その二十一 ライドンキング 馬場康誌 講談社
なんかすげえ売れてるらしい。
たまには単行本化前の、活きのいい作品を紹介してみる。
転スラ目当てにシリウスを読んでいたら見つけた、どこかで見かけた絵。
空手小公子の人だと気付いたのは、後で調べてからである。
主人公は40代から50前ぐらいのロシア系おっさん。
簡単に言うとこの超肉体派大統領が、異世界に転移することから話は始まる。
このおっさん、独裁者ではあるが有能なため、国民の支持は高かったらしい。
ありとあらゆる格闘技に精通し、その戦闘力は戦車にも匹敵するのではないかという描写がある。
作品中で見る限り、欠点と言えるのはただ一つ。いや、二つか。
悪魔に仕える神官のような強烈な面構えに、飽くなき騎乗欲である。
騎乗というのは、乗り物に乗る欲望のこと。
それは馬やゴリラなどの生物もあれば、車や戦闘機などの人工物もある。
ちなみに普段使いの騎乗物は虎である。
こんなおっさんが異世界に転移したからには、やることは一つ。
ドラゴンやワイバーンなどの魔物に騎乗することである。
偶然にも異世界転移時に出会った冒険者の少女二人と共に、おっさんは世界へと旅立った。
いや、そんなアホな、と言わずに読んでほしい。
一発ネタではなく、間違いなく最新話までは面白い。
チョコボ風味の動物を、鞍もなく乗りこなすその威厳と勇姿。
オークをパロ・スペシャルで乗った体勢となるその格闘技術。
魔法の才能もかなりありそうなのにもかかわらず、彼が武器とするのは己の肉体と格闘技術。
騎士が倍の人数は必要だというオークの集団相手にも、その白兵戦技能は冴え渡る。
いや、そんなアホな、と笑いながら、この超真面目に描かれる異世界転移物を読んで欲しい。
流麗なる格闘技術と肉体美、そして魔物に対する好奇心。
けっこう可愛い女の子と一緒に旅をするのだが、このおっさんの欲望は本当に騎乗欲に向けられている。
可愛い女の子に乗っかるよりも、猛々しい雄のケンタウロスに乗ることを優先するのだ。
転スラから流れてきたと言っているように、当然ながら私はなろうの転移・転生系の作品をたくさん読んでいる。ここに書き込んでいることからそれは分かってもらえると思う。
しかしこの方向にここまでぶっ飛んだ作品は、おそらくないであろう。
なろう系のテンプレ転移に飽きた貴方に送る、爆笑必至の実験的実戦的異世界物語。
もうどの方向に話が転がっても、このおっさんが主人公という段階で、面白くなるのは確実である。
何気に女の子も可愛いんだけど、意地汚かったりボーション中毒だったり、ヒロイン属性に極めて乏しい。
こんな作品を楽しめる人間と、私は友達になりたいものである。
どう見てもプーチン。
なんだかこの一つ前の作品も面白いらしいので、手を出していいのかどうか迷う。




