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救援 その8

 さて、逃げた害獣の始末も終えたので早く皆と合流するとしよう。数体倒したところで街の中にはまだまだ害獣がいる。一人でうろついていると、そんな害獣達の格好の餌食になりかねない。

 周辺に気を配りながら、来た道を引き返し皆がまだいるであろう中庭のある建物を目指す。幸い、道中で害獣達と遭遇する事はなかった。


「よぉ、首尾は?」


「滞りなく片付けました」


 自分が中庭へと戻ってくると、既に中庭にいた害獣達の一団は見事に死屍累々とばかりに化していた。

 そんな脇で休憩を取っていた皆に近づき、ボルドーさんに報告を済ませると、自分も少し休憩する事に。


「さて、流石に日が落ちてからも戦うのはキツイ。そろそろ南門まで戻るか」


 休憩が終わり、暗さを増していく街の様子にボルドーさんが決断し指示を出す。夜通しなんて、恐らくいたずらに自分達の被害増やすだけだろう。

 それに、休憩を挟んでいたとは言えここまで長時間緊張の連続だ。自覚のない疲労も大分蓄積しているに違いない。

 足早に中庭を抜け建物を出ると、一路南門へと向かって街中を駆ける。完全に夜になる前に辿り着かなければ。


 だが、そう簡単に南門へと戻っていいとはいかない様だ。道を塞ぐかのように、自分達の前に害獣達が立ちふさがっている。


「っち、まだこんなにいるのか」


 流石のボルドーさんでも嫌気がさすのか、その呟きはやけに大きい気がした。その気持ち、自分も分からなくもないが。

 とは言え、呟いた所で目の前の害獣達が道を開ける訳も無く、各々武器を構えると駆逐すべく足を動かそうとした。だが、その時であった。


「くそ、新手か!」


 まだこれからと言うのに、近くの建物の屋根から蟲系の害獣達がその姿を表す。駆逐している最中に不意を突いて現れなかったのは良い事だが、数が増えたのはよろしくない。特に今の状況なら尚更だ。

 とは言えそんな愚痴を吐いた所で数が減る訳でもない。兎に角目の前にいる全ての害獣達を駆逐するのみだ。

 と思った矢先の事。事態は予想だにしたい方へと動いていく事になる。


「……どうなってやがる」


 その事態の推移にボルドーさんの声が漏れるが、それは自分も同感であった。何故なら、害獣が自分達を無視して害獣を捕食し始めたからだ。

 先ほどまで共闘していた筈の害獣達が、互いに敵意を向けて殺し殺され喰い喰われしている。一体何が起こったと言うのだろうか。


 とそこで、一つの可能性を導き出す。先ほど追いかけ倒したあの害獣、まさかあれがブレインコーディネーターだったのでは。そして、普段共闘する事のない害獣同士を繋ぎ合わせていたブレインコーディネーターと言う存在が機能しなくなった事により、害獣達が本来の生存競争を開始したのではと。

 無論、あくまでこれは可能性の話であって裏付けが取れた訳ではないが。それでも、かなり確信に近いものではないだろうか。


「だが、これはチャンスだ。連中が食事を楽しんでいる隙に一気に南門にまで行くぞ」


 予想だにせず巡って来た好機を逃さず、ボルドーさんが指示を出す。害獣達と戦わずに南門まで戻れるなら今はその方が良い。

 捕食を続ける害獣達の脇を気づかれぬように抜けると、速度を速め一気に南門へと駆けていく。街中からは、今まで聞こえていなかった害獣達の害獣を食す音が所々から微かに聞こえてくる。

 既に夜の闇が刻一刻とその濃さを深めていく中、何とか自分達は南門へと到着する事が出来た。とは言え、もはや全員疲労困憊と言う感じで、自分も含め全員が肩で息をしている。

 暫く息を整え、息を整え終えると、無事に辿り着いた安心感も合わさってか崩れるように座り込む。


「レナさん、はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


 胃を満足させることも大事だが、今は先ず喉の渇きを潤す事を優先する。

 冒険者鞄から革製の水筒を三つ取り出すと、レナさんとレオーネに手渡す。渡し終えると、早々に手にした水筒のふたを開け口を付ける。保冷機能なんて備わっていない水筒の水は、生温かかったが今は贅沢は言っていられない。

 水筒の水で喉を潤し終えると、ふとレナさんの方へと視線が向く。


 レナさんも相当喉が渇いていたのか、少しばかり滑らかな顎から喉のラインを伝い水が零れている。その水は更にラインを伝って何れは、なんて考えてこれ以上見ていると更に深く考えてしまうと視線を逸らす。

 と、レオーネと目が合う。何とも言いたげな表情を浮かべていたが、視線を更に他に向ける。


 自分達と同じく完全に夜が訪れる前に戻ってきた同業者達が同じように休憩してはいたが、昼間見ていたよりもかなり負傷者が増えている。

 駆逐戦で負傷し自力で戻ってきた者や運ばれてきた者達だろう、同じパーティーのメンバーと思しき者が手当している様子も見られる。


 こうして周囲の同業者達の状態も確かめ終えると、急に主張し始めた腹の虫を抑えると共に疲れた体に栄養を与えるべく食事をとる。

 食事を終え、交代で休憩を取り、こうしている間に夜が更けていく。街の中からは、偶に風に乗って害獣達の食事の音が微かに聞こえてくる。



 翌朝、ボルドーさんが簡易の陣へと戻ると発表した。未だに街の中には害獣達がいるはずなのだが何故だろう、そんな疑問を感じたのは自分のみならず、誰かがボルドーさんに詰め寄るように質問を投げる。

 するとボルドーさんはその理由を説明し始めた。どうやら、それまで共闘していた害獣達が互いに捕食し始めた事で自分達が危険を冒さずとも街の中の害獣達の数は減ると上、即ちギルド側が判断したらしく。間も無く到着するであろう王国軍の面子を立てる意味も込めて、一旦簡易の陣まで戻るのだとか。

 成程、ギルド側はもう充分に借りを作らせたと判断したのだろう。このタイミングで街から引くとは。


 不満を口にする者も若干はいたが、大部分は比較的安全な場所に戻れると安堵の表情を浮かべている者が多い。あ、自分もそんな一人である。

 こうして自分達は準備を整えると簡易の陣へと足を進め始めた。昨日よりも足取り早く簡易の陣へと到着すると、カルル達と無事に再会を果たす。


 まだ完全にポルトの街から害獣共の脅威を取り除いた訳でもないし、取り除いてもその後復興など問題は山積している。

 だが、とりあえず自分達の出来る事は終わりを告げたと思っていいだろう。王都支店の幹部職員から昼過ぎ頃には王国軍が到着する予定との発表もあったし、あとはせいぜい街の様子を窺いながら王国軍の到着を待つぐらいか。


「……ふぅ」


 終わりが見えたと分かるや、鳴りを潜めていた疲労が現れてくる。

 地面に腰を下ろして体を労わっていると、不意に空へと視線が向かった。相変わらず雲が張り出していて快晴とはいかなかったが、雲の切れ間から太陽の光がポルトの街へと降り注いでいた。

読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご意見やご感想等お待ちいたしております。

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