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救援 その7

 それぞれの地区を担当するグループに分けられ、各々のパーティーが振り分けられた地区へと散らばっていく。

 なお、最低でもパーティー二組をワンセットとして、パーティー単体での行動は制限されている。


 また、重傷の者を除き軽度の負傷者も駆逐戦に参加する運びとなった。時間や戦力が惜しいからと言ってそれはあまりに強引ではないか、と思っていたのだが、どうやらそれにも理由があるようだ。


 共に組んで行動する事になったボルドーさんによれば、どうやらギルド側と王国側との競争のみならず、支店同士の競争も生まれている様だ。途中で合流した支店からの一団は王都支店と比較的仲の良いところだったようだが、その他今回救援隊を出した支店とはあまり関係が良好とは言えないのだとか。

 よって、他の方面から進入している支店と協力、と言うのは現場の声とは裏腹に難しいかも知れないのだとか。

 表にはあまり現れない、巨大組織だからこそ出てくる弊害がまさかこんな時に出てくるなんて。こんな事で本当にポルトの街を救えるのだろうか。


「逃げ時、かも」


 共に行動しているボルドーさん始め、ボルドーさんのパーティーメンバーの面々にも聞こえないように小声でレナさんやレオーネに囁く。

 と言っても、お抱えであるボルドーさん達と共に行動している以上、逃げ時と思っていても逃げ出すのは容易ではない。それに、カルル達と離れている以上更に難しい。

 結局、最後までやり遂げる事が一番の近道でしかない。


「来るぞ、気を付けろ!」


 刹那、ボルドーさんの声が響き思考を遮断する。眼前には、害獣達がその敵意を剥き出しにして自分達の方へと駆けてきている。

 背の鞘から大剣を抜き構えると、害獣達を駆逐すべく対峙する。


 流石はお抱えと言った実力を目にしながらも、自分達はポルトの街の中を駆ける。

 それからどれ位害獣を駆逐したのだろうか、通りのみならず脇道などに潜む害獣も駆逐していき、次いで建物内に潜む害獣の駆逐となる。

 そうして足を踏み入れたのは、比較的大きな建物であった。



 事が起こらなければ豪華な外観をしていたであろうその建物は、今や長年放置されたかのように色あせ、壁には穴が開き一部屋根が剥がれ落ちている。

 出入口から広がる石床は、所々ひび割れ、一部は無残に剥がれているのも見られる。また、内装に華やかさを与える調度品なども、無残な姿が石床に横たわっている。

 大きな傷が目立つカウンターやテーブル等。建物内も外見同様見るも無残な姿であった。


「くそ、害獣共め。少しは物を大切にするって気持ちをもてねぇのか」


 不意にテーブルに手を添えたボルドーさんだったが、内部の状況を目にし怒りを含んだ声が漏れる。


 程なくして建物の奥へと足を進めると、そこには複数のゴブリン系の死体と共に同業者と思しき死体が幾つか見られた。

 死の間際まで害獣達と戦っていたのか、皆その手には各々の武器を握っており、その最期が壮絶であった事を物語っている。

 そして自らの或いは害獣達の返り血か、本来の色合いを失った装備はなかなか豪華に見える。少なくとも、彼らは新米ではなかったのであろう。


「……よお、何処にいるかと思えば。こんな所にいたのか」


 そんな同業者の死体に一つにボルドーさんが近づくと、声を掛け始めた。口ぶりからして、どうやら知り合いの様だ。


「お抱えじゃなかったがポルトの街を中心に活動してて、それなりに腕の立つ奴でな。だが、見てくれに似合わず酒に弱くてな……」


 ボルドーさんは自ら語り掛けた死体の人物との関係を語ると、死後硬直で開いてしまっている目に手をやり、そっと目を閉じさせた。

 そして彼の無念を晴らすべく意気込むと、再び足を進め始めた。

 建物の奥へ奥へと足を進めていると、一瞬外に出たのかと思える場所に出た。そこは建物の裏に出たのではなく、どうやら中庭の様な場所に出たようだ。


「早速弔い合戦だ」


 そこには、害獣達の一団がその姿を曝け出していた。ボルドーさんは早速無縁を晴らす事の出来る機会が巡って来たと、声は押し殺していたがいまにも飛び出しそうな勢いであった。


