのは『シフト』だけでしょうか? 他のスキルについては如何でしょう?」


他の? 他のスキルを見てみる。


タイムコントロール・・・ダメだ、使える気がしない。


フォーチュナテリィ・・・これも同じく。


フレンド・・・こんなスキル、使いたくもないのだが、やはり使える気がしない。


使える気がするのは『シフト』だけだ。


「『シフト』だけだ。他のスキルは反応しない」

「わかりました。ではまず、実際に『シフト』を使ってみましょう。

何か分かるかもしれません」


どうしてそんなにやる気があるんだ? 俺はちょっと躊躇しているのに。


「シローも使ってみない事には何も始まらない、と思ったのでしょう?

私もそう思います。

シローが躊躇しているのは、安全性について不安があるからでしょうか?」


それもある。だがそれ以上に、あの「神」を名乗ったあいつの力を使う事に躊躇いの気持ちがあるんだ。

人をモルモット扱いしやがった、あの野郎の力を使う事に。


だがそれはエルには、いや「帝国軍」に対しては言いにくい事だ。

帝国がスキルについて知りたがっているのなら、

こちらが消極的、あるいは非協力的だと思われたら、今のサポートも違ったものになる可能性がある・・・


「大丈夫ですよ? どうか安心してください。その為の制服と荷電粒子砲です。

もちろん私もいます。

シローを全面的にサポートしますよ!」


そうだな・・・。少なくとも一度は試す必要がある。

スキルが実際に使えるのかという事を、

「全面的なサポート」があるうちに。


「わかった。やってみよう」

「はい!」


嬉しそうだな・・・


俺たちは外に出た。建物のすぐ裏は見渡す限りの広大な、無人の荒野。

リゾートエリアからさほど離れていないはずなのに、こんな風景が広がっているのは違和感があるな。


「ここは軍の研究施設だったよな? ここは何かの実験場なのか?」

「実験場であり、演習場でもあります」


「念の為、もう一度確認をしておきますね。シローの着ている制服は、高い防御力と宇宙空間でも運用可能な気密性を持ち、

130時間分の圧縮酸素が内蔵されています。また、荷電粒子砲には人を連れて空を飛ぶ機能があります。

もちろん宇宙空間でも可能です。ここまでよろしいでしょうか?」


「ああ、大丈夫だ」


「シローが『シフト』によって移動した先が帝国の領域であれば、必ず帝国軍によって捕捉され、すぐに救助されます」


ぜひ、そうしていただきたい。


「帝国の領域ではなかったとしても、近傍領域であれば問題なく救助活動が行われます」


「もし、敵性領域であった場合、私と荷電粒子砲のAIの判断によって行動します。どうか安心して任せてくださいね」


「敵!? いやそこは安心できないよ!」


「大丈夫です。最初は少しだけの移動を試みてみましょう。

わずかなポイント消費であれば、いきなり遠くの危険な領域まで移動する可能性は低いのではないでしょうか?」


それは理に適ってはいるが・・・


「最初は2ポイントだけ使ってみましょう」


「2ポイント? 1ポイントじゃないのか?」


「私も一緒なので、私の分も必要ではないでしょうか?」


エルも一緒? そうか、そういう話だった。だが危険じゃないのか?


「大丈夫ですよ?」


その自信の根拠はなんだ?


「シロー、上を見てください。空を、そしてその先の宇宙を」


抜けるような青い空。その先にある宇宙・・・できる、「シフト」が使える。そう感じる。


「2ポイント使ってみてください。ステータス表示はどうなりましたか?」


「・・・1174、2つ減った。いけるぞ! エル!」


「では、失礼しますね」


そう言うとエルはぎゅっと俺の左腕を抱きしめた!

やわらかい感触が・・・エルは着痩せするタイプ? そうじゃなくて!


「どうして急に?!」

「移動の際に離れない様に、ですよ?」


まるでヒロインの様な・・・いや、今はそんな事言ってる場合じゃない!

いくぞ! やるんだ!


「では、お願いします」


「よし、いくぞ! 『シフト!!!』」



その直後、俺たちは宇宙にいた。












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