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エルと実験!(キャロルもいるよ!)

「シフト!!!」


その瞬間、世界が変わった。


ここは・・俺がいるのは・・・宇宙!!!

宇宙にいるぞ!

成功だ!シフトを使う事ができた!


さっきまで殺風景な無人の荒野みたいな実験場にいたのに、

今、俺の足元には青い、美しい惑星の姿が見える。


巨大な惑星・・青い海、白い雲の流れ、大陸の形が分かる・・・!

これはファーグトーだ。

立体映像で見たあの惑星。

さっきまで、俺がいた惑星が俺の足元にある。自分の目で見ている!


「うわ・・うぉおおおおおおお!!!惑星が!宇宙がが!」


「おめでとうございます。うまくいきましたね!そして落ち着いてください。」


すぐ近くでエルの声が聞こえる。そうだった!エルも一緒に・・!


エルは俺の左腕に抱きついたまま、にっこりと笑って俺を見ていた。


「やったぞエル!シフトが使えた!成功だ!!」


「えぇ!やりましたね、シロー!凄いです!!」


「あぁやったぜ!これで・・うん?」


何か違和感が・・?今、エルの感じが何か・・・喋ったのに口が動いていない。

おや?


「今、エルが喋ったのに口が動いていなかった様な・・・?」

「ここは宇宙ですから。デバイスを通じてお伝えしています。」


そう、ココは宇宙・・宇宙!空気が!酸素が!?

俺は慌てて自分の顔を触ろうとして、手が何かにブチ当たる事に気付いた。


「何?コレ・・・?」

「それはヘルメットですよ。説明を覚えていますか?」


そうだった。事前に説明を受けていたのに・・・動揺、いや興奮しているのか?


俺の頭は透明な何かで覆われていた。想像していたのとなんか違う。

宇宙服のヘルメットみたいなやつかな、と思っていたのだが、

金魚鉢?を逆さにした様な・・。

さすが、帝国の超科学・・・?

袖が長くなっていて、手も手袋のような物で包まれている・・いつの間に?


エルの様子は変わらない。地上にいる時と同じだ。

ヘルメットは・・必要ないのか?


「エルは呼吸をする必要は無いのか?」

「はい。」


そうか。「自動人形」だったな。とてもそうは見えないんだが。


いつの間にか俺とエルに寄り添うように、銀色サーフボート、いや、

「荷電粒子砲」が浮いている。

浮いて・・浮いて?

おかしいな?

無重力じゃないのか?ここ宇宙だろう?

あんまり、自分がふわふわ浮いている感じがしないんだが?

むしろしっかりと大地の上に立っている様なカンジだ。なぜだ?


「エル、何だか無重力っていう感じがしないんだが。」

「それは、荷電粒子砲によって重力制御が行われているからです。」


「重力制御?!」

「はい。」


そうか、考えてみれば当たり前の事だった。

こいつらは空を飛んでいたじゃないか!

何らかの力、仕組みがあるのは当然なんだろうが・・・重力制御とは!!

さすがだな!帝国の超科学は!!!


相変わらず俺の腕を抱きしめているエルは、惑星からの明るい光を下から浴びて、

まるで妖精の様に見える。

惑星上空で、かわいいエルとデート!しているみたいだな!


そんな、ちょっと浮かれかけている俺に、エルの冷静な説明の声が聞こえてくる。


「現在位置は、惑星ファーグトー上空およそ97KM、いわゆる熱圏と呼ばれる領域です。間違いなく宇宙空間ですね。」


「移動に要した時間は0秒です。正確に言えば計測はできなかったのですが、

地上にいたときの時刻と、現在位置に現れた時の時刻が同じだったので、

0秒と推測されました。」


「私たちの現在位置は帝国軍に把握されています。

ですが、『シフト』の発動についても、

『移動』の経路・過程に関しても、何も分からなかったそうです。」


エルの説明を聞いて、俺は冷静さを取り戻した。

「実験」しているんだったな・・・。


「帝国軍はずっとモニタリングしているのか?」

「もちろんです。今のは帝国軍からの連絡内容です。」

「そうか・・。」


実際に「未知の移動」が行われた事を観測していたんだな。

自分達が知らない、分からない手段で「移動」する存在に、

帝国軍はどんな判断を下すのだろう・・・。


「シロー?」

「あぁ、何でもない。」

「そうですか?では、一旦元の場所に戻って欲しいのですが、可能ですか?」


シフトを起動し、元の場所に戻る事を意識する・・できる。


「できるよ。」

「では、戻ってください。お願いします。」

「ああ、やるぞ。シフト!」


次の瞬間、俺たちは元の場所に戻っていた。


「うまくいきましたね。気分はいかがですか?疲れたり、気持ち悪くなったりしていませんか?」

「問題ない。全て順調だ。」


一度これを言ってみたかった・・・こんな状況は全く想像していなかったけど!


「そうですか。良かったです。」


胸に手を当てて、安心した様な表情を見せるエル。


「では、ポイント表示はどうなっていますか?」


ステータスを見る。1172。2ポイント減っている。


「2ポイント減っているな。今は1172だ。」

「わかりました。少し休憩しながら話をしましょう。」


そう言うと、エルはすぐ傍に用意されていたテーブルとイスを示した。

イスの数は3つ。

テーブルの上には飲み物らしきものが置いてある。


(さっきはこんなの無かったろう!・・いや、もはや何も言うまい・・

それよりも・・・!)


3つあるイスの1つに、女の子が座っている!

彼女は立ち上がると、挨拶をしてきた。


「はじめまして、シロー。私は帝国軍に所属しているキャロルといいます。

一緒に話を聞かせてください。」


エルと同じ制服を着た、大人っぽい雰囲気の女の子だ。だが、しかし・・・

彼女の右上に、


自動人形


という表示が出ている!


