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救援 その4

 パーティーメンバー同士で雑談する者、明日に備えて武器の手入れを入念にする者もいれば、明日に備えて英気を養う者もいる。

 様々な行動が見られる中、自分は何をしているのかと言えば、見張りをしつつある者と話をしていた。

 見張りの為同業者達とは距離を置いてる、しかし怪しまれないようにその者とは小声で会話を交わす。


 自分の肩に乗った小さな者、誰であろうリッチ4世さんだ。


「やっぱり、ブレインコーディネーターが指揮してると?」


「そうですね。間違いないでしょう」


 同一の種でもないのに組織的な行動が出来る、この時点でブレインコーディネーターが関与している可能性は濃厚であったが。今し方、それは確信へと変わった訳だ。

 トンドの森に続いてここでも魔族の過激派、いや、まだ断定できたわけじゃないが。何れにせよ、魔族の影が出て来た訳か。


「全く、迷惑な事だな」


「申し訳ありません。同族としてこれ程……」


「あ、いや。リッチ4世さんは悪くないよ。ただ、どんな世界にも種族にも他人の迷惑を考えない者はいるんだなと思ってさ」


 勝手な想像で一枚岩なんて思っていたが、魔族も人間同様様々な考え方を持った者がいる。それが現実の様だ。

 無論その中には、迷惑な思想を持った者もいる。一体そう言う者達は、どんな気持ちでこの状況を見ているのだろうか。

 既に一報から一週間以上は経過しているだろうか、あの城壁の向こう、ポルトの街の内部がどうなっているのか。あまり想像はしたくないが悲惨な光景が広がっているのだろう。


 そうしてリッチ4世さんと話していると、不意に誰かが近づいてくる気配を感じる。

 リッチ4世さんを隠す様に肩から降ろすと、近づいてくる気配の主に視線を向ける。そこには、一瞬賊と見間違える装いをした巨漢の男性。お抱えメンバーの一人であるボルドーさんが近づいて来ていた。

 肩当や手甲等部分的な防具に害獣か何かの毛皮はあるが布面積があまりない、そこから見える鍛え上げられた肉体美なのだが、正直寒くないのかと問いたくなるような格好だ。その背には、その巨漢から繰り出されるパワーを駆使し振り回す巨大な斧がその姿を垣間見えさせる。


 だが、見た目が全てではない、要は実力と実績だ。現に、お抱えとして一定の実力と実績をこの人は兼ね備えている。


 自分よりも一回りほど年上か、ボルドーさんは自分の横へと並び立つと、灯りの見えぬポルトの街へと厳しい視線を向けた。

 当然ながら自分よりも長くこの業界で活躍している人だ、それなりに交友関係もあるだろうし、その内何人かがポルトの街にいたとしてもおかしくはない。

 兜を被っていない為、その険しい視線と共にその様々な意味を含んだ表情も見て取れた。


「見張りご苦労。で、何か変化はあったか?」


「いえ、特には」


 ボルドーさんは視線を動かさずに聞いてきたので、リッチ4世さんの存在については気づかれていない様だ。

 その事に内心安堵していると、お抱えの特権と言うべきか、ボルドーさんからギルドが現在までに集めている情報の一部を教えていただいた。ただの独り言と言う注釈を加えて。


 それによると、どうやらポルトの街の住民の大多数は避難に成功したのだとか。北の避難キャンプに逃れたのが殆どらしいが、一部は自力で近くの村や街に逃げ込んだのだとか。

 そしてその北の避難キャンプだが、どうやら北にある王国軍の駐屯地から人と物資が送られ、混乱の心配はないみたいだ。

 とりあえず、一安心と言ったところか。

 なお、被害に遭った方々については、多くが街の行政職員や街に居たギルドのメンバーだとか。恐らく住民を逃がす為に被害に遭ったのだろう。


 そして、準備を進めていた王国軍も大規模な部隊の投入を決定したらしい。流石に到着するには時間を要するそうだが。

 何でも、北の混乱を踏まえて大規模な投入に踏み切ったかも知れないのだとか。シャウレー王国やヴォールリッヒ帝国等、その辺りの国の事を言っているのだろう。

 仮にこれが王国の他の地域の小さな村で起こった出来事なら、王国軍も大規模に動かず、最悪見捨てていたかも知れない。


 最後に、明日の早朝から街の害獣達の討伐を開始するのだとか。先ずは、街への進入口を確保すべく南の門に数十人単位のグループをぶつけるとの事。

 王国軍が来るなら王国軍と共同でと言いたいが、色々と事情があるのだろう。

 さしずめ、王国軍側は正規の兵隊の被害を少なくしたい。そしてギルド側は、王国に借りを作らせたい。そんな所か。


 ボルドーさんとの、一応ボルドーさんの独り言が終わり。言いたい事も言い終えて去っていくボルドーさんの背を見送った後、入れ違いに交代の声がかかったので自分もテントへと戻る。

 テントへと戻る途中、ふと空を見上げる。暗雲に覆われ星一つ見えない夜空が、視界一面に広がっていた。



 翌朝、地平線の彼方から太陽がその姿を覗かせ始めた頃。いよいよポルトの街へと本格的に足を運び入れる事になった。

 朝食後、同行しているギルドの幹部職員からポルトの街の南門に取りつき、そこを確保する事と内部への中間補給地点を形成させる事が発表される。

 どうやら南門を起点として、内部の害獣達を駆逐しつつ街の安全を確保する計画の様だ。しかも、計画の進行速度はかなり早く設定されている。


 王都支店としてのプライドからか、他の支店を圧倒し、王国軍が到着するまでに何が何でも自分達だけでやり遂げ、自分達の印象を強く残そうと言う魂胆が見え隠れしている。


 お抱えの方々や新米なんかはやる気に満ち満ちている。が、自分はそこまでやる気があるという訳でもなく、気持ちは一歩引いている。

 下手にやる気を見せて矢面に立たされても面倒であるから。


「これが終わったら俺、あいつと……」


 準備を進める中、何処からかどう考えても不吉としか言いようがない言葉が聞こえてくる。何処の誰かは存じませんが、それを言っては立ててはいけないものが立ってしまいますよ。

 なんて思いながらも、気になって視線を軽く動かしていると、ふと同業者の方と目が合う。刹那、一瞬驚いた表情を見せたかと思うと、すぐさま顔を背けられた。あれ、まさかあの人か。

 等と妙な事をしている間に準備が整ったのでその時を待つ。程なくして、合図と共に同業者達が、百人規模になろうかと思われる一団が動き出す。


 なお、遠目に他の方面からも他の支店から来た一団がポルトの街を目指して前進するのが見られる。

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