表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

異世界

大庭 士朗


スキル シフト タイムコントロール フォーチュナテリィ


まるでヘッドアップディスプレイみたいに目の前に表示されているのはまぎれもなくステータス・・・

だよな?

俺の名前だし、「スキル」というのは能力という意味だったはず。


だが待ってほしい。ジョブとかレベルとか年齢とかホラ! あるでしょう?

HPとかMPとかすばやさとかINTとかいろいろあるものじゃないのか?


「なんか俺の知っているのと違うような・・・」


いやしかし! 今までこんなものを見た覚えはないし、スキル表示のはずだ。

スキルって書いてあるし!

表示されている文字を見つめると説明が頭の中に入って・・・こない。

クリックとか? 文字を触ろうとしても空振りして反応が無い。


「単に表示しているだけとか? まさか・・・」


タイムコントロール! とか、いかにもチート! ってカンジがするのにまるで使い方がわからない。

俺の異世界チートは始まらないのか? 異世界・・だよな?

そういえば銀色は?


俺が異世界だと思い始めたのは、そもそも謎の銀色野郎が飛んだり浮いたりしていたからだが、

魔法とかじゃなくて俺が知らないだけで、実は超ハイテクとかで実用化された現代モノとか?

そういえばヤツはどこへ?


あわてて視線を上げると謎の銀色は少し離れた位置にいた。

俺が気づくとヤツは


「こっちへ来い」


みたいな動きをし始めた。


うーむ、ついていくべきか? 今更だが、敵とかだったらどうしよう?

イヤほんと今更だな。敵とか魔物? の類いならとっくに攻撃されていたはずだ。

俺はすぐに決断して、銀色の方へ歩いていく。

銀色の板は俺を先導するように先へと進んでいく。


砂浜の上を歩いていくと、視線の先には林のような風景が遠くに見えたがその手前に! 道のようなものが!


「とりあえず人がいるのは間違いないよな?」


銀色野郎に道は不要だろうが、道があるということはそれを必要としている何か(人とか車とか)がいるはずだ。 

歩き続けて道? らしきところの上に立ってみる。

銀色も道の上空でとまった。


「結構幅が広いな、それに土? を固めているだけの様に見えるがずいぶん滑らかだな・・・」


幅6~7メートルくらいでデコボコがまったくない。

そんな道が右を見ても左を見てもずっと先まで続いている。

道の表面をさわってみるとやはり土っぽいが指で押してもヘコまない。アレ?

(土じゃないのか?)よくわからない。もう少し検証してみたかったが、何か音がしたような?


顔を上げると、道の先から何かが近付いて来ているのが小さく見えた。


「あれは・・・馬車?」


ヤッパリ中世ヨーロッパ風、なのか?


馬車が接近して来ると、御者台の上にいる人の顔が見分けられるようになった。

男と女。

無国籍風? の顔立ち。

第1異世界人、第2異世界人発見! か? イヤマテ!! 服が!


「作業着?」


そう二人は作業着っぽいモノを着ていた。

何だか馬車には似つかわしくない様なパリっとしたヤツ。


馬車は俺のすぐ近くで止まると、二人は当たり前のようなカンジで降りてきて俺の前に立ち、男のほうが何か話しかけてきた。


「××××! ××××××××!」


やはりわからない。


「あの、何言ってるのかわからないんですけど・・・」


そして、ここがドコなのかもますますわからなくなった。

ナニ風なんだよ? いったい・・・

男のほうはオッサンっぽい年に見える。何だかフレンドリーなような・・・とりあえず敵意は感じない。

女のほうは美人さんだが、無表情な顔で俺のことをじっと見ている。


オッサンが自分を指差して


「カイ」


と言った。そして美人さんが同じ様に自分を指差して


「セレン」


と言った。これは名前を名乗ったのか? 

そしてオッサンは俺を指差して うん? みたいな顔をする。

これはやはり、名前を尋ねているのだろう。


「シロー、シロー オオバ」


何かカタカナ風に名乗っちゃったぜ。オッサンはうんうんうなずくと、


「シロー、××××××」


と言って馬車に乗れ、みたいな仕草をする。

迎えに来たということか? あきらかにそれっぽいぞ?

銀色は誘導してくれたんだな。

そういえば銀色は? 周囲を見渡すがいない。


「あの銀色の板はどこへ? ここまで案内してくれたんですけど」


オッサン、いやカイに聞いてみたが通じなかった。

ソウデシタネ・・・


馬車は2頭立ての4輪馬車、よく観光地とかで見かける様なやつ。

むきだしの車体にベンチシートが二列、背もたれすら無いシンプルな形だ。

カイが前列に後ろ向きに座り、俺が二列目に前向きに座る。

セレンは御者台で手綱を握った・・・


言葉が通じないみたいなので、道中は会話することもなかった。


俺は周囲の観察をしてみたが、リゾートのような自然の風景が続くだけで、

ここがナニ世界なのか判断できなかった。

人工物は道路ぐらいで、そうだ! 思いついて後ろを振り返って見てみると、

道路には轍のあとが・・・ついていないな。

この道路はハイテクなのか? 魔法の産物なのか?

すごく、気になる。


人工物といえばこの馬車もそうだが、ヤケに静かで振動も少ない。

馬車ってもっとうるさくて揺れるんじゃなかったっけ?

