2日目
仕事に疲れた。
今日も今日とて歯車を回してます。私です。いつも通り同僚が青い顔をして働いていますね、幸福そうで何よりです。
私は今日は歯車を回す仕事はお休みです。休みを貰えるなんて物凄い幸福なことです。いえ、仕事が嫌なわけではないですよ?仕事を行わせていただくことも当然幸福です。私を気遣っていただけているということが幸福なのです。
ということで私は同僚2人とR&Dに来ています、レッド様も来られています。何やらPLCで活用できる新しい技術が誕生したためテストを行うとのことです。新技術に真っ先に触れさせていただけるなんてとても幸福なことです。生贄?実験?知らないですね?レッド様は働くことを幸福に感じる私たちを思って、この話を持ってきてくださったのです。あぁ幸福幸福。
レッド様は何やら先に職員の方とお話があるようですね、私たちは待機です。同僚2人はそわそわしていますがどうしたんでしょうか、まさか体調不良なんてことはないでしょうし…。話の内容?過度な興味を持つことも反逆ですよ?
「ということでこのような手袋の開発に至ったのです!」
「なるほど非常に興味深い、是非ともテストを行うとしよう。丁度テストに協力的なインフラレッドも数人参加してくれたことだ。」
職員の方とレッド様が戻ってこられたようだ。なるほど、なにやら画期的な手袋の開発に成功したようですね。流石R&Dに所属する選ばれた職員です。更に私たちまでテストに関わらせていただけるなんてなんてお優しい…。
「インフラレッド共!R&Dの開発品のテストを行う!誰でもいい、早くこの手袋を着けるように」
おや、手袋は一つだけのようですね。つまりテストを行うことができるのは1人だけですか。是非とも体験させていただきたいところですがせっかくの機会です、他の方に譲るとしましょう。
「どうした、希望者は居ないのか。まさか誰もやりたくないなんて反逆的なことを言うんじゃないだろうな。」
レッド様がレーザーガンに手をかける。少々お待たせしてしまったようですね。他の方も私と同じ考えのようで名乗り出る方はいないようです。しょうがないですね。
「レッド様、一つ発言があります。よろしいでしょうか?」
「ん?希望者か、それではさっそく…」
「いえ、そのことなのですが見たところ私の手には少々サイズの方が小さいようです。R&Dの新開発の装備を体験できないのはとても、えぇとても残念なのですがこれはあくまでもテスト品。無理に着用して壊しても元も子もないことでしょう。当然レッド様も職員の方も分かっておられると思います。ですので今回はこの幸福を同僚の2人にお譲りしようと思います。私は新しいものをいの一番に見せていただいた幸福で既に胸が張り裂けそうな思いなのです。同僚も同じ思いはあると思いますが着用感やら使用感、他にもあれやそれを体験するには私でも完璧にデータを残すことは可能でしょうがお二人は更なる完璧な成果を残してくれることでしょう。いかがでしょうかレッド様?」
「「!?」」
私の意見にレッド様は少し考えているようです。同僚はなにやら驚いているようですね、同じことを考えていたのか幸福が流れてきたことに対することでしょう。いえいえ感謝は結構です。言いくr…お話は得意なのです。レッド様もきっと私の気持ちを汲んでくれることでしょう。
「そうだな、ならばそちらの二人のどちらか…」
「…っ、私の手にも少々小さいようです!ですのでこちら方が最適かと!」
「おまっ、えっ!?」
あちらの方も譲るようですね、着用するのは一番小さい方になりそうです。とても名誉あることですね。
「決定だな、お前はさっさと着けろ」
「しかしレッド様…」
「なにか不満でもあるのか、それともまだ俺に待てと?」
「いえ、使わせていただきます…」
健康そうな色をした顔で手袋を着けている。なにやら手が震えているような?あまりの名誉に感極まっているようですね。
「この手袋は鉄などを結合することができるのです!溶接手袋とでも言いましょうか?実際は溶接などとは比べ物にならないもっと高度な技術なのですがまぁいいでしょう!材料はこちらで用意しておきました、二つを並べて接合部を指でなぞるだけで大丈夫です。さぁどうぞ!」
職員の方が危機として鉄片を取り出して渡している。とても用意がいいようですね。
「この鉄片を並べて接合部をなぞれば…」
ドッガアアアァァァァァァァァン
爆発しましたね。完璧な職員の方が開発した手袋が失敗というわけではないでしょうし、コミーの仕業でしょうか。幸いにも素晴らしい技術によって見学していた私たちに被害はありません。あ、清掃ロボットがごみを掃除しに来ましたね。
「ふむふむ、なるほどなるほど」
職員の方は貴重なデータが取れたようで必死にメモをしている。コミーの陰謀からでもデータを取り次に生かす、素晴らしい奉仕精神です。
「これでテストは終了か?」
「いえできればもう少しデータが欲しいところなのですが」
「しかし手袋は吹き飛んでしまったが?」
「大丈夫です!こんなこともあろうかともう一つ用意しておきました!」
「なるほど、おい!」
予備まで用意してあるとはなんて素晴らしい。これは先ほど譲っていたもう一方にも幸福を差し上げねば。
「職員様!先ほどより大きいサイズならば先ほど譲ってくれたこちらの方に!」
「大丈夫です、先ほどより一回り大きいですよ」
あら、先手を取られてしまいましたね。こんな名誉なことを譲っていただけるとは何て幸福なことでしょう。しかしせっかくだから遠慮させてもらいましょう。アドレナr…元気を出す方法の応用でこう、手を一回り大きくしましょう。確か形態変化とか言われてた気がしますが気のせいですね。
「それでは謹んで使用させていただきます」
手袋を受け取り着けようとしますが、やはり少し小さいですね。指しか入りません。イヤーザンネンダナー。
「私にはまだ少し小さいようです。残念ですがこちらの方に譲るとしましょう」
「ふむ、しょうがないですね。次はもっと大きなサイズを用意しておきましょう」
職員は手袋を受け取りもう一方に渡す。同僚は震えながら着用して鉄片に手をのばしてますね。
「あぁ溶接はもういいです、実はその手袋にはもう一つ機能がありましてね。こう、手を胸に当ててください。」
ドロッ…
溶けましたね。衣服は残ってますが肉体は溶けました。いえ、溶けた肉体で服も若干溶けてますね。手袋は無事なので大丈夫でしょう。
「うーん、身体機能を活性化して活力が沸く予定だったんですが。出力が大きすぎたんでしょうか。」
しかし淡々とデータを取ってますね。素晴らしい奉仕精神だと思わず後ずさりしそうです。あ、レッド様は後ずさりしてますね。
「職員様、今回のテストはこれで終了でしょうか。それならば私はコンピュータ様からの仕事に戻らせていただきたいのですが」
「そうですね。今回のテストはこれで終了となります。また改良が終わればテストに呼ばせていただきますよ」
「その時は是非、また同僚と受けさせていただきます」
レッド様がこちらに意識を戻す目にPLCに戻るとしよう。無理難題を押し付けられても困りますし。私は完璧な職員ですしレッド様も完璧なので無理難題なんてものはないでしょうし困ることもないですけど。言葉の綾ってやつです。慣用句?知りませんね?