 害獣達の一団も既に自分達の存在に気付いており、互いに見つめ合いの膠着状態がしばらく続いたが、それも長くは続かなかった。


「キィィッ!」


 一体の害獣が声を発すると共に、害獣達の一団が一斉に襲い掛かって来る。そんな害獣達に挑むべく、自分達も各々の武器を手に害獣達目掛けて駆ける。

 程なくして剣と剣がぶつかり合う音、或いは害獣の断末魔が中庭に響き渡る。

 手にした大剣を振り、或いは突き刺し害獣に死を与えていく。レナさんもレオーネ、そしてボルドーさん達も各々が己の武器を使い害獣達を駆逐していく。

 それからどれ位害獣に死を与えた頃か、不意にボルドーさんの声が響いた。


「おい、あいつ逃げるぞ!」


 声に反応するように周囲を見渡すと、一体のゴブリン系と思われる害獣が尻尾を巻いて逃げていく様が目に入る。

 これが森の中などなら問題ないのだが、生憎と街の中で逃げられ身を潜められると後々厄介なので、ここで逃がすのは出来れば避けたい。


 咄嗟に足止めとばかりに投げナイフを手にし、逃げる害獣目掛け投げる。と、投げた投げナイフは害獣の足に刺さる。

 だが、刺さったと同時に一瞬その足を止めた程度で、その足を完全に止める事はなかった。


「ここは私達で何とかします。ショウイチさん、追って下さい」


 すると、レナさんから声が飛び、次いでボルドーさん達からも奴を追えとの声が飛ぶ。


 確かにこのまま逃がす事は阻止しなければならない、そして、自分は奴に傷を負わせたのだから最後までやり遂げなければならない。

 レナさん達の声に応え、逃げた害獣の後を追う様に害獣達の脇をすり抜けると、未だ戦いの続く中庭を背に逃げた害獣の後を追う事に。

 投げナイフによって出来た血の跡を目印に、逃げた害獣を追い詰めていく。



 血の跡を辿ってやって来たのは、先ほどの建物からほど近い広場。こんな事態にならなければ、今頃も数多くの店と人で活気が溢れていたであろう場所。

 そんな広場も、今は微かに暁に染まりつつあり。と同時に、所々にはそれよりも真っ赤な赤と人や害獣達の死体が横たわっている。


「鬼ごっこはおしまいか?」


 そんな広場に、自分とあの害獣の姿があった。害獣はこれ以上逃げられないと悟ったのか、それとも自分を殺した方が手っ取り早いと判断したのか。逃げるのを止めて、対峙する姿勢を見せている。

 ゴブリン系とは言え個体差なのか、街の中で戦ってきた奴らと比べるとどうも体格が一回りほど大きいような気がする。

 ま、体格がどうあれ、駆逐すべき対象である以上倒す以外の選択肢はないが。


「キィーッ!」


 自身を奮い立たせる為の声が発せられ、それを合図にいざ勝負。かと思いきや、思わぬ乱入者が現れる。

 先ほどの声に呼び寄せられたのか、数体のゴブリン系が姿を現し有無を言わずに自分に襲い掛かって来る。


「ちっ」


 軽く舌打ちしながらも増援としてやって来た数体のゴブリン系を片付けると、本命へと大剣を振るう。

 この一振りで片付いてくれればいいのだが、生憎と先ほどは逃げた割にそんな軟な奴ではなさそうだ。手にした剣で自分の大剣を受け止め、激しいぶつかり合いを奏でる。


 その後も何度も一進一退のぶつかり合いを演じ、一瞬本当に先ほど中庭から逃げてきたのと同じ奴とは思えなかった。

 もっとも、火事場の馬鹿力であると言えなくもないが。


「悪いが、あまり時間をかけたくないんで」


 そろそろ決めさせてもらうと大剣を持つ手に力を入れると、向こうも決めに来ると悟ったのか構えを改める。

 少しの膠着状態が続いた後、何処からともなく聞こえてきた断末魔を合図に、決着の時は訪れた。


 再び振り下ろされる大剣と剣、そして何度目かのぶつかり合い。相変わらず決着はつかず勝負は平行線かと思う。が、これでいい。

 ぶつかり合えば自分もだが相手もその場を動けない、それこそが自分の狙いだった。


 一瞬の隙を窺い奴の足に、自分の投げた投げナイフが刺さっている足に狙いを定め蹴りを入れる。刹那、ぶつかり合っていた剣伝いに奴の力の入れ具合に変化が生じたのを感じる。

 その一瞬の隙を見逃さず、一気に大剣に力を入れて押し勝つ。体勢が崩れ大きな隙が出来た所に間髪入れずに再び大剣が一閃する。


 刹那、鮮血がほとばしり奴の体が地に横たわった。しかし、完全に息を引き取らせることは適わなかったのか、深い傷を受けたにも関わらず奴はまだ微かに息をしていた。


「……、それじゃぁな」


 横たわる奴に近づき最後の言葉を投げかけると、手にした大剣を奴の首筋目掛け振るう。

 先ほどよりも遥かに量の多い血が地を赤に染める、そしてその原因となった奴は、頭と体が切り離され完全に息を引き取った。


「ふぅ……」


 決着が付き一度深く深呼吸した後、ふと空を見上げる。相変わらず雲が張り出している為綺麗な夕焼け空は拝めそうにない。

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