乗ったこと無いからよくわからんけど。

道が良いからか? 結局聞いてみないとわからないんだけど、言葉がなぁ。


次に「スキル」について考えてみよう。


「ステータスオープン」 


小さな声で言ってみる。

カイはチラリとこちらを見たが、すぐに俺から視線をそらした。

俺の様子を窺っている、そんな気もしないでもないのだが、まあいいや。


「シフト」 これは移動という意味だろうか? 勤務シフトのことじゃないだろうな。


「タイムコントロール」 時間制御? 使えるのならチートそのものだろうけど使えるのか?


「フォーチュナテリィ」 幸運? だったっけ? 所謂パッシブスキルというやつかな。

幸運スキルもあればかなり有利なハズだが。


もう一度強く表示を見つめてみたり、イメージしたりしたが、

やはり何の反応も無い。

どうなっているの神様!

そういえば、神にも会ってないよな俺。ホントどうなっているのかな・・・


こんなスキルとかステータスとか、きっと「神」の様な存在によるものだと思うんだけど・・・



体感では15分ぐらいの時間で、目的地らしき所に到着した。

少し開けたところに平屋の事務所みたいなものが建っている。


(普通だな)


そう、「普通」の建物にしか見えない。

馬車が駐車場のような所に入って停止すると、カイが降りるように俺をうながして、建物の中へ先に入っていく。

もちろん後をついていく。


建物の中に入るとそこはやはり事務所の様な雰囲気だった。

何人かが働いている様な動きをしている。

顔を見ても、何系かわからない無国籍風の顔立ちで、何か判断の材料になるわけでもない。

天井の照明、机、どこかでみた様な物ばかり・・・(現代なのか?)


(仕事か、俺の明日の仕事はどうなるんだろうな。どうにもならんか、無断欠勤ってやつだな。

そもそも、戻る事ができるんだろうか? ここが本当に異世界なら・・・)


カイはフロアの隅へいくと、俺を手招きする。


(テーブルにイス、これから説明とかあるんだろうか? でも言葉は? それに個室とかじゃないんだな)


カイと向かい合って座る。

カイは、自分の上着やズボンのポケットから何か私物? らしきモノを取り出すと、テーブルの上のトレーに乗せた。

そして俺を指差した後、トレーを指差した。


(持ち物を出せ、ということだな)


持ち物なんてスマホ、家の鍵、財布ぐらいだ。指示に従う。


いつのまにか横に立っていたセレンが、コインの様なものがついたヒモを示して首に掛けろ、みたいな仕草をするのでおとなしく従うと、彼女はトレーをどこかへ持っていった。


(預り証、かな? アレ? カイの私物も?)


疑問が湧いたが、カイが何か言い出したので彼のほうを見ると

彼の前には立体映像が映し出されていた・・・立体映像!?


「立体映像!? ナニコレ!!」


何かボールのようなものがうっすらと映し出されていてその向こうにカイが見える。

実体ではないよな?

映像はすぐにはっきりとしたものになり・・・これは、惑星?

でも地球じゃないぞ? 陸地の形が違う。


カイは床を指指し、惑星を指指してまた床を指指した。

この惑星がココってこと?!

異世界ならぬ異惑星! いや異惑星も異世界だよな・・・なにいってるんだ俺。


驚く俺を放置して映像が切り替わる。

今度は? 銀河? 銀河系だよな、たぶん。

その銀河系? のある一点が赤く点滅したと思ったら、そこがどんどん拡大されて、またさっきの惑星の映像になった。


(銀河におけるこの惑星の位置、ということだよな)


カイはまた俺を指差すと、次に銀河系の映像を指差した!


(まさか! そこからかよ!!)


地球の位置ってドコだったっけ・・・?


地球の位置を説明する様、求められてる(たぶん)俺。

でも地球の位置なんて説明できないぞ?

だいたい、銀河系における地球の位置は推定とか想像とかじゃなかったか?

適当に指差すか?

それはなんだかマズイ気がする・・・


俺は正直に「わからない」と答える。うなずくカイ。いいのか?

また惑星の映像になった。

カイは惑星を指差して「ファーグトー」と言うと、

次に俺を指差して、ん? みたいな顔をする。


あぁ、地球って言ってなかったな。


「チキュウ」


またカタカナ風に言ってしまった。何でかな? ふんふんうなずくカイ。


通じているよな?

この惑星の名はファーグトーというのだろう(たぶん)。


その後、様々な映像を見せられた。

見てわかるものもあれば(果物のバナナとか。バナナ?)

まったくわからないものもある。(本当に意味不明な抽象画? みたいなもの、あるいは謎の機械? とか)

宇宙戦争、みたいな動画もあった。(映画? それとも・・・)


それらに対してコメントしていく。(何か言え、みたいな雰囲気だから。俺は空気が読める男!)


そんなやり取りは30分くらいで終わり、カイと一緒に食事をすることになった。

パン、スープ、ポテトサラダ、何かの煮込み料理、デザート、コーヒー! まであった。

カイの食べ方も普通だ・・・


(マヨネーズで料理無双! とか無理だな、ポテサラにマヨネーズあえてあるし)


食べ終わると、セレンが俺の私物を持ってきて返してくれた。

それにイヤホン? みたいなものを2つカイに渡している。 

カイはそれを1つ自分の耳につけると、俺にもう1つを渡す。


つけろってことですね、わかります。


イヤホンみたいなものを耳につけるとカイが何か言った。


「聞こえるか? シロー?」


日本語キタ! 翻訳機か!











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