第二ヒロイン・・・じゃない、よな?


キャロルと名乗った女の子は、金髪のゆるふわウェーブで、

まるでどこかのお姫様、みたいな美少女だ。


そんな彼女が、帝国軍に所属している?

とてもそんな風には見えない。

まぁ、それを言うならエルだって全く「軍」と言う雰囲気は無いけど。


3人でイスに座り、話を聞く。


「話って?」


「キャロルには、引き続き行う実験に協力してもらうんです。

次からは彼女も一緒に『シフト』に参加します。

様々なパターンを試した後、みんなで内容と結果について話をしましょう。」


エルが説明をしてくれる。その間、キャロルはニコニコしているだけだ。


(その「みんな」には軍のお偉いさんは含まれないのか?そんなハズは無い・・・さっき、「軍からの連絡」って言ってたよな?

・・・まさかキャロルがその「お偉いさん」じゃないだろうな・・・?)


「まず、私とキャロルを連れて同じ高度まで移動できるか試してください。

それが可能なのか、また、ポイント消費はどう変化するのか確認してください。」


「他にも、移動距離を延ばせるのか、その際の距離とポイント消費量の関係など、

調べたい事はたくさんあります。シローには負担がかかる事かもしれないので、

何かおかしいと感じたり、体調が優れない様な事があれば、すぐにそう言ってくださいね?

よろしくお願いします。」


そう言って頭を下げるエル。


「俺にとっても知りたい事だし、エルが頭を下げる必要はないさ。

気を使ってくれるのは嬉しいけどね。それより、ちょっと聞いてもいいか?

キャロルの事なんだけど。」


俺はキャロルに向かって話しかける。


「私ですか?何でしょう?」


「キャロルの立ち位置というか、何で急に来たのか?とか・・・

実験に協力って言ってたけど、それだけか?」


「シローが実際に『シフト』を成功させた事で、『シフト』の重要性が高くなったという点が1つ、

もう1点は、実験の際のトラブル等に対処する為の追加人員という意味合いですわ。」


!「ですわ」!今、ですわって言ったぞ!姫キャラか!キャラづけか!

見た目お姫様っぽいと思ってたけど、まさかの「ですわ」だ。


いや、そんな事で喜んでいる場合じゃなかった。実験の際のトラブル?


「トラブル、というと?」


「これから行う様々な実験においては、不測の事態が起こる可能性があるのですが、エルと荷電粒子砲だけでは対処しきれない可能性が考慮された結果、

軍用の自動人形である私が追加されたのですわ。」


「軍用・・・?キャロルは軍事用なのか?」

「えぇ、そうですわ。」

「エルは?」

「私は汎用型です。」


二人を見比べる。違いがわからねぇ・・。


「軍用と汎用の違いについては、いずれシローに説明する機会があると思います。そろそろ実験を再開しましょう。」


キャロルはそう言うと立ち上がり、俺の腕を引っ張ると自分の胸の中に抱え込んだ!


(制服の上からでも体のラインがはっきりわかるぐらい、スタイルのいい子だけど、こうして胸に抱え込まれると・・・すごく、大きいです。・・・これ、まさかハニートラップとかいうやつかな?

・・・俺を罠に掛けてどうするんだ、アホか俺は。)


「えっと、なぜ抱きつくんだ?」

「もちろん、移動の際に離れないために、ですわ。」


にこやかな笑顔を見せるキャロル。もちろんなんだ・・・。

そして当然の様に反対側の腕に抱きついてくるエル。何という、ここは楽園か!


「では、先ほどお話した様に、私とキャロルを連れて、さっきと同じ高度まで移動できるか試してください。2人から3人になった事で移動距離がどれだけ変動するのか確認したいのです。」


「了解だ。試しに3ポイントで届くかやってみよう。」


空を見上げる。さっき見た光景をイメージする。・・・できる!


「3人での移動自体は問題なくやれる、という感じがする。いくぞ!」


「はい!」「お願いしますわ。」


「シフト!」


俺たち3人は宇宙へ「移動」した。


さっきと同じ、足元に広がる美しい星の姿。惑星ファーグトーが見える。


「素晴らしいですわ!シロー!」


キャロルが褒めてくれる。美少女に褒められるのは嬉しいものだな!


「現在位置は、惑星ファーグトー上空およそ95KMです。ポイントはどうなっていますか?」


エルに聞かれて改めて確認する。1169、3ポイント減っている。


「1169だ。1ポイントで1人およそ100km、という事なんだろうか?」

「そうかもしれませんが、もっとたくさん試してみないとわからないです。

次は30ポイント使って、より遠くへの移動を試してください。

ファーグトーから離れる方向へ。」


「ここから、ということでいいんだな?」

「はい、お願いします。」


2人をくっつけたまま、再度シフトを使用する。


「シフト!」


スキルは問題無く作動した。足元に広がる惑星の姿・・・? 


下にあるはずのファーグトーの姿が無い。

顔を上げると、遠くにはぽっかりと浮かぶ、半分に欠けた青い星の姿・・・。


(この光景どこかで・・そうだ、「月から見た地球の姿」ってやつだ。

暗い宇宙の海から半分だけ姿を見せた地球の・・・? 

あれはファーグトーなんだろうけど、何か遠くないか?アレ。

おかしい、確か月から地球って38万kmぐらいあるんじゃなかったか?)


「エル!ここはどこなんだ?!」


「現在、私たちはファーグトーから約30万km離れた位置にいます。」


さんじゅう・・・?


「30万kmだと!!」


何でやねん!!






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